日産カップ参加レポート:東京湾を泳ぎ、工場を周回する地味なレース

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両膝の関節鏡手術を受けてから約1年、リハビリも進んで数日おきに10km程度は走れるようになってきた。そろそろトライアスロンのレースに出てもよいかと思い、選んだのは横須賀市で開催される日産カップ。

都内から日帰りで行ける渡良瀬 or 横須賀

復帰後の第一線はスプリントの距離でもよかったが、普段の練習で10km走れるところをみると、スタンダードディスタンスでも行けそうな気がした。

久々に出るので短い距離でよかったが、スプリントのレースは数が少ない。スタンダードで近日開催のレースを探したところ、日帰りで行けそうなのは群馬の渡良瀬大会と横須賀の日産カップだった。

内陸の遊水地か、東京湾で泳ぐかという違い。スイムコースとしてはどちらも魅力にとぼしい。伊豆大島や銚子、館山もオリンピックディスタンスだが、いずれも泊りがけの参加になってしまう。

電車の乗り換えを調べると、わずかに日産カップの方が近かったのでそちらに決定した。どちらもJTU登録が必要で、エントリー代は1.8~1.9万円。日産カップは特に参加倍率も高くないようで、募集開始から数日経った後でも問題なくエントリーできた。

都心乗り換えを避け、追浜まで輪行

日産カップの会場へ向かうには、横浜から京急線に乗り換え追浜(おっぱま)という駅で降りる。日帰りとはいえ自宅から会場まで電車で片道2時間かかるので、朝5時に起きる必要があった。

追浜駅

軽く朝食は取ったが、一般の部は 11:30という遅いスタート時間。レース前に昼食も取るつもりで、菓子パンを多めに持ち込んだ。

輪行のため都心は避けたが、横浜駅で乗り換えが必要になる。特にレースの帰り、日曜夕方は横浜線の下りが混雑していたので、輪行バッグを運ぶのが一苦労だった。

トライアスロンはバイク以外にウェットスーツやシューズなど荷物が多いので、できればレースに車で向かいたい。多少お金がかかってもレンタカーを借りた方がよかった。

日産追浜工場に自走で向かう

事前案内によると、追浜駅から会場の日産追浜工場までは徒歩25分。駅前でバイクを組み立てて自走で向かうと一瞬で到着した。

追浜駅前でバイク組み立て

今回は距離も短いので、ボトルケージはダウンチューブに着けたままにした。サドルの後ろに付けた方が空気抵抗は下がるはずだが、レース前にわざわざ組み立てるのが面倒だった。今回は短い距離だが、パンク対策として最低限の修理キットと携帯ポンプは持ち運ぶことにした。

工場のゲートでは、特にIDや参加証を見せる必要はなかった。受付で問診票に記入して、ゼッケンとスイムキャップを受け取る。アンクルバンドはスイム直前に配る方式らしい。

追浜の日産工場

敷地内にはナンバープレートのない日産車が大量にとめてある。リーフだけでも50台くらい見かけた。

スタートまでの長い待ち時間

開会式は9時に始まった。先にスプリントと小中学生、選手権が先にスタートして、一般の部は11:30からゼッケン番号ごとにウェーブスタート。

開会式が終わってから2時間半も待ち時間あるので、バイク預託後は埠頭の空き地で仮眠を取った。会場のアナウンスが騒々しくてなかなか休めないが、気づくと腕が日焼けしてヒリヒリする。

夏至に近い6月は紫外線が最大強度。久々のレースで日焼け対策をすっかり忘れていた。天気予報は曇りなうえ、ショートの距離なので油断して日焼け止めも置いてきてしまった。

次第に晴れ間が広がって、バイクに乗る頃には炎天下。レースが終わってみると、肩から首まで真っ赤に日焼けしてしまった。

東京湾で泳ぐということ

一般人が普段は入ることのできない日産追浜工場。2年前に出た厚木基地のレースと雰囲気が似ている。バイクコースの対岸には八景島シーパラダイスが見え、ヨットや釣り船も出ているのどかな海だ。

日産カップの海の状況

東京ガスのプラントを見ながら、リサイクルブラザ<アイクル>というゴミ処理場の脇で泳ぐコースが設定されている。大阪のフンデルトワッサーほどではないが、この処理場もイタリア風かイスラム風なのか不思議なデザインをしていた。

懸念された東京湾の水質は思ったほど悪くなかった。少なくとも山下公園付近の横浜港よりはゴミや浮遊物が少ない。

見た目は緑色で口に含むとしょっぱいが、舌がピリピリするとか異臭がするということもない。なんとなくピロリ菌やレジオネラ菌がいそうな感じなので、なるべく海水は飲まないように気をつけた。

そろそろ寿命のウェットスーツ

久々に出してきたウェットスーツはORCAのKAISEI。Wiggle経由で入手したこの格安スーツも、最近はまわりで来ている人を見ない。年に一度くらいしか着ていないが、よく見ると縫い目や腹部が破れてきている。

ORCAのウェットスーツKAISEI

そろそろ寿命かと思ったが、首元が裂けたもっとぼろいスーツを着ている人もいた。見た目やパフォーマンスを気にしなければ、長く使えるのだろう。

浮遊ステージ越しに入水

日産カップのスイム会場は砂浜がない港湾で、クレーン車で吊った浮遊デッキから海に出入りする。事前のアナウンスでは「波の高さ30cm」ということで、岸に戻る際に多少うねりがあった。

今年はL字に配置されたブイを2周回するコース。スイムが終わってデッキに上がる際、はしごが2つしかないので上陸するのに順番待ちになった。

水中でブイやボードにつかまりながら、合図が鳴るとぱらぱら泳ぎ始める。全体で300人ほどいるが、時間をずらしながらスタートするので序盤のバトルはそれほどでもなかった。

視界は1m程度で、かろうじて前の人の足が見えるくらい。混みあってくると、横から急に手や足が飛んでくるので怖い。頻繁にヘッドアップしないと、自分がどこに向かっているのかもわからない。前方確認を頻繁に行ったおかげで、いつもよりまっすぐ泳げたと思う。

スイムは体力温存

トライアスロンのスイムは苦手なため、あまりやる気が起きない。宮古島のように海がきれいならウミガメや魚の観察を楽しめるが、視界の悪い東京湾では特に見どころがない。

スプリントやショートなら、スイムパートから飛ばさないと順位を伸ばせないかもしれない。ここ数年はロングのレースにばかり出ていたので、スイムは体力温存して後半戦で勝負するスタイルになってきた。今回もバトルを避けて後ろの方からぼちぼちスタートした。

なるべく心拍数を上げないよう、ほとんどバタ足はしない。後ろの人を蹴らないようにという配慮もある。ウェットスーツなら体が勝手に浮くので、適当に腕を回すだけでも前に進む。普段のプールとオープンウォーターでは勝手が違いすぎて、フォームとか呼吸とか練習しても意味ない気がする。

バイクコースは日産の試験場

日産カップの売りは、GRANDRIVEというテストコースをバイクで走れる点だ。1周6.6kmを6周回で40km。実際はいったんコースを外れてメイン会場まで戻るルートなので、サーキットを走れるのは実質その半分くらいの距離だろう。

コースに出入りする際に陸橋を渡る必要があり、合計12回きつい坂を上らされる。さらに坂を下ったところに危険な90度カーブがあり、減速必至なので陸橋で無理する必要はない。この点は競技説明でも注意喚起されていたので、みな慎重に下っていた。

90度カーブにあるゲートの支柱には、衝突対策として布団が巻いてある。レース後に撤収された布団を見ると、毎年使いまわされているのか血痕のようなものが残っていた。

ゲートの支柱に巻かれていた布団

サーキットはDHバーの効果大

追浜試験場の路面は、富士スピードウェイやツインリンクもてぎほどツルツルではない。普通のアスファルトでコーナーのイン側に砂利が浮いているところもある。

全体的にカーブが緩やかで、コースを出入りする際のヘアピンカーブ以外はエアロバーを握ったまま走行できる。コース内に多少の起伏はあるが、前述の陸橋ほどの坂ではない。

久々にエンデューロの雰囲気を味わえるが、ドラフティングは禁止なので適当にばらけて走る。離島のレースに比べて海岸沿いの起伏がない分、車体やポジションをエアロ化するアドバンテージが大きそうだ。

ショートリーチのエアロバーでも、追い風で40km/hを超えるとぐいぐい加速できた。周回コースなので当然向かい風の部分もあるが、サーキット内では平均時速35kmで巡航できたと思う。

バイクパートは5人くらいに抜かれたが、装備やスピードからしてトップレベルの選手だろう。ショートディスタンスなので脚力の温存は考えず、みなガンガン踏んでいるようだった。

先日スポークが折れて、真鍮製のニップル交換したホイールは快調。久々に長時間のエアロポジションで途中から背中が痛くなったが、なんとか40km漕ぎきれた。

バンクに挑むが跳ね返された

テストコースに一か所だけ40度もの傾斜がついたバンクがある。Google Earthで見ると、傾斜が立体的に表現されている。

日産テストコースのバンク(Google Earth)

競輪のようでおもしろいが、外周を走るとタイムロスなのでわざわざ近寄る人はいなかった。「バンクを走ってはいけない」というルールもなかったので、興味本位で最後の6周目に突っ込んでみた。

事前に加速して38km/hくらいはスピードが出ていたと思う。傾斜を半分くらい上がったところで体勢が不安定になったので、無理せず離脱した。まだスピードが足りなかったのか、路面にタイヤの側面を当てて傾きながら走るかたちになってしまった。

トランジションは5秒で完了

ミドルやロングに比べると距離が短いからか、いつもよりバイク後の疲労を感じなかった。フラットペダルでランニングシューズのままバイクに乗ったおかげで、着替えの時間はたった5秒で済んだ。

ランパートは工場の敷地をジグザグに走って3周回。折り返しごとに輪ゴムをもらって腕に巻き、5個集めるとゴールできるという仕組みだ。起伏はないが木陰も少なく紫外線がきつい。

エイドが1か所、水しかない

日産カップではコース内にほとんどエイドステーションがない。バイクコースには一切補給ポイントがなく、唯一ランコースの途中に水だけのエイドが用意されている。

ショートの距離なのでたいして補給は必要ないかもしれないが、それに比べると五島や宮古島はエイドが充実して親切だったと思う。

距離が短いためバイクには栄養ジェル1個しか乗せていなかった。もういくつかあればランのモチベーションを上げられたはずだ。距離は短くても、補給は多めに取った方がリフレッシュできてよい気がする。

ランニングでは多少膝に違和感を感じたが、最後の周回はペースを上げてみた。レース中は興奮して脳内物質が出ているのか、痛みを感じにくくなるようだ。ゴール後は救護所で氷をもらい、念入りにアイシングしておいた。

日産カップのフィニッシュゲート

今回の総合タイムは2時間45分くらいだったと思う。レース当日の夜は、まだ公式なリザルトが出ていない。バイクはともかく、練習不足のランパートは抜かれる一方だった。久々のレースでタイムはいまいちだった気がするが、無事に完走できてよかった。

追浜カレー

ゼッケンに同封されたランチカードを見せると、追浜カレーというのをもらえた。横須賀の海軍カレーにちなんでいると思われるが、ややピリ辛で具も多めのうれしい補給食だった。

日産カップでもらえる追浜カレー

粗品でもらったTシャツには、黒地に白文字でNISSAN CUPと書かれている。後日これを着ていると、日産の関係者と間違われた。最近レースでもらうTシャツは黒色が多いのだが、夜間の視認性を考えると明るい色の方がうれしい。

体力測定におすすめのレース

日産カップを振り返ると、バイクもランも周回コースで起伏も少なく、淡々と距離をこなす感じだった。離島のレースに比べると風景も地味でエンターテイメント性は少ないが、毎年出場してパフォーマンスを測るには適していると思う。

東京湾で泳ぐことに抵抗がなければ、首都圏のアスリートにはアクセスも便利でおすすめできる。