コアの株主優待でもらったプレミアムパス。東京国立博物館を探訪

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数ある株主優待の中でも、レア度の高いコア。東博をはじめとして、全国の国立博物館4館(東京・京都・奈良・九州)で共通して使える年間パスをもらえる。住んでいる場所や、使う人を選ぶマニアックな優待だが、さらに株式1年以上保有の条件が付くため取得の難易度も高い。

昨年仕込んでから1年間、株価が上がっても下がっても優待獲得のためにひたすら耐えてキープしてきた。ついに入手したプレミアムパスで訪れた東京国立博物館。さっそくレビューしてみようと思う。

コアという会社

優待獲得のためには、単元株100株でなく200株の保有が必要なので注意が必要。コーヒーをもらうのに300株必要なダイオーズと同じ罠がある。

COREという会社が何をやっているのか、優待をもらって初めて調べてみた。システムインテグレーションやデータセンターをやっているIT系の会社で、博物館とは何の関係もなさそうに見える。

知的で渋い印象を出したかったのか、事業と関連しないユニークな優待を打ち出すのはありだと思う。少なくともQUOカードとか配るよりはインパクトがあって、投資家に覚えてもらいやすい。

プレミアムパスは5千円の価値

上野の東京国立博物館に向かうと、正門の右側にチケット売り場がある。外国人が多く、平日でも行列ができるほどにぎわっている。コアの優待券をプレミアムパスと交換するには、左側の「会員受付窓口」で済むようだ。こちら一般向けの受付より空いているので助かる。

対象の「メンバーズプレミアムパス」は1年間有効で、一般なら税込5,000円の価値がある。現在の株価だと200株買うのに必要な資金は28万くらいなので、優待利回りとしては1.8%くらいだった。配当も2%に満たないくらいなので、希少性のわりにはたいしてお得でない。

プレミアムパスには特別展の鑑賞券が4枚ついてくる。これは1人1回1枚使い切りだが、他の人にも渡してグループで観ることもできる。平常展だけのメンバーズパスなら、一般2,000円で買える。こちらも同じく全国4館共通で、1年間使えるフリーパス。常設展の通常料金は620円なので、4回通えば元が取れる計算だ。

博物館には年に数回無料観覧日もある。2,000円の年間パスが高いか安いかは微妙だが、近所に住んでいて散歩ついでに寄るならありだと思う。敷地は広いので、のんびり回れば1時間くらい、芸術鑑賞しながらウォーキング・エクササイズできる。

年間パスと特別展観覧券の違い

会員証はテレホンカードと同じ薄さのカードで持ち歩きやすい。コアの優待券をもらってから引き換えるまでだいぶ時間が過ぎてしまったが、「交換した日から1年間有効」になるようだ。

特別展の観覧券も同様で、交換日のスタンプを押され、そこから1年間使える。東博の特別展は年に5回くらい開催されるので、年間スケジュールを見て興味がある展示で使えばよいだろう。

ただし、このチケットは東博の特別展でしか使えない。ややこしいが京都や奈良の博物館に行く場合は年間パスの方で、「特別展が団体料金で観られる」という若干の割引が効くようだ。

東博の特別展はたいてい地味な内容だが、元を取るため漏れなくチェックしておきたい。今回のマルセル・デュシャン展はどうでもいいかと思って、チケットを使わず温存してしまった。あとから今後の展示予定を見ると、かなりユニークな内容だったといえる。積極的に観覧券を使っておけばよかったと後悔した。

国宝・重文展示物がごろごろ

東博の展示は、一部撮影禁止の展示物を除いて自由に写真が撮れる。とはいえ静かな展示室でシャッター音をバシバシ響かすのは無粋なので、スマホには無音化アプリを入れておいた方がいい。

展示内容は先日訪れた青山の根津美術館と似ているが、やはり国立の博物館だけあって物量が半端ない。国宝級の仏像や書画がごろごろ転がっているのは驚異的だ。わかりやすいところでは教科書に載っている有名な埴輪もあったりして、予備知識なしでもそこそこ楽しめる。

根津美術館にあった尾形光琳の夏草・秋草図屏風は見事だったが、東博には俵屋宗雪の秋草図屏風がある。秋草がテーマにしては花満開でかなりゴージャスな感じだ。

ロマサガ3の洞窟寺院に出てくるトラウマ級グラフィックのガラテア。江戸時代のマリア観音像が元ネタではないかと思った。

白磁に黒いひび割れが入っているあたりが、見た目的にそっくりだ。もちろん赤ん坊を抱いているバージョンもある。

平成館のロビーは公共昼寝ゾーン

とりあえず本館の1~2階をまわるだけでも、お腹いっぱいになれる。北側の裏口から出ると、池を挟んで庭園と茶室があるのは初めて知った。こちらは春と秋にそれぞれ1か月だけ公開されるようだ。

本館から渡り廊下を通って平成館に行くと、ホールに居心地のよさそうなソファーがたくさん並んでいる。どういうわけか、ここで昼寝している人が大勢いて、有名な仮眠スポットなのかもしれない。年間パスを入手したら、上野で休憩できる穴場として活用できそうだ。

平成館の1階は、もっと古い土器や埴輪が所狭しと並べてある。一番人気は群馬県にある若水塚古墳から出土した、にやけ顔の埴輪、盾持人。ほかの無表情な埴輪の中で、なぜかこれだけ笑っている。

どうみてもうけるので、日本人にも外国人にも写真撮影スポットとして大好評だった。むしろそのために、人がたまっても困らない展示台の隅に置かれている。

法隆寺宝物館の見どころ

表慶館はお休みだったが、奥の法隆寺宝物館はオープンしていた。ここは谷口吉生設計の有名な現代建築なので、建物自体に見る価値がある。

エントランスに広い池を設けて、来館者をあえて迂回させるアプローチ。ロビー部分は屋根のかかったガラスの箱で、空調制御されたピロティーのような半屋外的空間になっている。

展示室は東博の中でも一番暗いといえるくらい、かなり照明を落としてある。アプローチとロビーをゆっくり通過することで、徐々に目を慣らさせる効果がある。建物の大きさに比べて風除室はかなり小さく、茶室に入るような気持ちになる。

中2階の資料室、席数は少ないが平日の日中は空いてそうだ。椅子はイームズのアルミナムチェアー、卓上ライトはアルテミデのトロメオがゴージャスに備えてある。

資料を持ち込みして勉強したり可能なのかわからないが、カフェが混んでいる日はここでも休憩できそうだ。昼寝するなら平成館のソファの方が快適だろう。

東洋館の内部空間は必見

今までまともに観た記憶がないが、東洋館のアジアギャラリーにも寄ってみた。帝冠様式の古めかしい外観に反して、内部はスキップフロアを連続させたドラマチックな空間になっていた。

空中に浮かせたスラブで展示ゾーンを区切り、吹抜けを囲んでらせん状に上がっていく動線が計画されている。渋谷の東急ハンズと似ているが、こちらは手すりを通して大空間を見渡せるのが気持ちいい。

まさか東博の中にこんな劇的なスペースがあるとは知らなかった。調べたらこちらは谷口吉郎の設計で1968年の作品。宝物館はディティールや奥ゆかしさで魅せる感じだが、東洋館はダイナミックな空間構成が度肝を抜く。谷口親子の作品だが、作風の違いが昭和と平成の時代を感じさせる。

広すぎて1回では見きれない

3時間くらいかけてのんびり東博を回ったが、それでも全体を網羅しきれた気がしない。スルーした企画展や庭園もあるし、展示物もローテーションして次々出てくるのだろう。上野公園の散歩も気持ちいいので、谷根千エリアに住んでいたら毎日通いたいくらいだ。

これからパスが使える1年間、都心に出る用事があったらなるべく予定を空けて東博を探検したいと思う。日本やアジアの美術品が好きな人なら、1年待ってコアの優待券をもらわなくても、2千円のフリーパスを買って十分元が取れると思う。