3年ぶりに歯医者。歯周病のセルフケアと、良い歯科医の見分け方

4か月ほど前に、ふと思い立って近所の歯科医に定期検診に行ってみた。

しばらく引っ越しが続いたりして忙しかったこともあり、歯医者に通うのがおっくうになっていた。以前のかかりつけ医は場所が遠くなりすぎ、新居の近くで新しく開拓するのも面倒だ(初診料もかかる)。

その結果、退職して3年間は一度も歯医者に行っていなかった。その代りに時間はたっぷりあるので、毎日3回食後にみっちり歯は磨いていた。

特に痛みが出たり虫歯が悪化する兆候は見られなかったので、このまま自分でケアしていれば、ずっと歯医者に行かずに済む(お金もかからない)のではないかと思っていた。虫歯に関してはおおむね問題なかったが、知らない間に歯周病にかかっていたことを知った。

歯周病は自覚症状がない

なんとなく健康診断のつもりで新しく探した歯医者に相談してみたところ、見えないところでおそろしく歯周病が進行している事実を知らされた。

歯周ポケットの深さでいうと、奥歯のひどいところは6~8mm。すでに重度といえる状態で、そのうち歯がぐらついて抜かざるをえなくなる瀬戸際だった。

驚いて歯周病の対策について調べたところ、歯肉の隙間をブラッシングだけで清掃するのは難しかったようだ。デンタルフロスやタフトブラシは使っていたが、歯間ブラシまでは導入していなかった。

以前、歯間ブラシを試して出血したため嫌になったのだが、そのときすでに歯茎が腫れて病気になっていたのだろう。歯周病の治療において、腫れた歯肉から血が出るのは通過儀礼。血を見ることを恐れずにゴリゴリ磨いていれば、そのうち炎症がやわらいで血も出なくなる。

いずれにしても半年に一回、できれば3か月に一回程度、歯医者でクリーニングしてもらうのがマストだとわかった。歯周病の根本的な問題は、進行するまで自覚症状が出ないサイレント・ディジーズという点だ。

治療より予防がベターという事実

病院代を節約しようと通院をさぼると、あとでかえって治療費が高くつくことになる。どの医療分野でも定期検診や早期発見が大事と言われるが、歯に関しては特にそれがあてはまる。

死ぬときに後悔すること25』の本によると、ガンを予防するには毎年人間ドックでPET検査を受けた方がよいとすすめられている。それに比べると、3か月にいっぺん歯医者で診れもらう費用など安いものだ。

歯科治療なんでもブック』という本で、トヨタの健康保険組合と歯科医師会の興味深い調査結果が報告されていた。歯医者で定期検診を受ける人は、歯科以外の年間総医療費も低くなる傾向があるということだ。

統計によると、損益分岐年齢は49歳。ここを過ぎると予防にかける費用の方が、あとから治療にかかる費用よりも安くなる。資産運用と一緒で多少のリスクをとって投資(検診)にお金を回した方が、数10年後のリターン期待値は大きくなるということだろう。

1日4回歯を磨く

歯科医で紹介してもらった歯間ブラシを導入して、寝起き・朝食後・昼食後・夜寝る前と1日4回歯磨きすることにした。特に夜のブラッシングは丁寧に行い、歯磨きにかける時間は1日合計30分くらいに延びた。

仕事をしているうちは、とてもここまで歯を磨く時間は確保できなかったと思う。今までも外食したらトイレでフロスを通すなどケアしてきたつもりだったが、歯周病の進行を食い止めるところまでは及ばなかったようだ。

現実的に出先で徹底的にブラッシングすることは困難なので、その代りに寝る前の歯磨きだけしっかりやれば効果は上がるという説もある。斎藤博先生の本によれば、「最低1日1回ていねいに歯磨きすればOK」とまでいわれている。

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齋藤 博
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この本で紹介されている予防アドバイスのうち、

  • 歯の接触時間を減らす(TCH予防)
  • 砂糖をできるだけ控える
というのも積極的に実践した。歯周ポケットの深さが回復したのは、ブラッシング以外の心がけも功を奏したと思う。

歯間ブラシは効果絶大

担当医によると、口腔粘膜のターンオーバー(細胞交代)は2週間。反省して1か月ほど徹底的に歯磨きしたら、見る見るうちに歯茎が健康そうなピンク色に変わってきた。その後の検査で歯周ポケットの深さも1~2mm戻せたので、自助努力で回復可能な目標範囲は達成できたといえる。

歯磨きの回数と時間を増やした以外に、歯間ブラシを使い始めたのは効果が大きかった。3SからSまで歯間に合わせて3本使い分け、歯の前後から数回通すようにした。これまでデンタルフロスでは取れなかった歯肉の隙間まで汚れをかきだすことができて、歯磨きの効率が劇的に向上したのを実感できる。

人類の歯科衛生史において、砂糖の生産はもっとも破滅的な事件だったと思う。そして歯間ブラシの発明は、砂糖をキシリトールなどで代替するより、低コストで有益な対策になると考えられる。

良い歯医者の探し方

歯科関連の本をいろいろ読んでいるうち、歯医者の技術や治療方針にはばらつきがあるとわかってきた。歯周ポケットが6mmもあれば、もう治療を諦めて抜いてしまう歯科医もいるらしい。

診療報酬点数という観点からいえば、手っ取り早く歯を抜きまくった方が売上は増える。逆にブラッシングの指導などは全然儲けにつながらない。どれだけこうしたお金にならない「予防的指導」を行ってくれるかが、良心的な歯科医を見分けるひとつの指標になるだろう。

現実問題として、近所の歯医者を何件もはしごして評価するわけにはいかない。医師との相性という問題もある。もしたいした説明もなく「抜くしかない」と言われて納得がいかないなら、そのときはセカンドオピニオンを求めてもいいと思う。

いずれにしても抜歯は痛い。そして抜いたら後戻りはできない。今回残りの親知らずを抜くにあたっても、代替手段や保存治療の可能性はないか徹底的に調べてから決断を下した。

歯科医のインフォームドコンセント

今回開拓した歯医者は、「治療より正しいブラッシングが最優先」というポリシーらしく、やけにていねいに歯の磨き方を教えてくれる。他に治療がなければ、保険適用で200円くらいしかかからない日もある。

あまりに安くて申し訳ないので、おすすめしている歯ブラシや歯間ブラシを買って帰るのだが、それすら1本100円くらいのレベル。原価そのままで販売しているようにしか見えない。

また診療台の前に大型モニタが置かれ、デジカメで撮影した口内の状態をていねいに説明してくれるのもありがたい。ここ数か月は歯科衛生に興味がわいて、いろいろ調べて質問したい点も出てくる。

歯医者で撮影してもらった口内の写真

医師からすれば「面倒くさい」患者かもしれないが、治療の状況について根掘り葉掘り聞けるのは助かる。インフォームドコンセントを重視しているという意味で、好感のもてる歯医者さんだと思った。

デンタルリテラシーの重要性

以前のかかりつけはここまで丁寧に説明してくれなかったが、それは単に自分の興味がなかっただけかもしれない。クライアントがTCHの懸念やインレーの素材について調べて質問してきたら、的確に答えたくなるのがプロというものだろう。

病院で良い治療を受けるためには、自分でも多少は勉強してリテラシーを上げて臨むのが近道だと思う。特に歯の治療に関しては、外科的治療より日ごろのブラッシング習慣に負う部分が大きい。

さいわい公立の図書館に行けば、この手の健康関連の解説書は充実している。歯科関連だけでも5冊くらいざっと目を通せば、歯周病治療の常識的なところはわかってくる。