Porter Surfaceレビュー。軽量・薄型ビジネスバッグの完成形

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ミニマリストなビジネスマンならきっと気に入る、Porter Surfaceというバッグを紹介しよう。

  • 仕事用に使うブリーフケースはシックな革製がいいけど、重いのはもう嫌だ。
  • 普段は軽いナイロンバッグだけど、フォーマルな革鞄も1個持っておきたい。
  • 予算3万くらいで、ブランド名が目立たない質実剛健なビジネスバッグが欲しい。

こんなニーズを一挙にかなえてくれる、すばらしい製品だ。革素材なのに極薄で軽量、マチの広がる機能性、縫製や素材の質も高く、3万円で手に入るビジネスバッグとしては出色の出来栄えといえる。

これまでポーターのバッグを何個も乗り換えてきて、一時は10万以上する海外ブランドの革鞄にも手を出してみた。理想の革製ブリーフケースを追い求めて、たどりついたのがこのSurface。1年使ってみてますます気に入り、擦りきれるまであと10年は持ち続けると思う。

見た目はまさに革の板

サーフェスという名前の通り、一見したところはただの板。革を2枚貼り合わせただけに見える。一切の虚飾を廃したミニマムが外観とは対照的に、ビジネスバッグとして必要十分な機能性を備えている。

表面は牛革だが、ゴートシボというヤギ革に似せた型押しが施されている。凹凸のあるテクスチャーのおかげで、ちょっとくらいのかすり傷なら目立たない。「傷が目立ちにくい」という点では、繊細なナイロン素材よりすぐれた加工だ。フォーマルな雰囲気だが、毎日通勤で使っても耐久性は問題ない。

収納可能な薄型ハンドル

2枚の革にはパネル状の薄型ハンドルが内蔵されている。立てかけるとハンドル部分が自重でストンと隠れる仕組みになっている。おかげで中から物を取り出す際に、バッグの取っ手が邪魔にならない。

デメリットとしては、ハンドルが薄すぎるために中身が重いと手に食い込むことだ。その場合はハンカチでも間に挟めば痛みが緩和される。鞄の仕組みからして、そもそも重量物を運ぶようなデザインでないと思う。最小限の荷物をスマートに持ち運ぶという使い方がスマートだろう。

ハンドルを閉まった状態で、ドキュメントケースのように抱えて持つこともできる。表面の革は張りがあるので、途中で折れたりねじれたりする心配もない。混雑した通勤電車の中では、縦にして抱えるように持つと邪魔にならない。

マチを開けば収納力アップ

Surfaceはビジネスバッグというより、可動式ハンドル付きの書類ケースと呼んだが方がふさわしいかもしれない。しかし、側面に隠されたマチをジッパーで広げると、大容量の仕事鞄に変貌する。マチはSサイズで最大8cm、Lサイズで10cmまで広がり、見た目からは想像できない収納力を発揮する。

今回購入したLサイズは、A4サイズの書類も余裕で出し入れできる。ノートPCであれば15インチもぎりぎり可能。Surfaceからマイクロソフトのサーフェスを取り出すというダジャレも使える。ポーター通の人にだけ通じる、マニアックなジョークだ。

ジッパー内に折りたたまれた側面パーツも、表面と同じ革素材でつくられている。そのため、マチを開いた状態でも一体感があり、見た目の違和感は少ない。むしろ日常利用においては、マチ付きの状態で使用する機会が多いと思う。

ドキュメントケースにもなる

ごくわずかな薄い書類だけ持ち運ぶ場合には、ハンドル付き書類ケースとしてコンパクトに持ち運びできる。ミーティング用のサブバッグとして、デスクに常備しておくのもありろう。ドキュメントケースとしては少々重いが、いざというときに容量拡大できる機能は重宝する。

Surfaceはこれ1個でドキュメントケースとブリーフケースを併用できる、多機能アイテムともいえる。使わないときはマチを締めて薄型にすると、戸棚やクローゼットの隙間に挟めてかさ張らない。礼服と一緒に収納しておいて、冠婚葬祭のバッグとして活用するのもありだ。

ここぞという場面でネジを巻く薄型の手巻き式機械時計のようなイメージ。端正な革のブリーフケースとして、Surfaceはきわめてフォーマルなシーンにもマッチする。

内部にポケットも充実

中にはスナップボタンで閉じられるオープンなポケットと、ジッパー付きの大型ポケット、さらに左右に仕切られた小物入れが2つそなわっている。小ポケットにスマホや財布、手帳を分けて重ならないように収納すれば、かばんの厚みが増すのを防ぐことができる。

バッグの底には、マチを開いたときに活用する底板が折りたたまれている。この板で内容物を支えることによって、バッグの底が変形することを避けられる。

内張りは黒色のコットンキャンバスで軽量化が図られており、ポケットの端部は革でパイピング補強されている。持ち主以外は気づかないかばんの内部だが、さりげなく高級鞄にふさわしい仕上げがほどこされている。

表にPorterのタグがない

表面にPorterのラベルが貼られていないのも、Surfaceの奥ゆかしい魅力のひとつといえる。内側のポケット上部にひっそりと、しかしぜいたくに表面と同じ革素材のラベルでブランド名が箔押しされている。

廉価帯のナイロンバッグはたいてい表にポーターのラベルが貼られている。好き嫌いはあると思うが、街中で人とかぶりまくることは必至だ。ブランド名がでかでかとアピールされている製品は、紳士の持ち物としてふさわしくない。

表面の革の仕上がりを見れば、ある程度値が張る製品であることはわかる。あえて表からタグを除いたのは、素材や縫製で十分品質で語ることができるという自信の表れだろう。

革鞄としては軽量

Surfaceには、ショルダーバッグが付いていない。側面に金具や穴もないので、別売りのベルトを装着するのも困難だ。これについて評価は分かれるかもしれないが、フォーマルな書類鞄という位置づけにおいては標準的な仕様といえる。

スーツに鞄を斜め掛けしたり、背中にしょって自転車で移動するという用途は想定されていない。アクティブな用途を想定するなら、もっとふさわしいナイロン製の多機能バッグはほかにたくさんある。あえて余計な機能を省くことで、端正な外観と軽量化を実現したのがSurfaceのコンセプトだ。

十分な容量のある総革製のバッグとして、Sサイズで790g、Lサイズで860gという重量は比較的軽い部類。最近の軽量化に特化したレザーバッグのように、ペラペラの安っぽい革は使われていない。側板は十分自立する厚みの革だが、構成パーツがきわめてシンプルなため軽くなっているのだろう。

ジッパー端部の装飾と隠れた機能

メイン収納部、ジッパーの端を表面に取り付けている金具が、唯一の装飾的要素といえる。金具から外せば、マチ幅いっぱいまでジッパーを全開して内容物を出し入れできる。

最初はこれすら不要でないかと思ったが、外から見てバッグの前後を判別する機能的な意味もあると気づいた。細かい工夫だが、慣れると金具の取り付け位置を見て、ジッパーの引手が左右どちらにあるか推測することができる。

1年間使用した感想

クライアントとの打合せや地方への出張など、主に仕事用としてSurfaceを1年間使ってみた。メンテナンスは半年に一度、モウブレイのデリケートクリームを塗る程度だが、革の劣化はほとんどない。多少雨に濡れても、あとで拭き取ればダメージは少ないようだ。

Surfaceが意外と便利なのは、使わないときにタンスや押し入れの中で場所を取らない点だ。普段自転車で移動するときは、ナイロン製の2wayバッグを使う機会が多い。週に一度、仕事の用事で取り出すような使用頻度でも、家に置いていて邪魔にならない。ミニマリストのクローゼットにふさわしい、薄型でつつましい脇役といえる。

ポーター製だが人とかぶらない

バリエーションは多いが、人気がないとすぐ廃番になってしまうのが残念なポーター製品。その中でもSurfaceは比較的長く売られ続けている。シリーズとしてはブリーフケースのS/Lサイズ、トートバッグの3種類しかないが、いずれも現行品が容易に手に入る。

購入前に実物を触ってみたいと思い、表参道と丸の内の旗艦ショップを両方訪れたが、Surfaceは展示されていなかった。街中で他の人が使っているのも見たことはないが、製造中止にならないところを見ると、隠れた人気商品なのだろう。

見た目が地味で、人とかぶらないという点でもおすすめの商品だ。商売柄、公務員や銀行員のようにブランド品をひけらかすのが適切でない職場もある。表にタグはなくても、わかる人には品質が伝わる。静かに存在感を主張できるプロダクトといえる。

3万以下で手に入るのは良心的

Porterの革製ブリーフケースの中では、AroundやWithと並ぶ廉価帯。このクオリティーの革鞄が3万円以下で手に入るというのは、メーカーの良心だと思う。セレクトショップに並ぶ海外ブランドの同等品なら、2倍の金額はするだろう。

フォーマルラインの中では、タンカーのような定番商品といえるSurface。30歳を越えたら、ぜひコレクションに加えておきたいアイテムだ。時代に流されないロングライフデザインなので、10年、20年先まで持ち続けることができると思う。