奥多摩屈指の激坂「ラピュタ坂」に挑戦。タケノコ活性化の罠

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奥多摩エリアの激坂として有名な、ラピュタ坂に初めて挑戦してみた。

和田峠の裏を下りて、脇道に入った先に恐ろしい勾配の坂道がある。似たような林道はいくつもありそうだが、ここまで長く急な坂が続き、しかも舗装路でロードバイクが走れるところは希少。この付近では、風張林道以上にきつい坂だった。

勢いに任せてペダルを踏んでみたが、中盤の「竹の子の里」で足つきリタイア。前輪がウィリーしてバランスを崩してしまった。そこから仕切り直すのも難しく、ゴールまで自転車を押して歩く屈辱を味わった。

ラピュタ坂は傾斜がきついだけでなく、道幅が狭く路面も荒れているためコース取りが難しい。脚力の強化に加えて、バイクのセッティングや走行ルートの選択など、いくつか対策が必要な難コースだとわかった。

ラピュタ坂へのアプローチ

ラピュタ坂は和田峠を上野原側に下った途中、脇道から集落に入った先にある。その先は行き止まりなので、交通路としての利用価値はない。

南の藤野駅側からアプローチするには、県道522~521号を走って「やさか茶屋」の交差点を左に曲がる。ちょうど和田峠に向かって傾斜がきつくなる前あたり。手前に見える八幡神社に向かう分岐は現在通行止めになっていた。

ラピュタ坂へのアプローチ

茶屋の先のT字路を左に曲がり、道沿いに進んで橋を渡ったら右折。じわじわ勾配が増してくるが、ここはまだ本番でない(Stravaでは「竜の巣」という区間が設定されている)。少し道が広くなり、ヘアピンカーブの先に壁のような坂が見えたら、そこがラピュタ坂の入口だ。

ラピュタ坂の入口

広場で準備運動していたら、急坂を佐川急便のトラックが下りてきた。まれに車も通る道なので、自転車で上る際は注意が必要。運悪く出くわしたら、無理せず足を着いてやり過ごした方がいい。

急勾配かつ隘路・悪路という特徴

ラピュタ坂の全長はせいぜい700メートル程度。短い区間だが、風張林道の「きのこセンター」手前の直線、あるいは「子ノ権現」クラスの20%を超えるような勾配が延々と続く。その様子はGoogleマップのストリートビューでも確認することができる。

上記の激坂でも、最高勾配区間はせいぜい100メートルくらい。御岳山の参道、スタート地点の鳥居やラストの神社裏道でも、ここまで急な坂が連続するところは他に見たことがない。

局所的な急勾配だけでなく、「途中で休憩できるポイントがない」のがラピュタ坂の特徴といえる。目の前の道がうねって迫ってくる様子は、まるで映画の『インセプション』に出てくるワンシーンのようだ。

コンパクトクランクでもインナーローしか使わず、サドルに腰を下ろせる場面はない。ずっと立ち漕ぎで踏み足も引き足も全開。自分の体重だけでは足りず、腕でハンドルを引く反力も使わないとペダルを踏み込めない。

また道幅が狭いため、ジグザグに蛇行して勾配を緩和する走行スタイルを取りにくい。さらに路面も荒れて、ひび割れたり砂が堆積しているところもある。うっかり乗り上げるとハンドルを取られて危険なため、コース取りには神経を使う。

前輪が浮かないように前傾してバランスを取りつつ、ときどき頭を上げて前方を確認する。それと同時に安定した路面を選んで、可能な限り蛇行しつつ傾斜をゆるめる。これら一連の作業で登坂中は息をつく暇もない。

ラピュタ坂は体力・脚力だけでなく集中力・精神力も要求される、タフでテクニカルなコースといえる。

初挑戦は「竹の子の里」でリタイア

呼吸を整え、やや助走をつけてスタート。最初の右コーナーは勢いで上れるが、その先にも目を疑うような斜面が続いている。序盤のT字路を左に曲がれば、あとは一本道。再び右に曲がると左側が崖になり、見晴らしがよくなる。ここからはしばらく一直線の急登が続く。

民家を越えたあたりから、路面のひび割れや砂利が増えてくる。砂や段差でハンドルを取られたらリタイアは必死。そのままなんとか100mくらい上ると、右手に建物が見えてきた。入口に看板があり、「竹の子の里、活性化センター」と書いてある。

竹の子の里、活性化センター

風張林道にある「きのこセンター」との関連が気になる。「活性化」というのは、竹の子の育成や栄養素の改良に関すること。それとも地域の活性化という意味だろうか。余計なことを考えていたら、ふと気がゆるんで前輪が浮いてしまった。

とっさに体をひねって左側に着地したが、車体は斜面と直角に。そのまま勢いをつけて進行方向にハンドルを向けるには道幅が足りず、そのままガードレールにぶつかりそうになりギブアップした。素早くクリートを外せたので、さいわい転倒せずに済んだ。

コース途中からの再挑戦は無理

ここから体勢を立て直して再び自転車に乗るには、助走区間が短すぎる。道幅が広ければ、いったん下った勢いでUターンして上ることも可能だが、ラピュタ坂ではそれも難しい。ましてやビンディングペダルにクリートをはめる余裕などなさそうだ。

結局、竹の子の里からはバイクを押してゴールまで歩いた。だいたいコースの半分くらいまでは、足着きなしで上れたようだ。看板に気を取られたのがまずかったが、その先もきつい坂は続く。おそらくどこかで集中力が切れてリタイアしていただろう。

ラピュタ坂の後半区間

ゴールの付近には茶畑が広がっていた。ラピュタ坂の後半にはガードレールの区間もある。帰りの坂も危険そうだったので、安全のため自転車には乗らず歩いて下った。

ラピュタ坂の攻略法

これまで挑戦した富士あざみラインや乗鞍ヒルクライムでも、「坂がきつくて足を着く」ことは一度もなかった。しかしラピュタ坂は別次元。距離は短いながらも命の危険を感じるくらいの斜度で、道幅の狭さや荒れた路面が拍車をかける。

並みの脚力で力任せに漕ぐだけでは歯が立たないとわかった。コースの特徴をふまえて、ラピュタ坂の攻略法を考えてみたい。

①ビンディング=引き足は不要

今まで急勾配では、引き足を使えるビンディングペダルが有利と考えていた。ペダルを踏む力だけでなく、引く力もフルに使えば無駄がなさそうだ。引き足メインのフェーズでは、ハンドルを手で押すことで反力を得られる。

しかし後年、フラットペダルの小径車で風張林道に挑戦してみると、引き足なしでもそこそこ走れるとわかった。3時=9時のペダル位置で一瞬休み、左右交互に強く踏み続ければ、難しいことを考えなくても坂は上れる。

ビンディングシューズの欠点は、クリートを外す必要上、リタイアの判断が早くなる点だ。スピードが落ちるかバランスを崩した段階で、安全のためペダルからシューズを外す作業にとりかかる。フラットペダルならそのまま地面に足を着けるので、もう少し粘れるかもしれない。

引き足のメリットがないか、ごくわずかだとしても、「下りる前にクリートを外す」という心理的な負担は大きい。トータルで考えると、たとえ急坂でもシンプルなフラットペダルの方が有利でないかと思う。

②コースと路面状況を覚える

道幅の狭いラピュタ坂では、一瞬の迷いやよそ見が命取りになる。序盤のT字路を過ぎれば分岐はないので、まわりを見るより路面状況に集中した方がよい。後半は直線で見通しもよいので、万が一車が下りてきても早めに察知できる。

コースの途中には「竹の子の里」以外にも、「大きく曲がればスリップしない」という謎の看板もある。これらを観察したり考えるのは後回しにして、登坂中は地面の砂利やクラックに注意した方がいい。激坂に現れる「きのこの山・たけのこの里」とは、サイクリストの屍を肥やしにして土壌の微生物を活性化しようという罠なのだ。

ラピュタ坂の看板

ためしに一度歩いてみて、「全体の長さ、コーナーの位置、路面のグレーチングや大きなひび割れ、砂利がたまっているところ」などを確認しておけば安心だ。

③前輪の浮きを抑える

路面の障害物を避けてうまくジグザグに進めたとしても、勾配のきつい区間でどうしても前輪が浮く局面が出てくる。特にビンディングシューズの場合は、そのまま後ろにひっくり返ってしまいそうな恐怖を覚える。

激坂での不用意なウィリーを避けるには、体はなるべく前傾させた方がよい。車体も含めた重心を前方・下側に持ってくれば、後輪接地点まわりの回転モーメントを減らせる。

「重心を低く保つ」というよりも、立ち漕ぎでバランスを保てる限界まで体を前傾させた方が有利かもしれない。前方確認のため頭を起こすと不安定になるので、コースを覚えてヘッドアップの回数を減らすことも重要だ。