一見便利なレシート電子保存、一人会社ではまだ使い物にならないと判明

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ミニマリストとして、本や紙の資料はすべてスキャンして電子化してしまいたいと考えている。場所を取る断裁機は手放したが、富士通のドキュメントスキャナーは今でも一番お気に入りの家電である。

会社の帳簿類は7年保存義務

会社の帳簿や領収書類は、確定申告してから7年保存しないといけないルールはよく知られている。5年ほど前に、かさばるレシート類を電子データで保存できないか調べてみたことがあるが、申請や署名の手続きが面倒で断念した。そもそも法令で規定されたスペックのスキャナ装置を持っていない。

レシートの保存方法としては、セパルのアウトインホルダー、14ポケットの一番大きいサイズを長年愛用している。

費目ごとにポケットを分けてクリップで留めたり、付箋を貼って整理している。後から出てきたレシートを挟み込むには、日付順に台紙にのり付けするより、クリアファイルの方が都合がよい。

新会社の初年度決算を迎えて、たまったレシートはざっと300枚くらいになった。なんとかファイル1冊に収まったが、数名で働いていた前の会社では1年で3~4冊になった。これが7年たまると21冊、本棚2段くらいがレシートファイルで埋まってしまう状況だ。大企業での紙のレシート保存コストは計り知れないが、ちょっとした図書室と書庫くらいの規模になってしまうだろう。

2017年法改正でスマホ撮影OK?

何とかならないかと考えていたところ、近年の電子帳簿保存法改正で、スキャナ保存の要件が大幅に緩和されたらしい。もはやスキャナすら不要で「スマホで撮影すればOK」という触れ込みだ。

これはさっそく取り入れてみたいと思って、導入方法を調べてみた。しかし結論としては、有料の会計ソフトを使わず顧問税理士もいない一人経営のマイクロ法人では、まだ使い物にならない制度だとわかった。

①タイムスタンプの付与にお金がかかる

まず、撮影した電子データに「3日以内にタイムスタンプを付ける」というプロセスが必須なのだが、いわゆるファイルのプロパティの話ではなく、認定を受けたタイムスタンプ業者を介す必要がある。従量制でも定額制でも、ざっと年間10万円を超える費用がかかり、freeeのタイムスタンプ機能を使うなら月額3,980円のビジネスプランを契約する流れになる。

領収書を受け取った本人が電子化する場合には、自筆&フルネームの署名で済むことになっている。しかし、今のところタイムスタンプを一人で無料で押せるサービスというのは見当たらない。

②一人では定期検査できない

電子化の作業は不正を避けるため、3人以上の人員でダブルチェックする必要がある。法改正により、常時使用する従業員5人以下(サービス業)の小規模企業者なら相互けん制が緩和され、1人でタイムスタンプを押せるようになった。しかし、定期検査は外部の税務代理人に依頼しないといけない。

「税務代理人」の要件はわからないが、普通は顧問税理士や会計事務所を指すようだ。親戚や隣人を適当に経理担当者に任命するというのは、おそらくNGだろう。

③申請以前のレシートには適用不可

単なる書類上の手続きだが、電子帳簿保存を行うには税務署への事前申請が必要になる。申請以前の書類にはさかのぼって適用されないので、これまでたまったレシート類は相変わらず破棄できないということになる。地味に不便だ。

マイクロ法人が導入するには時期尚早か

以上の理由で、タイムスタンプと定期検査のため、零細企業でも最低5万円以上の投資が毎年必要になるとわかった。それなら押し入れの奥にレシートファイルを7年死蔵した方がまだましだ。

領収書の電子化については「スマホで楽ちんOK」という風潮が広まりつつあるが、中小企業が実際に導入するにはまだハードルが高いと感じる。会社の規模が大きくなるにつれ、どこかで「電子化した方がまだ安い」という損益分岐点が出てくるのだろう。

よくよく考えれば、Photoshopで日付や金額をいじるのは結構簡単なので、国税庁が慎重になる理由もわかる。それでも全国規模での紙レシート保存コストを考えると、早晩緩和が進んで米国並みに手軽に撮影保存できるようになるだろう。