虫歯治療の詰め物素材比較。2種の銀歯とゴールド、セラミック

記事内に広告が含まれています。

親知らず抜歯後の痛みが引くのを待つ間に、最近やってきた歯の治療についてまとめておこうと思う。

7月から歯周病の治療を続けてひと段落したところで、劣化した昔の被せ物(クラウン)を交換することになった。クラウンの素材は保険適用の銀歯が標準だが、お金を出せばゴールドやセラミックという高級素材を使うこともできる。

銀歯はリーズナブルだが、歯医者に聞くと金歯の方がずっといいとおすすめされる。価格は10倍以上高くなるので、それほどのメリットがあるのか素人にはよくわからない。これを機会に歯の詰め物や被せ物に使われる素材について、いろいろ調べてみた。

結論として銀歯はリーズナブルだが、二次虫歯を避けるうえで金歯のメリットは大きい。もし土台となる歯がまだ健全で、長期的に抜かずに維持したいと考えるなら、ゴールドクラウンに投資する価値はある。

現在の銀歯=パラジウム合金

一説によると、歯に詰めたり被せたりした銀歯は短期間で経年変化するといわれている。腐食した金属が溶けだしてアレルギー反応を起こしたり、下の歯と隙間ができて二次的な虫歯になったりする危険性が警告されている。

現在、保険が適用される銀歯は「金銀パラジウム合金」という素材が主流だ。見た目のとおり銀が主成分で50%含まれるが、実は金も12%入っている。

歯の詰め物(パラジウム合金)

その他に、補強のために添加されるパラジウムがアレルギーの原因になるとされている。欧米ではすでに歯の詰め物としてパラジウムを禁止している国もある。それだけ危険性が認められているなら、なぜ日本で普通に使われているのか不思議に思う。

昔の銀歯=水銀入りアマルガム

現在主流のパラジウムとまぎらわしいのが、1970年代まで多く使用されていたアマルガムという水銀を含む素材だ。戦後の物資不足という背景もあり、安くて安定性のある水銀を含んだ合金が多く使用された。

アマルガムは水銀の神経毒性が懸念されるようになったため、日本国内の歯科医では現在ほとんど扱われていない。もし昔の虫歯治療で入ったままになっていたら、別の素材に置き換えた方がいいとすすめられている。

「銀歯の弊害」という文脈では、現在主流のパラジウム合金と昔のアマルガムの話がごっちゃになっている気がする。少なくとも素人がネットや書籍を読んだ範囲では、なかなか違いがわからない。

自分が調べた限り、一部のアレルギー体質の人を除いてパラジウムはそこまで劣悪な素材でもなさそうだ。特に男性であれば、妊娠して胎児に悪影響を及ぼす心配もない。

体内に埋め込む異物として、どこまでお金をかけて安心を買いたいか…。コスパにすぐれた選択肢のひとつとして、パラジウムを選ぶのも悪くないと思う。

歯医者で金歯がすすめられる謎

保険が適用される銀歯なら、1本3千円くらいで入れることができる。一方で歯科医が熱心に進める保険適用外の金やセラミックという素材は、大型クラウンで10万円近くかかることもある。

たかが虫歯の治療で30倍もの費用をかけて、貴金属や先端素材を使う必要はあるのだろうか。歯科医のウェブサイトによる解説は、商売目的のポジショントークのようにも感じられてうさんくさい。

なるべく客観的な情報を集めたいと思い、歯科関連の一般書籍を数冊読んで勉強してみた。そのうえで日ごろお世話になっているかかりつけの歯医者さんに、クラウンの素材について根掘り葉掘り聞いてみた。

ゴールドが推奨される理由

ゴールドの最大の利点は歯に取り付ける精度が高く、変形するため隙間が生じにくいということらしい。金属の特性として固い銀歯よりも粘りがあるため、元の歯によくフィットする。

そのため圧力のかかる奥歯に使用しても、噛み合う反対の歯を傷つけるおそれがない。年月を経て若干歯の形が変わったとしても、詰め物自体が変形して隙間を埋める効果が期待できる。

歯との隙間が生じにくいということで、二次的な虫歯を予防できる。費用の面だけ考えれば、安い銀歯を10年に一度交換しながら使い続ける方が経済的といえる。しかしその間に土台の歯が侵食されてしまえば、いずれ抜歯せざるを得なくなる。

金歯は転売できるが儲からない

歯の健康という観点からすると、「ゴールドを入れて意味がある歯かどうか」というのも重要だ。高性能なクラウンを被せても、歯周病が進んで抜歯することになれば払い損といえる。

抜いた金歯は転売できないこともなさそうだが、調べた限り相場は1本数千円。機能上、強度を増すための混ぜ物があるので、24Kの純金ではない。重量や見た目からしても、そのあたりが妥当と思われる。

おもしろいサービスとして、火葬の後に残った金歯や銀歯から形見のアクセサリーを作ってくれるところがある。クラウン2~3本で4g程度集めれば、指輪一本くらいになるようだ。

身に着けるのは少々不気味だが、気のきいた遺産の渡し方といえなくもない。加工費はかかるが、金歯のまま転売するより価値も上がりそうだ。

自分の体内に貴金属を埋め込んで資産運用するのはおもしろいアイデアだが、金歯のままでは宝飾品のように換金性が高いとはいえない。あくまで虫歯予防という観点で、たまたま歯に合う特性の金属が希少価値のあるゴールドだったという偶然なのだろう。

金の熱膨張率が歯に近い」という現象も興味深い。熱い料理や冷たい飲み物によって、口の中は温度変化が激しいと予想される。まるで鉄筋とコンクリートのように、環境の変化に応じて歯に追従するゴールド。詰め物に隙間ができにくいというのも納得だ。

見える部分はセラミックという考え方

金歯のデメリットを挙げるとすれば、単に見た目が悪いということらしい。色合い的には銀歯よりましな気もするが、白いレジンやセラミックに比べれば目立つ点は否めない。

思い切り前歯を金にするのでなければ、そうそう他人に見えるものでもない。特に上側の奥歯は人から見えにくいので、圧力に耐えるという意味でもゴールドがベストと推奨された。

下の奥歯は笑うとよく見えるので、色が白いセラミック系の方がベターというアドバイスだった。しかしセラミックは固いので、銀歯と同じく他の歯を痛めるおそれがある。さらに強い衝撃で割れることもあるから、気をつけないと数万円をドブに捨てることになる。

オールセラミックス以外にメタルボンドや複合素材など、さまざまなバリエーションがある。フレームがジルコニアともなれば、同じ保険適用外でゴールドよりも高くつく。

しかし結局のところ、セラミック系の素材はあくまで歯に近い白色という審美性を重視したものだ。フィット感や適合性・安全性という意味では、やはりゴールドが理想的という歯科医の回答だった。

長期的に審美性を保つのは難しい

また自分の場合、コーヒーやお茶をよく飲むせいか歯に色素がつきやすい。放っておくと、まるで染め出ししたようにピンク色に汚れてくる。特に赤ワインを飲んだ後は一発で染まる。

定期的にステイン除去効果の高い歯磨き粉を使えば、ある程度目立つ部分は自力でホワイトニングできる。ここ数年は週一程度Ora2プレミアムの世話になっている。

ただし研磨剤入りの歯磨き粉でも、歯の黄ばみまでは解決できない。年齢とともにますます歯全体が黄ばんできているので、セラミックの場合は色合わせが難しいと思う。

数十年後にますます歯が汚くなって、1本だけ白いままだったらかえって残念なことになりそうだ。そういう将来的なリスクを考えると、下手に白さを追求するより素直に金属のクラウンを被せた方が無難に思われる。

なぜ銀歯が保険適用なのか

パラジウム合金を禁止してゴールドを保険適用にしてしまうと、国の保険料負担が跳ね上がることは想像がつく。金属系のなかで廉価な銀歯だけ保険適用OKなのは、最近の介護保険と同じ。給付を抑制したいという経済的・政治的理由が大半ではないだろうか。

歯の詰め物も銀歯は最良の素材でないが、貴金属に保険適用するのは現実的でない。過去に使われていた粗末な合金に比べれば、まだ弊害は少なそうにみえる。そのあたりのコストとデメリットを比較して、やむなく許容されている状況なのだろう。

まわりの高齢者で、パラジウム合金の詰め物を30年ノーメンテで入れたままという人もいる。自分の詰め物を観察しても、素材自体の劣化というより歯周病の進行が不具合の原因。ブラッシングの心がけ次第で、今の銀歯も長持ちできるといえる。

歯髄幹細胞による再生医療

健康保険が利用できない先進医療や自由診療も、歯の詰め物と似たようなものだろう。例えば膝の軟骨に関する再生医療で、保険が使えるのは大規模な外傷性軟骨欠損症か、離断性骨軟骨炎という特殊な症状に限られている。

患者数の多い変形性膝関節症に適用を認めてしまうと、国の負担が馬鹿にならないという裏事情は想定できる。幹細胞を用いた歯髄や象牙質の再生治療も研究が行われているが、広く保険適用で利用できるのはまだ先になりそうだ。

歯髄の幹細胞は歯自体の再生だけでなく、全身の神経や血管に応用できる可能性があるらしい。歯髄の細胞は抜歯した歯から採取されるので、親知らずを抜いて捨ててしまったのはもったいない気もしてきた。

歯髄細胞の将来性に賭けるなら、親知らずは問題が出るまで抜くのを待つのもありだと思う。ただし智歯が接触する第二大臼歯が虫歯になっているとか、やむを得ない事情があれば早めに抜くメリットの方が大きいといえる。

抜歯の痛みや治療費も含め、親知らずの処置に100%ベストな解決法というのはなさそうだ。抜いた後でも奥歯の奥をよくブラッシングしないと、かえって虫歯を悪化させてしまいそうな懸念もある。

歯に投資する価値

仕事で歯を見せる人ならまだしも、中年のおっさんが金歯や銀歯を付けて恥ずかしがることはない。堂々と金属の詰め物を見せて笑えばいいし、ましてや金歯ともなれば、価値が分かる人には自慢できる。話のネタにもなって一石二鳥だ。

同じゴールドやプラチナという貴金属でも、腕時計の素材に投資するよりは歯に詰めた方が、日々ありがたみを実感できる。せっかく治療した金歯を無駄にしないように、歯磨きにも熱が入りそうだ。

英会話のような習い事には積極的にお金をかけた方が、元を取ろうという心理が働いて上達するといわれる。それと同じく、歯にも保険適用外の治療で投資した方が、長く健康を保てるのではないだろうか。

金歯のメリットは明らかなので、あとはどこまで予算的に許容できるかという個人的な費用感の問題。もし今後も歯周病の治療と予防に努めていく覚悟なら、ゴールドクラウンに投資してもいい気がしてきた。