売上1,000万超。2年後の消費税課税・納税を逃れる方法

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年間売上1,000万を超えると気になるのが、消費税の課税だ。本当は売上でなく利益で判定してほしいところだが、そんなルールにしたらいかようにでも操作できてしまう。黒字倒産の逆で、赤字納税とでもいうべき笑えない状況になりつつある。

バカにならないソフトのライセンス料

たまたまUnityというゲームエンジンを使っていて、これが$100,000円以上の売上だと有料版Plusライセンスの購入が必要になる。今の1ドル=111円くらいの相場だと、1,110万円くらいの売上が基準だろうか。面倒なので、来期1年間は無償のUnreal Engineに乗り換えてもいいかなと思う。

仕入れのないIT稼業だが、開発環境を維持するために地味な投資は必要になる。ブログを書くだけだったら、7万円のSurface Goでもオーバースペックなくらいだが…

CGやAIを扱っていると、この手のネットブックやCULVでスマートに仕事できないハンデがある。高価なGPUが必要だし、電気代も高くなるのが悩みの種だ。重い処理はサーバサイドに任せたいが、個人レベルだと自前のPCでやるより経費が高くつきそうだ。

IT企業のみなし仕入率は最低

消費税の課税条件について、前もって調べてみた。課税事業者になっても一方的に不利ではなく、納付した消費税の方が多ければ還付されるという利点もある。そのため、設立当初から設備投資がかさむ場合は、あえて最初から課税事業者を選ぶというのは起業の常識だ。

ところがIT業界の場合は、仕入れや設備といってもせいぜい数10万のパソコンやソフトウェアに投資するくらい。経費の大半は人件費なので、基本的に売り上げに含まれる消費税は丸儲けになる。なので、プログラマーが課税事業者になっても基本的にうれしいことは一つもない。

IT関連のみなし仕入率は業界最低の50%(第五種サービス業)。簡易課税を選んだとしても、預かった消費税の半分しか控除してもらえない。さらに原則課税で経費に含まれる消費税を計算したら、たいていそれより下回るのではないかと思う。

出張手当が課税仕入れなのは救い

IT会社の経費の大部分を占める給与や保険料は当然課税仕入れでない。オフィス賃料は課税対象だが、今のSOHO賃貸はそもそも家賃が安すぎるので、わざわざ按分して経費に入れていない。通信費や光熱費も同様だ。

唯一の希望は出張関連の手当てである。適当に旅費規程をつくって水増ししている日当や宿泊費は、消費税の課税対象として認めらえるようだ。ただし海外出張は対象外なので注意がいる。

年間100日くらい安宿を渡り歩いて出張したことにすれば、支払った消費税が売上分を超過して逆ザヤ還付を受けられるかもしれない。宿代や交通費は実費で出ていくので、趣味も兼ねた旅行でないと割に合わない。それでも会議費や交際費を駆使するよりは、出張手当の方がクリアに節税できて効果が高いと思う。

課税対象は「2年後から」の理由

課税事業者になるのは「売上1,000万を超えた年度の2期目後から」という、妙な時間差がある。簡易課税の選択も変更すると2年間は戻せない。前から不思議に思っていたこのタイムラグだが、実際適用対象になってみるとその理由がわかってきた。

うっかり課税事業者になってしまったら、1年会社を休眠状態にして支払いだけ増やす。売上ゼロで経費を積んだら、その分だけ消費税は還付される…誰もが考えそうなセコイ方法だが、おそらくこういう利益コントロールを塞ぐために時間差が設けられているのだと思う。

もし売上オーバーした翌期から課税されるとわかっていれば、大きな設備投資を数か月遅らせれば、その分支払った消費税の還付を受けられる。当期の利益を抑えるには、決算賞与とか経営セーフティ共済とか、別の手段を使えばよいだろう。

2年後の出張や設備投資は読めない

実は自分も「消費税課税は翌期から」と勘違いしていたので、来年は仕事をセーブして、たくさん出張しまくろうと考えていた。売上ゼロで出張手当108万かかったら、ごっそり8万円は消費税分として還付されるはずだ。住民税均等割分くらいは還付で稼げそうな予感がする。

しかし課税対象が2年後となると、なかなか状況が読めない。設備投資のタイミングをずらすとしても、1年先まで的確にシミュレーションするのは困難だ。自社の経費より他社都合の売上の方がコントロールしにくいから、翌期も普通に営業しているとまた1,000万超えて課税期間が長くなってしまうかもしれない。

特定期間という罠まである

安易な利益・経費調整で消費税の還付を増やそうという発想を防ぐために、国税庁は2年縛りというルールを設けているのだろう。

資本金1,000万以上、売上1,000万超のほかに、会期前半の売上が1,000万超かつ給与支払い1,000万超だと、その年度からいきなり課税対象になるという第3の「特定期間」もある。

課税逃れ、納税回避をふさぐ細則がいろいろ出て来た経緯を考えると、どうやら消費税は地雷のようなので素人は触れない方がよさそうだ。大人しく1年間だけ、簡易課税で50%納税してゆるしてもらおう。税込売上108万なら4万円の出費で済む。

消費税還付を最大化する事業スキーム

思考実験として、あえて消費税の課税を避けた事業スキームを考えてみた。例えば2年ごとに国内と海外の取引を切り替える。海外取引が課税対象外であれば、国内取引で売上1,000万超でも、2年後の課税期間、かかった経費分だけまるまる還付を受けられるはずだ。

ただし、海外との取引でも国内でソフトウェア開発を行い、役務提供に該当すれば非課税事業にならない。本気でやる場合は海外事務所の準備、輸出証明に該当する契約書等々、下準備が必要になる。また先述のとおり、海外出張の手当は課税支払いにならないのもマイナス要素だ。

あるいは国内事業だけで、「2年周期で売上1,000万超からゼロまで変動させる」という方法も考えられる。正確に2年おきでなくても、数年に一度地上に出てきてがっつり稼ぐ、セミみたいな会社でもいい。

お客さん相手の商売だと、なかなかそこまで融通も効かせられない。そもそも平常時の売上がめったに1,000万を超えないなら、簡易課税を選んだとしても納税するのは最大4%。2年周期で繁忙期が訪れる彗星のような事業を構想するよりは、さっさとみそぎを済ませて非課税に戻った方が早そうだ。