小田急線、柿生~鶴川~玉川学園前の賃貸物件はなぜ格安なのか?

記事内に広告が含まれています。

賃貸物件を探すには、一昔前なら駅前の不動産屋さんに足を運んで紹介してもらうしかなかったが、最近はHOME’Sなどの物件情報サイトで比較閲覧できるようになり、大変便利になった。中には東京R不動産のように、訳アリ物件を魅力的なストーリーでポジティブに紹介してくれるサービスもある。

格安物件を調べるのが趣味

暇つぶしに、次に引っ越してみたい場所を検索してみると、素人ながらに各地域の人気度合いや相場価格がわかっておもしろい。特に、会社にぎりぎり通勤できそうな圏内で、「家賃・共益費込み3万円以下、礼金敷金なし」とかエクストリームな条件で調べるのが好きだ。今まで知らなかったエリアに穴場の物件を発見して興奮したりする。

いざ検索してみると、ユニットバス付きの6畳間で3万以下とか、信じられない条件の物件が郊外にはごろごろ転がっている。田舎にいた頃は、窓の外から田んぼや畑を見ては、カエルがうるさいとか肥料臭いとか、不満ばかり垂れていたが、大人になると自然に囲まれて暮らすことは心安らぐ幸せと感じられるようになってきた。

始発に乗れて通勤1時間以内の田舎

勤務地域が渋谷~新宿エリアであれば、「通勤1時間」という基準でかなり西の方まで候補を広げることができる。都心の平均通勤時間は片道58分らしいので、そう悪くはない。最近、高尾駅付近の「中央線に始発で座れる」マンションが即日完売で人気らしいが、飯能や橋本でも始発メリットを享受できる。

若い頃は、「終電を逃しても歩いて帰れる」とか「東急ハンズまで自転車で買い物に行ける」という理由で、都心に住むのが便利だと思っていた。最近は騒音や大気汚染、満員電車など、高い家賃に見合う便利さを感じなくなってきた。

以前より交友関係が減って、週末は飲み会というより山登りに行くとか、アウトドアに興味が移ってきたせいかもしれない。

小田急沿線、なぜか安い鶴川周辺

都心から西側に伸びる沿線の中で、小田急線は小田原~箱根まで通じているのがおもしろい。JRより運賃も安いので、日常の足に使うには便利だ。小田急線沿いの安い物件をソートすると、たいてい秦野の東海大学前~鶴巻温泉と、町田の鶴川周辺が候補に挙がってくる。

秦野市は山間の盆地で、丹沢登山に来る以外は特に用事がないエリアだ。小田原と厚木は会社も多いので家賃は高い。その狭間にある秦野が不人気なのはわかる。

しかし多摩丘陵の鶴川は、新百合ヶ丘、町田に近く、一応東京都内である。なぜここに安い物件が集中するのか、不思議でならない。真相を調べるため、鶴川に向かってみた。

小田急線で新百合ヶ丘付近の車窓を眺めると、線路沿いのかなり急斜面に住宅が建っていることに気づく。このあたりは多摩丘陵(武蔵丘陵)と呼ばれ、八王子南部の最高標高は220メートルくらいある。

鶴見川の源流があるあたりが最深部と思うが、藁ぶき屋根とまでは言わないまでも、田畑と森が広がるのどかな田園風景を眺められる。はじめて来たときは、ここが東京都とは思えないくらいカルチャーショックを受けた。町田リス園・薬師寺公園の近くで、中古の一戸建て500万円という物件も見たことがある。

最安物件は共益費込み1.6万

今回HOME’Sで目星をつけた最安物件は、玉川学園前で敷金礼金なし、共益費込みで賃料1.6万円だった。外から見たが、線路わきからとてつもない坂を上り、四畳半で眺望のない道路側の部屋だった。それでもユニットバスは付いているので、いざとなれば家賃1.6万の物件で新宿に通勤できると考えることはできる。

傾斜の厳しい坂道の上で、近くにはデイリーヤマザキしかなかった。まともに買物するなら、鶴川駅まで15分くらいかけて歩く必要があるだろう。

町田市三輪町は駅から遠いがスーパーは近い

さすがに2万以下の物件は限られるが、共益費込みで3万円まで予算があれば、選択肢はかなり広がる。ちょうど鶴川と柿生の中間地点に三輪という地区があり、ここに安い物件が集中しているようだ。

神奈川県に不自然に食い込む東京都町田市、その中でも、鶴川~柿生からこどもの国付近まで、川崎市に進出した飛び地エリアだ。

三輪町はなぜか2~3階建ての安いアパートが多く、コンビニも2軒ある。そして南東には島忠ホームズと、その中にスーパー三和があるので、買物には便利そうだ。もし自宅でSOHOするとして毎日会社に通勤する必要がなければ、駅よりスーパーが近い方がうれしい。

島忠ホームズ町田三輪店は安くて便利

スーパーSANWAは地元のチェーン店らしく、この付近に4店舗ほど見かけた。いまどき電子マネーが使えず現金支払いのみなのが痛いが、独自のポイントカードで0.5%の還元がある。

地域の物価は、だいたい鶏むね肉の値段でわかるが、国産100gで税抜48円だった。近所のスーパーでセールがあっても、ここまで安くなることはない。現金決済は不便だが、価格面のメリットは大きい。

島忠ホームズも、田舎のホームセンターらしく、資材や工具がかなり充実している。建材もいろいろ手に入るして、加工もしてくるので、ちょっとした畑の作業小屋くらいは自前で建てられそうだ。

鶴川か柿生駅まで歩けばどちらも20分くらいかかる。ただし鶴見川の流域で三角州になっているので、周囲に比べて起伏が少ない。二股に分かれた川沿いの道を歩いていくと、鶴川・柿生のどちらの駅にも辿りつける。

鶴川駅にはスタバや家電屋、銀行支店があり結構便利。新百合ヶ丘や町田ほどではないが、日常の用事はほぼ駅前で間に合うだろう。さらに松屋、王将、CoCo壱番屋、リンガーハットもあるので、飲食系の株主優待フリークに喜ばれそうだ。柿生と玉川学園前にもスーパーや多少の飲食店はあるが、かなり寂しい。

町田市三輪緑山の巨大住宅地

町田市三輪町の東西には、山間を切り開いて造成された、麻生台と緑山の団地が控えている。Google Earthで見ると、緑山の戸建て住宅が立ち並ぶエリアは圧巻の光景だ。

実際に行ってみると、鶴川駅からはかなりの坂を上る必要があった。徒歩だと30分くらいかかる。駅までバスに乗るか、自家用車で通勤することに成るだろう。

住宅街にいくつか賃貸に出ている物件もあるが、相場は三輪町と同じか少し高いくらい。駅からの遠さと起伏を考えると、積極的に選ぶメリットを感じられない。

緑地が広がる鶴見川クリーンセンターと、「ふれあいの丘」という公園がある麻生水処理センターは、どちらも下水処理場だ。

横浜市青葉区の高級住宅街とのギャップがすごい

鶴見川沿いに南下して川崎市~横浜市に入ると、寺家(じけ)ふるさと村という、景観保存されたエリアがある。「横浜市で唯一ホタルを見られる」とうたっているとおり、自然の豊かさは半端ない。

そこからさらに鶴見川をサイクリングロードに沿って下流に向かうと、田んぼの中に忽然と東名高速道路の横浜青葉インターが出現する。国道246号から先は有名な高級住宅街の青葉区。川崎市麻生区の田園風景とのギャップがすさまじい。

東急終点「こどもの国」付近も、青葉区の香りを感じられる高級住宅地だ。この一帯は風致地区で、緑山の住宅地まで森林が広がっている。

鶴川周辺の賃貸アパートが安い理由

鶴川周辺の賃貸物件が安い理由として、以下の仮説を思いついた。

  • 鶴川周辺は多摩丘陵の真ん中で起伏が多く、生活に不便
  • 周辺に大学が多いが、学生が減って賃貸物件の需給バランスが崩れた

Googleマップで上から見ていると気づきにくいのだが、柿生から玉川学園前までのエリアはかなり山がちな地形である。峠というほどの坂道はないが、ギア付きの自転車でなければ上れないくらいの急坂が多い。駅まで歩いて30分かかるとなると、都内でも自家用車が必要なエリアといえる。

また、周辺に玉川大学、和光大学などいくつか大学・短大があり、学生向けに建てられた賃貸アパートが余っているように見えた。今後も人口減少で入試の倍率が下がれば、都心の名門校に人気が集まり、田舎のキャンパス周辺は過疎化が進むと思われる。

安い賃貸物件を探すなら、郊外にある「○○大学前」という駅のまわりが穴場といえる。小田急沿線でいうと、「玉川学園前」「東海大学前」の2つが狙い目だ。