本の自炊に断裁機は不要。PK-513を諦めカッターに戻した理由

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自宅でSOHOするにあたって、購入するか悩んだのが自炊用の断裁機(裁断機とも呼ばれるが、PLUSの公式サイトにならって断裁機と表記を統一する)。

最上級のPK-513シリーズに慣れると、なかなか廉価なコンパクト型やカッター裁断には戻れない。しかし狭い自室に常備するには空間的に無理がある。

結局もとのカッター切断を見直し、ドキュメントスキャナーは旧型ScanSnapを使いまわした。プリンターはコンビニのコピー機で代用。簡易スキャンはスマホで済む。

在宅フリーランサーの自炊事情と資料の印刷方法についてまとめてみたい。

(2020年2月2日更新)

プラスのPK-513Lを長年使った感想

これまで会社では、プラスのPK-513Lというハイスペックな断裁機を使わせてもらっていた。

いちおう社内の不要資料を裁断スキャンする目的で経費購入させてもらったが、わりと個人用にも使わせていただいた。

断裁機は置場に困るものなので、持っている人がいればどんどんシェアすればいいと思う。刃がなまってきても、PK-513Lなら替刃が手に入る。

安定感抜群でハンドルも軽い

今までカッターでぎこぎこ本を切っていた苦労に比べると、さすが専用機。一瞬で切断できて切り口も美しい。

持ち運びには苦労するが、PK-513Lは本体が重くて作業中にずれたりしない。長いハンドルのおかげで、てこの原理により軽い力で断裁できる。慣れれば女性でも扱えると思う。

文庫本や新書クラスなら一瞬。ハードカバーの本でも、ちょっと体重を乗せてハンドルを押せば1回で切れる。

厚い本は分離しないと入らない

さすがに厚みが3センチ以上あるような本は、断裁機の入口に引っかかってセットできない。先にカッターで下処理して、本体を薄くしておく必要がある。

やり方としては竹を割るように背表紙から縦に切って、本を2冊に分離する感じ。2回に分けて断裁機でカットする。

PK-513Lに付いている「光るカットライン」機能は地味に便利だ。切る際に歯の当たる位置が赤いライトで照射され目印になる。うっかり深く切りすぎて、本文が途切れてしまうミスも防げる。

ちなみに断裁機の裏面を見ると、乾電池からライトまで導線がむき出しでつながっている。持ち運びの際は何か引っ掛けて配線を切らないよう注意が必要。

「見えないところにはコストをかけない」という潔さを感じさせる、ストイックなマシンだ。

後継機PK-513LNとPK-213

退職後、自宅用でも断裁機を買おうかどうか迷った。

PK-513Lが気に入っていたので調べたところ、後継機のPK-513LNが発売されていた。2020年2月現在、本体だけでなく替刃や受木、カッターやマットまで付いた「自炊セット」なるものが出回っている。

さすがプラスのフラグシップ。オフィス用に備品としてそなえるなら、最新のPK-513LNを選べば間違いないと思う。替刃などのオプションも流通しているので、メンテナンスして長く使える。

本格的な断裁機は場所を取る

本体だけなら値段は3万以下で買える。注文しようか迷ったが、自宅の設置スペースを考えると置き場がないことに気づいた。

せっかく本を自炊・処分して「物を持たない」暮らしを実現したいのに、巨大な断裁機家に置くのはナンセンスだ。それだけで電話帳や辞書数冊分のスペースがとられてしまう。

棚に収納した断裁機

斜めに突き出たハンドルが邪魔なのもネック。使わないときはハンドルをヒモで縛ってたたんでおくこともできる。ただし結構強い力で押し込む必要があり、使うたびにヒモをほどくのも面倒だ。

机の上には置けないので、たまに押し入れから出してきて使うかたちになるだろう。かなり重量があるので、毎回出し入れするのも気が進まない。

部屋の床に置くとしたら、鈍器のような台座に足をぶつけて痛い思いをするのは目に見えている。いずれUPS(無停電電源装置)のように持て余しそうな予感がする。

コンパクト断裁機とディスク型

代替案として、同じプラスからPK-113というコンパクト断裁機が販売されている。その後カットラインが見えやすくなったPK-213という後継機も発売された。

さらに省スペースなタイプとしては、プラスやカールからディスク式のカッターも販売されている。

ただしこれらは一度に切れる紙の枚数が10~20枚。会議の資料などカットするにはよいが、本の自炊には向かないと思う。

断裁機としての基本性能を求めるなら、プラスPK-213以上のスペックは欲しい。しかしコンパクト版でもそれなりに場所を取るうえ、価格も2万はくだらない。

それなら思い切って最上位のPK-513LNを買った方が、コストパフォーマンスがよさそうに見える。

自宅に断裁機を置くのは無理

そもそも職業的に毎日自炊を行うのでもない限り、6畳間に本格的な断裁機を置くのは似合わない気もする。SOHOの自宅オフィスで、カラーレーザー複合機を買うかどうかと同じ問題。

便利は便利だが、利用頻度と空間占有率が釣り合わない。都会ではモノを置くスペース自体にコストがかかる。

やはりこの手の大型事務用品は、オフィスや学校でシェアするのが望ましい。別に見ていて楽しいものでもなく、使うときだけ借りられればよい。

シェアオフィスでプリンターやスキャナーは借りられるが、断裁機を置いてあるところは見たことがない。いちおう刃物なので、安全上の懸念があるのかもしれない。

自炊代行サービスの活用

そもそも自分で本をスキャンしたいという暇な人は、コワーキングスペースなど利用しないといえる。忙しいビジネスマンなら自炊代行サービスを利用するだろう。

費用対効果を考えるとその方が安上がりなので、自分も昔は業者さんにお願いしていた。料金最安ではないが、スキャンピーには昔からよくお世話になっている。

中高生の頃から集めていた自宅の蔵書を1,000冊ほど処分して、10万近く払ったこともある。何十時間に及ぶ作業量と機材の維持費を考えると、自前で処理するのは現実的でなかった。

キンコーズに裁断代行サービスはあるが、1冊あたり数百円もかかってしまう。同じ値段でスキャンまでやってくれるところもあり、裁断代行だけ利用する場面が思い浮かばない。

結局のところ自宅に断裁機を導入するよりは、1年分くらい読んだ本をまとめて自炊業者に託すのがリーズナブルといえる。ミニマリスト的にも本の自炊はアウトソーシングするのが合理的だ。

初心に帰ってカッターで本を切断

最近はなるべくKoboの電子書籍を買って本を読むようにしている。

しかし古い本で電子版が出ていないことも多い。その場合はAmazonかブックオフで古本を探して買う。SPUのポイントアップを考え、新品の本を買うなら楽天ブックスを利用する機会が多い。

さすがに読んだ本がたまってきたので、試しに昔を思い出してカッターで裁断してみた。

カッターで本を自炊

薄い資料ならNTのプロシリーズAD-2Pのカッターを使う。

切っ先が30度と鋭角なため取り扱いに注意を要するが、普通の45度カッターより切れ味はすぐれている。1.5センチくらいの厚みの本なら、20回くらい刃を滑らせれば裁断できる。時間はかかるが不可能ではない。

NTのAD-2Pは日経トレンディの「文房具大全200」特集でも取り上げられていた名品だ。細工に便利なうえ細くて場所を取らないので、建築学科で模型をつくっていた頃から愛用している。

NTカッターの使い分け

ある程度、厚みのある本をカットする際は、NTのL-500GRという大型カッターを使っている。

体重を乗せて本を切るときは、やはり刃の幅が広い方が安定する。NTでサイズの大きいL型・X型だと、刃先30度のタイプは販売されていない。

段ボール箱を解体したり雑な作業をする際には、この手の大型カッターも一本あった方が便利だ。

カッターマットはムラテックKDS

机を傷つけないようカッターマットも必須。上に乗せた物の滑り止め機能もあるので、段ボールなどで代用するより安全性が高まる。

長年使っているのはムラテックのKDS-Hi、S-1000Hという緑色のマット。

両面仕様でないが、表は柔らかいゴム素材で刃にやさしく、裏は固いプラスチックで貫通しない。

ムラテックのカッターマット

自炊用ならA4サイズで間に合い、本棚に挟めば場所を取らない。1,000円以下で買えるこの手のカッターマットは、一枚持っておけば何かと重宝する。

金属製の定規も必要

アルミ製の定規は安心のシンワ製。自炊用に30センチの長さで十分だ。

手元にあるのは滑り止めなしのモデルなので、裏面には適当にドラフティングテープを貼っている。これでも若干の滑り止め効果は得られる。

アルミ製定規の滑り止め加工

本を切る際、プラスチック製の定規だと定規ごとカッターで削り取られてしまう。軽いアルミ製で十分なので、金属製の定規は必須だ。

何度か刃を入れて本に切れ目が入ったら、一見定規は不要に見える。しかし手動では微妙に手元が狂ってラインがずれるため、同じページを二度切りしてしまったりする。

ていねいに作業するなら、最初から最後まで金属定規を当てて切った方がよい。

カッター本体とマット、定規はもう20年以上使っている。だいぶ傷がついてぼろくなってきたが、使用上はまったく問題ない。

シンワ製のアルミ直定規

NTのADシリーズはいまだに替刃が手に入るロングセラー商品。断裁機やスキャナーと違って、モデルチェンジのペースがゆっくりなのはありがたい。それほど道具として洗練されているということだろう。

カッターで本を切るコツ

手動でカッター断裁するコツとしては、2~3回刃を入れるごとに切れた紙面を取り外していく。

切断後の紙が残ったままだと、二度切りして細い短冊状のゴミが出てしまう。これに刃先が引っかかって、切り口にむらができてしまう。

一度で何枚も切ろうと力を入れると、かえって作業が雑になりケガのリスクも増える。カッターの刃先はまめに交換して、軽い力で何度も刃を通すのが安全だ。

自炊用カッターの使い分け

専用の断裁機に比べると、さすがに切り口はガタガタする。しかし自分用にスキャンしてデータを見る分には、特に問題ない。

カッターの方が手作業でページをていねいに分離できるため、ドキュメントスキャナーでの紙詰まりはむしろ少ないように感じる。断裁機できれいに切断したつもりでも、ページが密着して同時にスキャナーに引き込まれ、エラーが起きることはよくある。

カッターを使ったマニュアル断裁でも、慣れれば加工の精度は上げられる。断裁機で一刀両断するより時間はかかるが、たまにまとめて作業する分にはそれほど苦痛でない。

自宅で自炊するならカッターで十分

個人が自宅で本を自炊するなら、PK-513クラスの上級裁断機はスペック過剰に感じる。

「場所を取らない」という圧倒的なメリットを考えると、性能の良いカッターとカッターマットだけそろえて手動でシコシコ切るのがベター。

自炊派としては断裁機の専門ツールを使う方がかっこよく見える。レバーを押すだけの切断作業は優雅で、仕上がりも美しい。ていねいに装丁された本をバラすには、カッターより断裁機を用いた方が罪悪感も少ない。

本をカッターで解体する際は、禅の修行で食事の前にとなえる「五観の偈(ごかんのげ)」をイメージする。本の知識を血肉にして、ミニマリストという道を成し遂げるために処分させていただくのだ。

いずれにしても、毎月10冊以上本を買う読書家なら素直に自炊代行サービスを利用した方が早い。いずれは野菜の皮むき器みたいに、厚手の本もスムーズに裁断できるコンパクトな装置が発明されそうな気がする。

ドキュメントスキャナーは必須

自宅に断裁機をそなえるのはオーバースペック。ただし書類を高速スキャンできるドキュメントスキャナーは1台持っていた方が便利だ。

本の自炊は代行サービスに依頼するのもありだが、それ以外の薄手の書類は扱いに困る。ちょっとした紙の資料や郵便物、パンフレットやカタログ類、自分のメモやノートなど、こまごましたものは自宅でスキャンした方が早い。

もう8年近く使っているのは富士通製のScanSnap S1500。それ以前はS1300というモバイル型を使っていたが、あまりに便利なので上位機種に買い替えた。

ScanSnap S1500

自宅やオフィスで自炊するなら、この手の専用機は必須だ。S1500なら専用シートを挟むことで、A3用紙のスキャンにも対応できる。

断裁機に比べてS1500は丸っこい形状なので、それほど場所を取らない。今は2か月に1回くらい、戸棚から取り出しパソコンにつなぎ、たまった本や資料をまとめてスキャンしている。

数年酷使して紙送りローラーが摩耗したせいか、紙の滑りが悪くなったのでパーツを一度交換した。たまにガラス面が汚れてデータに縦線が入るが、ウェットティッシュで拭き取れば元に戻る。

ScanSnap S1500のローラー部分

読み取りエラーや複数枚巻き込むトラブルも増えてきたが、基本機能は問題なく使えている。今の使用頻度なら、まだ数年持ちそうな気がするほど頑丈だ。

ScanSnap S1500の後継機種

2020年2月現在の最新機種はScanSnap iX 1500。手持ちのS1500からすると、後継機のiX500を挟んで2世代バージョンアップしている。

見た目は同じだが、スキャン速度や起動スピードが地味に向上している。S1500はまだ使えそうだが、壊れたらiX 1500に買い替えたい。

キヤノンやエプソン、ブラザーの類似製品は使ったことがない。スキャンスナップで特に不満はなく、アプリも使い慣れているのでこのシリーズでいい気がする。

価格は5万近くするが、自炊の利便性や耐用年数を考えると十分もとは取れるはず。お試し利用なら中古のiX500やS1500を買ってみるのもありだと思う。

プリンターはコンビニのコピー機

ドキュメントスキャナーは家にあるが、その他のスキャナーやプリンターは部屋に置いていない。最近はコンビニのプリンターが高機能になったので、必要なときだけそちらを使うようにしている。

使い方としてはPDFファイルをUSBメモリに入れて、コンビニ・コピー機に直差しする。近所のコンビニまで散歩して、ちょっとした気晴らしも兼ねられる。

LAN経由で直接データを送れるネットワークプリントも便利だが、富士ゼロックスはセブンイレブン、シャープはそれ以外のコンビニと分かれているのが面倒だった。

2020年2月現在もセブンイレブンはネットプリント、ファミリーマートやローソンはネットワークプリントサービスと窓口が分かれているのがややこしい。どちらもセキュリティ向上して複数アカウントで使えたりする、法人向けのサービスが存在する。

市販プリンターはインクジェットだと品質が微妙なうえ、本体が安くてもトナー代・ランニングコストがかかる。断裁機と同じで「空間的に場所を取る」という欠点もあり、狭い自室にプリンターを置くのは気が進まない。

コピー機シェアのデメリット

コンビニのコピー機は、他に使っている人がいると待たされるのが致命的な問題だ。

SOHOでオンデマンド利用するなら、時間に余裕のあるときでないと厳しい。毎日のように会議用の資料を刷ったりするなら、やはりオフィスに専用機をそなえた方が便利だ。

雨の日で外に出たくないとか、たまに仕事でまとまった印刷が必要なときも苦労する。

そしてコンビニコピー機ではカラープリントだと1枚あたり50円~と高くついてしまう。たまたま打合せ用にデザイン見本のカラー印刷が必要で、コンビニで5千円近く使ったこともある。

コンビニで印刷を済ませるなら、基本は1枚10円で済むモノクロ印刷。ひんぱんにカラー印刷するなら、自宅にプリンターを買った方が安上がりだと思う。

ちなみに最近はスマホに付属のカメラも解像度が増してきた。ちょっとしたイラスト程度なら、スマホで撮影すればスキャナーは不要といえる。カメラをズームすれば、広角気味なレンズの歪みもそこそこ抑えられる。

自炊文化と電子書籍を振り返る

過去10年の自炊カルチャーを振り返ると、置き場所や使用頻度によって断裁機とカッターの優位性が変わる。スキャナーやプリンターについても同様。

普通のプリンターが家にないのに、ドキュメントスキャナーだけ持っているのは不自然な気もする。しかしミニマリストとして本以外の細かい資料も電子化するには、ScanSnapの上位機種を保有するのが合理的選択だった。

ScanSnapS1500

また何年か経てば、最適な自炊ツールや外注サービスも変わってくるだろう。その都度工夫して、状況にあったシステムを考えればいいと思う。

読書は趣味だが物体としての本に縛られたくない。読む際は紙の本が便利だが、後から参照するには電子データで十分。

もう一度じっくり読み返したければ、また古本を買い戻せばいい。本の保管場所にお金をかけるより、オンデマンドで入手した方がリーズナブルだ。

そんな感じでここ数年は過ごせている。もしKoboより処理速度の速いiPadでも買えば、電子書籍を買う割合も増えそうな気がする。

なかなか新機種が出ない理由

ここ数年KoboやKindleといった電子書籍リーダーに、技術的なブレイクスルーがないのは残念だ。微妙なスペック向上程度では買い替える気がしない。

もっと便利なコンパクト断裁機や、ハイスペックな電子書籍端末が発明されてもいいと思う。開発が進まないのは、市場の需要がたいしてないということだろう。

そのあたりは個人ユーザーの知恵と工夫で改良していくしかない。とりあえず数年振りに試したカッター裁断と旧型のスキャンスナップでも、本数冊分の自炊は問題なく達成できた。