やまめの学校MTB体験記。バンクや丸太越えでバランス感覚を養う

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ロードバイクの効率的な乗り方について書かれた『自転車の教科書』という名著がある。

著者の堂城賢さん元MTBのプロライダー。現在は長野で「やまめの学校」というスクールを開催されていて、日帰りでレッスンを受けることができる。

1月の寒い時期にMTBのコースを受講してみた。当日の様子をかいつまんで紹介してみたい。

小屋での座学

レッスン当日は朝9時集合。小屋の中にはバイクのフレームやホイールが所せましと並べられていた。

参加者はリピーターが多いようで、10名くらいいる受講生の中で初参加は自分ひとり。中にはバイクを預けて通っている常連さんもいる。

最初の1.5時間は小屋の中で座学。著作に出ている「おじぎ乗り」はみな予習してきているようだ。まだ本では紹介されていない最新のノウハウやテクニックを紹介してもらえた。

順番に体の柔軟性などチェックしてもらえるので参考になる。自分は元から体が固いうえ、自己流の筋トレで変な癖がついてしまったようだ。床に寝てもスムーズに膝を回せない。

腹筋を鍛えるにしても、レッグレイズやヒップレイズは自転車に乗る上で逆効果らしい。バキバキに割れた腹筋よりも、普段は柔らかくて骨盤を前傾させると自然に力が入る腹筋が理想とのこと。

筋肉を脱力させるというのは意外と難しい。普段から姿勢が悪かったり体が歪んでいたりして、不自然に緊張させてしまっているのだろう。

メリダBIG.NINEをレンタル

座学が終わると外に出て、各自のバイクをセットアップする。今回レンタルさせてもらえたのは、メリダのBIG.NINEというマウンテンバイク。フレームはカーボン製で、20万以上する高級機材だった。

MERIDA BIG.NINE

MTBについては、旅先でレンタルして乗ったことがある程度の初心者。昨年、石垣島で借りたキャノンデールは同じく29erサイズで、路上ではロードと変わらないくらいスピードが出たのを覚えている。

ロードのキャリパーブレーキに比べると、MTBのディスクブレーキは効きが強すぎてスムーズに減速しにくい。人差し指一本くらいで制御するのがいいそうだ。

チェーンリングは小さいため、ローギアでは超低速で急勾配も上がることができる。上級者になると、その場で止まったりウィリーすることも可能ならしい。

丸太越えのレッスン

さまざまな斜面を上り下りしたり、丸太を乗り越える練習をさせてもらえた。丸太は前輪を浮かせた際に、少し後ろに体重移動するとうまく越えられるようになった。

MTBでは不安定な路面で、低速でも倒れないバランス感覚が要求される。堂城先生の言葉を借りると「両足荷重」が大事。

片足だけ交互に体重を乗せるようなペダリングだと、障害物に乗り上げた際、簡単に転んでしまう。常にペダルを回し続けて、どちらの足にも荷重が偏らない状態が理想らしい。

ロードバイクでは意識したことのない感覚だ。多少ペダリングがまずくても、慣性で進むことができるからだろう。

MTBの世界では、低速で不安定な石や枝の上に乗っても、倒れずに進み続けるというスキルがある。時速5キロを下回るような低速域での車体コントロールなど、ロードのギア比では体験できない領域だ。

逆に考えるとMTBをスムーズに乗りこなせるようになれば、ロードのパフォーマンスを底上げできる可能性がある。普段は意識しないような筋肉の使い方や、バランス感覚を養うことができる。

昼食後は公園~トレイルへ

ランチは近くのレストラン「鈴音」でボリュームのある唐揚げ定食をいただいた。食事の面でも安曇野観光を楽しめるように配慮されている。しかしみな勉強熱心で、食事中も先生を質問攻めだった。

鈴音の唐揚げ定食

午後のレッスンは、少し坂を上ったところにある公園に移動して始まった。そこにはなぜか、MTBの練習にちょうどよいスロープや段差がそろっている。

安曇野の公園

砂場の中を低速で周回するエクササイズはレベルが高く、何度挑戦してもバランスを崩してうまくいかなかった。続いて「ペダルを回さず体重移動だけでバンクを乗り越える」という大技も練習する。

堂城先生が見せてくれるお手本はスムーズなのだが、自分でやるとなぜか途中で止まってしまう。他の生徒さんのバイクに乗っても再現されていたので、機材の性能差が原因でもない。

そこはやはりプロのテクニック。同じ人間として不可能ではないと思うのだが、MTB初心者にはハードルが高すぎた。

帰りは大雪

その後は林の中のトレイルに向かい、フリーな走行を楽しめた。段差のある難所では、客観的にフォームをチェックしてもらえる。

そのうち雪が降り始めたと思ったら、あっという間に積もり始めた。小屋に戻って解散する頃には積雪3cmくらい。

有明駅の積雪

電車に乗っても雪は降り続け、塩尻駅の信号トラブルで30分も待たされた。本降りになる前に練習できたのは、運がよかったといえる。

MTBが欲しくなる

家に帰ってから練習用にMTBが欲しくなったが、29erは車体が大きいのでロードよりさらに場所を取る。また、東京都内では安曇野のようにMTGを乗りまわせるトレイルが思いつかない。

荒川・多摩川の河川敷や、奥多摩の林道を開拓するしかないだろう。八王子の滝山城跡などが意外と穴場かもしれない。MTBのグリップ力とギア構成なら、ラピュタ坂もクリアできそうな気がする。

『自転車の教科書』はイラストも豊富でわかりやすいが、実際にレッスンを受けてみると、いろいろ気づかされる点が出てくる。普段と違うMTBで練習できたのも勉強になった。

ペダリングや体重移動のコツをつかみたいなら、ロード乗りでもあえてMTBスクールに参加するのはありだと思う。リピーターの人はたいていどちらも受講して、スキルの幅を広げているようだ。

前泊なら安曇野ユースがおすすめ

レッスンは朝早いので、東京から向かうなら現地に前泊する方が無理がない。

今回利用したのは、スクールの南にある「安曇野パストラルユースホステル」。宮古島の大会でユースに連泊した際、会員になっていたので、割引料金で宿泊できた。

安曇野パストラルユースホステル

大糸線の穂高駅から歩くと30分以上あるが、山並みがきれいなのでぶらぶら散策するのも楽しい。建物は山小屋風のつくりで、相部屋には畳を敷いた二段ベッドが入っている。オフシーズンで冬期休暇に入る前だったこともあり、ほとんど貸し切り状態で泊まることができた。

安曇野ユースの朝食

朝食ではロールパンを大量にいただけて、地元のリンゴジュースもおいしかった。ユースなので料金は安めだが、設備もきれいでリゾートに来た気分を味わえる。「やまめの学校」参加前に前泊するなら、おすすめの宿だ。