一生消えない目の前のゴミ~飛蚊症(ひぶんしょう)になって老後を考える

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1ヶ月ほど前、夜中に根詰めて法人税申告の別表を作っていたら、目がしょぼしょぼになって疲れてしまった。翌日も作業していると、何か目の前にほこりのようなものが映って画面の文字が読みにくいことに気づいた。

目にゴミでも入ったかと思って目薬を差したが治らない。一時的な疲れ目かと思って、気にせずそのまま過ごしていたが、数日経っても治らない。

画面が見えないといっても1~2秒のことで、じっと見れば文字が読めるようになってくる。どうやら両目の下の方に、眼球に固定されたもやもやがあるようで、それが文字に重なると読みにくくなるらしい。

目の前のゴミは飛蚊症?

1ヶ月経っても状況が変わらないので、さすがに病気かと思って調べてみた。症状としては、飛蚊症(ひぶんしょう)というものらしい。目を動かすともやの領域も動くので、網膜ではなく眼球内部の不具合であるようだ。硝子体の中の繊維や細胞成分が影をつくる生理現象か、あるいは加齢にともない硝子体がしぼんで、はく離した後部の影が映るという説明である。

飛蚊症自体は病気でないといわれている。もっとやばい病気でなくて一安心といいたいところだが、目の前のもやが一生消えないというのはなかなかショックだ。一応、網膜剥離とか硝子体内の出血とか、ほかの病気が原因になっている可能性もあるので、念のため眼科で検査してもらいに行ってきた。

久々の眼科受診

今まで眼科を受診したのは、子供の頃の結膜炎くらいだ。わりと目を酷使する仕事だが、健康診断でも問題が出ることはなかった。歳を取るにつれて、夜空の月がダブって見えるような乱視の症状が少し出てきているが、まだ日常生活で不便というほどではない。

眼科の受付で「飛蚊症かも」と症状を説明すると、よくあるパターンのようで最初にいくつか検査を受けさせられた。視力は両目とも1.2はあるということでOK。

突然目に風を当てられてびっくりするのは眼圧検査だった。左目の眼圧がやや高いといわれた。聴覚検査の容量で視野を測る検査では、ときどき光が見えない領域があって焦ったが、誰にでもある盲点なので問題ないとの説明だった。

眼底検査で目が見えなくなる

その後、瞳孔を開くという目薬を10分おきに2回差して、眼底を撮影して目視で確認という流れになった。眼底検査というのは初めてだが、最初に目薬を差してから5分くらい経つと、待合室で読んでいた雑誌が急に見えづらくなってきた。

文章がぼやけて読めず、気のせいかと思ったがどんどん悪化して見出しも読みづらくなった。10分後、2回目の目薬を差す頃には、手元の文字やスマホ画面もまったく読めず、もうぼーっとしているしかない状況に陥った。体感的には以下の画像くらいの見え方だ。

検査では特に異常はなく、念のため10日後にもう一度検査を受けてください、ということになった。そこから家まで歩いてい帰ったが、お店の看板くらいしか文字が読めないくらい視力が落ちた状態で、駅前の広場を人にぶつからず歩くのに神経を使った。

視力低下の不便を実感

一応検査の前に「近くが見づらくなる」と注意事項は聞いていたが、ここまで不便になるとは思わなかった。「車は運転できない」といわれたが、自転車はおろか普通に歩くのもままならない。将来的に、老化や病気で視力が落ちた状態を疑似体験できると思えば、興味深い状態ともいえる。

最初に困ったのは、マンションのナンバーキーがデジタル式で、数字の配置がランダムに変わるので開けられなくなってしまった。後から考えれば、一度間違うと定型配置で表示される仕様になっていたので、数字が見えなくても開けられたかもしれない。焦って管理人さんを呼んで迷惑をかけてしまった。

家に戻ってもスマホ画面が見えず、パソコン作業も読書も一切できない。うっすらとメール受信のアイコンが見えているので、仕事関連なら早くチェックして返信しないと、と焦るが、どうにもならない。目が悪くなると今の仕事は何もできなくなるという危機感を覚えた。

事前の説明通り、6時間くらい経つとようやく視力が戻ってきた。鏡を見ると、薬のせいで自分の瞳孔がおもしろいくらいパカッと開いている。もう死んでいるのではないかと思うくらいの開きっぷりなので、明るい光を見ると目に悪いだろう。ピントが合わないせいか一時的に飛蚊症のもやが消えたが、次の日になるとやはり戻ってきた。

一生治らない飛蚊症のもやもや

10日後の検査も同じ目薬を差して眼底を見てもらったが、網膜剥離の恐れはなしということで無事解放された。ほかの眼病に比べれば本人の思い過ごしくらいの軽症らしく、ほんの一言二言交わすだけで軽くあしらわれた感じだ。それでも飛蚊症のもやは「一生消えない」と釘を刺されたので、ショックではある。

視界に見えているのは蚊というより、半透明のカビやほこりのような印象だ。自分の場合は、ちょうど視界の中心に近いやや下側にある。机に資料を置いてPC画面と交互に見るような作業だと、下から見上げる際に画面上にもやが重なって文字が読めなくなる。慣れればそこまで不便ではないが、目の前に常にうっとおしい虫のようなものがちらつくので、精神的なストレスも感じる。

眼病予防にアイマッサージャー

もや領域の拡大を予防するため、目の疲労解消に愛用していた花王「めぐりズム」を、マッサージ機能つきのパナソニック「目もとエステ」にグレードアップしてみた。壊れかけの中古品をつかまされてしまったが、まあまあ使える商品である。

介護や痴呆が心配になってきた

飛蚊症は「老化にともなう一生治らない症状」ということで、虫歯みたいなものかと思う。悔しいが仕方ないとあきらめるしかない。眼底検査で一時的に視力が落ちる状態も経験して、今後はできるだけ目をいたわろうと思った。職業柄、重い眼病を患うとか失明するという事態は、一発アウトで即失業という感じだ。交通事故に遭うよりリスクが大きい。

先日、シーナ・アイエンガーの本を読みながら、目が見えなくてどうやって論文を読んだり研究できるんだろうと不思議に思った。そういうディティールはあまり書かれていなかったが、相当なハンディキャップがあるはずなので、家族や同僚のサポートが手厚いのかもしれない。

失明とまではいかなくても、このまま一人暮らしで病気やけがをすると、介護の面が気になってきた。認知症になったら投資信託の運用や税金の申告はどうなるのだろう。知り合いに多少は手伝ってもらえるかもしれないが、建物はバリアフリーでもなく、住み続けるには限度がある。一人暮らしの老後に備えて、成年後見人制度とか早めに調べておいた方がよいかと思った。