経営セーフティ共済が小規模企業共済、確定拠出年金よりお得な理由

記事内に広告が含まれています。

個人事業~中小企業経営者の節税ネタとしては、小規模企業共済、個人型確定拠出年金(DC、日本版401k)と並んで定番の経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)。取引先が倒産した際に、連鎖倒産を防ぐため、掛け金に応じて無担保・無保証人の融資を受けられるというのが本来の目的だが、もっぱら節税対策で利用されている。中小機構が提供する合法的節税商品、まあ政府公認の法人向けガン保険みたいなものだろう。

会社の方では節税用に数年前から加入しているが、個人事業の方でもぼちぼち収入が増えてきたので、とりあえず納付月数を稼ぐため、低めの掛金で経営セーフティ共済に加入してみた。法人役員&個人事業主として、上記3種の国営節税商品を試してみたが、短中期の節税対策として流動性を重視するなら、経営セーフティ共済が一番有利な気がしている。

経営セーフティ共済の節税効果は年間最大480万円

掛金は最高で毎月20万円。さらに前納分も翌12か月分までは、納付した事業年度に経費化できるので、年初から満額で積み立てれば最高で480万円の損金を発生させることができる。

積み立ての限度額は800万円まで。ある程度の規模の会社ならたいしたことない金額だが、個人事業なら活用の余地があるだろう。また、40ヶ月(3年と4か月)以上の納付月数がないと、任意解約の際に最大20%割り引かれて戻ってくる。この解約手当金は収入とみなされるので、結局のところ税金の支払いを先延ばししているだけだ。

節税メリットを最大化するには、キャッシュフローを逼迫せず、ちょっと赤字になるくらいの掛金を毎月納め、決算前の状況を見て予想外に利益が出そうな時は1年分前納するのがよさそうだ。その上で、退職金支払いか設備投資など、大きな支出があるタイミングに合わせて解約するのが、賢い利用法といえる。

経営セーフティ共済のアナログな申し込み方法

ネットで手続きはできず、中小機構の公式サイトから申請書類を郵送で取り寄せ、手書きで申し込まなければならない。個人の場合は、直前の確定申告書(決算書・収支内訳書等含む)と納税証明書(その1)の添付書類が必要。

確定申告書は「所轄税務署の受付印があるもの」と指示がある。国税庁の「確定申告書作成コーナー」サイトから出力した前回の申告書は、控えをもらい忘れたのか紛失したのか、手元に書類がなかった。中小機構に問い合わせたところ、納税証明書があれば、受付印がなくてもPDFファイルから印刷した申告書でOKとのこと。

商工会などの委託団体経由で申し込む方法もあるらしいが、特に所属していないので、口座がある銀行窓口に持って行った。申し込みは、自分の口座がある支店でなくてもよいようだ。窓口で待たされること30分ばかり。添付書類はその場で返却された。申請時に見せ金は必要なく、2か月程度の審査終了後に、銀行口座から引き落としが始まる。そのため、基本的に初回の引き落としは3か月分になるらしい。

手続きが完了すると、共済契約締結証書が送られてくる。

その後は、申請時に記入した金額が毎月指定口座から引き落とされるだけで、月額変更するとか翌年分前払いするとかの用事がなければ、特に中小機構にコンタクトする必要はない。それらの申請もすべて郵送ベースなので、手続きが面倒だ。決算前に前納を計画している人は、該当月の5日までに中小機構に書類が届く必要があるので、決算月の前の月には送ってしまった方が無難だろう。

小規模企業共済、確定拠出年金(DC)との違い

まず前提として、経営セーフティ共済は法人・個人事業主が対象で、ほかの2つは個人で加入するものだ。小規模企業共済は名前がまぎらわしいが、個人事業主・零細企業役員向けの退職金制度というべきもので、掛金も個人の所得から控除できるが会社の経費にはならない。DCも「企業型」というのがあるのでややこしいが、従業員が選んで自主的に積み立てる性格のものだ。

小規模企業共済は法人役員として加入しているので、5年も積み立てれば、法人解散(共済金A)か、定年/病気怪我による退任(共済金B)、まあ少なくとも任意退任(準共済金)として、元本割れしないように受け取ることは可能。目減りせずに全額還付を受けたい場合は、役員としてEXITプランも考えておいた方がよい。

一方、受け取りの際に65歳歳未満で任意解約した場合は、退職所得でなく一時所得扱いになってしまうので注意。共済金か準共済金なら年齢に関係なく退職所得になり、税制上の優遇を受けられる。

個人的には小規模企業共済とDCの両方とも数年前に加入して積み立てを行っているが、小規模企業共済の方は、任意解約の場合は20年以上の納付実績がないと解約手当金が元本割れすることと、将来的なインフレのリスクに対応できない不安がある。DCの方も、選んだ投資信託がまずかったのか、ここ1年の世界的株安で大幅に損失を出している。

しかも、小規模企業共済には、平成20年度にリーマンショックの影響で約9,980億円もの繰越欠損金が存在していた。資産運用委員会の最新議事要旨(平成28年6月23日)によると、平成26年度に683億円の利益剰余金をたたき出したが、27年度で再び25億円の欠損金に転落するなど、なにやらきな臭い状況が続いている。

流動性重視なら経営セーフティ共済がベストか

小規模企業共済は20年以上の納付実績がないと元本割れするし、65歳未満なら退職所得にならない。DCは基本的に60歳未満で解約できず、脱退一時金請求は非常に面倒くさそうだ。短・中期的な節税目的で、流動性・換金性を重視するなら、導入検討すべき優先順位は以下のように考えられる。

  1. 経営セーフティ共済(納付3年と4か月で任意解約 OK)
  2. 小規模企業共済(納付20年以上で任意解約OK)
  3. 確定拠出年金(60歳まで解約困難)

ただし、法人役員で5年後以降の解散・退任を計画的に予定しているなら、小規模企業共済で退職金を積み立てるのがベストかもしれない。

そもそも納めるべき税金がなければ意味がない

また大前提として、各種共済を利用するには、それなりの売り上げが立って納税額が大きくなければ意味がない。自分にとって節税は半ば趣味というか、「むしろお金を払ってでも税金から逃れたい」ひねくれた性格なので、あまり効率は考えず社会勉強として国営節税商品をフル活用している。

もっぱらフリーランスに近い不安定な稼業なので、老後もすっからかんだった場合のセーフティネットとして、最近DCも積み立てはじめた。正直一番魅力に乏しい制度ではあるが、掛金全額所得控除なので、それでも民間の生命保険よりはましかと思う。

節税より老後の保障というか、本来の年金としての機能に着目するなら、社会保障の少ない個人事業主・フリーランスだからこそ、DCくらいは入っておいた方がよいだろう。