懐に忍ばせておきたい軽量マルチペン、アバンギャルドライト

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前回、カランダッシュ・エクリドールXSの紹介で、「多機能ペンは単機能ペンに劣る」とディスってしまったのだが、本当はマルチペン大好きである。

ちょっとした打ち合わせで外出するときや、旅先で高価な筆記具を持ち歩きたくないときに重宝しているのが、ステッドラーのアバンギャルドライトだ。マルチペンとしてはアルミ製でコンパクト、かなり軽量な部類に入る。

同シリーズのライトでない4機能ペンも存在するが、胴体が途中で膨らんでいるのが不格好で検討候補に入らなかった。

エピソードを語れないような道具は持たない

先に紹介したエクリドールXSに比べると、アバンギャルドライトは常にサブ扱いで筆箱のベンチウォーマーだが、代打で登場する機会は意外と多い。ミニマリストに転向してからというもの、何度もの断捨離の試練をくぐり抜けて残った道具たちには、それぞれ語り尽くせない魅力が詰まっている。

投資家のウォーレン・バフェットは「なぜこの会社を買収するのか、という題で1本の小論文を書けないようなら、買わない方がいい」と言っている。自分も小論文とまでは言わないが、原稿用紙5枚分くらいの逸話を語れないようなモノは、どんな安物でも持たないように心がけている。

カランダッシュの銘品を説明したついでに、控えのステッドラーについても少し触れておこうと思った程度だが、いざ書いてみると3千字以上になってしまうのが不思議だ。メリットもデメリットも含めて、憎めない脇役、アバンギャルドライトについて紹介したい。

必要最低限の機能で軽量なアバンギャルドライト

中身は0.5mmのシャープペンシルと、ボールペン2色の3本と必要最小限。4色もの多機能ペンは使いこなせないし、シャーペン&ボールペンの2 in 1だと、別々に持ち歩いた方がいいんじゃないかと思うくらい。マルチペンとしては、3本くらいのリフィルがちょうどいいと感じる。

リフィルはマルチペンで標準の4C規格なので、もちろん定番のジェットストリームが使える。リフィルは0.5/0.7mmで黒赤青の3色あるので、好きな色を2本選んで差せばよいだろう。

上級者は違う太さのブラック2本を差して、場面ごとに使いわけるという。銀行や役所の書類に記入する時は0.5mm径の細ペンで。ノートにざっくりアイデアを書き留める時は0.7mm径の太ペンで、という感じだ。そんな芸当ができるのも多機能ペンの魅力である。

ペン先を戻す丸いボタンは、見た目的にすぐ壊れそうに思ったのだが、意外としっかりしている。3年使い続けてもノックが渋くなったり、ボタンが陥没したりするような問題は出ていない。 さすがドイツ製。

持ち手にゴルフボールのような穴が開いていて、申し訳程度に滑り止め効果を発揮している。別に持っているLAMYのSwiftと似たような意匠に見えてしまうのだが。

安くて質実剛健なステッドラーの筆記具コレクション

昔から愛用しているステッドラーの製図用シャープペンシルは、グリップ部にやすりのような滑り止めがついていてお気に入り。手に汗握る資格試験やラブレターを下書きするときも、滑ってすっぽ抜けることがない。適度な重量があるため筆記に力がいらず、ペン先が細いので手元も視界クリアー。高校生の受験勉強の頃から使っていて、もう3代目である。

こうして並べて見ると、価格帯が安いからか、製図ペンから顔料ペンまでステッドラー製品ばかり集めているようだ。TriplusのFinlinerが秀逸で、めずらしいノック式の426という油性ペンをアマゾンで見つけて入手したのだが、こちらはインクがかすれがちでいまいちだった。

「458 10 dokument F」と書いてあるリフィルが入っている。ただし軸は三角形状で非常に持ちやすい。

打ち合わせで「人とかぶりやすいマルチペン」No.2

IT系のエンジニアは、なぜかマルチペンを使っている人が多いように思う。過去10年、仕事の打合せで見かける率が一番高かったのは、LAMY2000の4色ペンL401だ。多くの文具雑誌やレビューサイトで絶賛されているので、一度は目にした方も多いだろう。

デザインは美しいのだが、定価1.2万円と高価である(今アマゾンで見ると最近円高だった影響か5,000円くらいで買える)。しかも樹脂製のボディーが使い込むうちに手の脂でテカってきそうだ。

いつか自分も買うかと思っていたが、いまだに持っていないところを見ると、やはり見た目の満足度より、人とかぶるのが嫌らしい。せっかくLAMY2000を買うなら、もっと高いがステンレスやタクサスの「黒くない」特別モデルを選ぶような気がする。

とはいえ、素材に凝っていても重すぎるペンは苦手だ。LAMY製品も数多く試してきたが、今欲しいのは、有名なわりに意外と持っている人が少ないcp1だったりする。これのプラチナコートは相当高価だが、廉価なstやlogoのステンレスモデルと形も太さもに似ていて、ほとんど見分けがつかない、というのがツボだったりする。

アバンギャルドライトも2,000円程度で買えるわりに、国内メーカーより圧倒的にデザインが良いので、他の人が持っている確率が高い。自分の統計では、LAMY2000に次いで2番目に他人とかぶりやすいマルチペンだ。

アバンギャルドライトに限定ブラック色が存在した

実はアバンギャルドライトが発売された当時、限定色のブラックが店頭に並んでいたことがある。銀座の伊東屋で見て、Limitedと印字された黒いボディーが渋くてかっこいいと思ったのだが、当時はボールペンに1,000円以上払うなんて信じられない気持ちだったので、買わずにスルーした。

現行のナイトブルーより濃い本当の黒色で、先端部は他と同じシルバー色。限定ブラックは本当にわずかした流通しなかったのか、ヤフオクでも出回っておらず、持っていれば今頃プレミアが付いたのではないかと思う。どこかで出会ったらぜひ入手したい一品だ。

使ってみると多機能グッズは意外と不便だ

ミニマリストを志せば、「一つで何役もこなせる」多機能グッズには常に心を惹かれるものがある。自宅にちゃんとしたハサミはあるのに、わざわざレザーマンのMicraに付いているやたら小さいハサミを使ったりする。

ただし実際やってみるとわかるが、ハサミやドライバーは十徳ナイフに付いているものより、単機能の専用ツールの方が圧倒的に使いやすい。その瞬間に使わないツールがごてごて付いていても邪魔だし、指を挟んで怪我しやすい。また、「左手のペンチでつかみながら、右手でドライバーを回す」という複合的な場面が日常的に結構あって、せっかく多機能なのに1台だと役に立たないことも多い。

帯に短し襷に長し。まさにそんな歯がゆさを覚える多機能グッズの一つがマルチペンである。非常時には一本あると重宝するが、決して日常利用の主役にはならない。そんな万年控え選手のような存在だ。自分にとって、なぜマルチペンがサブ的扱いに留まる理由は、前回も書いたが以下の通り。

  1. 筆記時にペン先がカチャカチャ音を立ててうるさい
  2. ペン先を選んで出す動作がわずらわしい

多機能ペンはどうしても中から音がする

寝る前に心静かに日記を書くときに、一動作ごとにペン内部でリフィルが暴れてカチャカチャいうのは耳障りである。決してペン先がガタついているわけではないのだが、胴軸内に浮いている使っていないリフィル同士がこすれるのは、機構上仕方ないのだろうか。

その後、リフィルの間にテープを挟む簡単な工作を試したら、カチャカチャ音はだいぶ改善できた。

振り子ノック式でもペン先を選んで出すのは面倒くさい

また、「どんな高級ボールペンでも回転式は許せない」ポリシーだが、アバンギャルドが振り子型のノック式とはいえ、「対応リフィルの表示を目で見て確認してから、ぶれないように慎重に押し出す」という動作はやけに神経を使う。しかも10回に1回くらいは、狙ったリフィルが出せなくて、紙に書いてからインクが色違いだったと気付くこともしばしばである。

男にとって筆記具は武士の刀と同じ。いざというときに素早く狙ったペン先を出せなければ敵に斬られてしまう。最近痴呆がひどくて、思いついたネタは2秒以内にメモしないとすっかり忘れてしまう。

どうでもいいとき用のペンをグレードアップしよう

そんなわけで、宅急便の伝票にサインするとか、役所に印鑑証明を取りに行くとか、低レベルの使役に甘んじているステッドラーだが、こうしてみると案外メインのカランダッシュより出番が多いのかもしれない。「どうでもいいとき用のペン」としては、100均以下の安物ボールペンをいくつも備えておくよりは、実売価格1,000円ちょっとのアバンギャルドライトを一本常備しておけば、少しだけ生活が豊かになったように感じられるかもしれない。

一家に一本マルチペン。さりげない見た目と軽さが魅力のアバンギャルドライトを、自分のテーマカラーで選んで持っておくのは素敵だと思う。10色もバリエーションがあるので、きっと好きな色が見つかるだろう。限定色のブラックは残念ながら再発売されないようで残念だが。