90年代の定番VJソフト、モーションダイブを最近のノートで動かす

最新スペックではないが、5年くらい前のDell XPSというノートに、古いmotion dive .tokyoというソフトをインストールしてみた。映像再生がQuickTimeベースなので環境設定に手間取ったが、一応画面上では動くようになった。

一世を風靡したモーションダイブのシリーズは、すでに開発も販売も終了している。久々に触ってみると、現場のニーズに合わせて必須の機能がコンパクトにまとまっており、UIのエフェクトも妙に凝っていて、完成度の高いソフトだと感じた。

1億人に1人くらい、最新環境でmotion diveを動かしたいという人がいるかもしれない。Amazonでもレアな中古ソフトが売られている。

motion dive .tokyo 初回限定BOX
デジタルステージ

セットアップや素材の圧縮に手間取ったので、操作方法と合わせて作業過程をメモしておこうと思う。

QuickTimeのインストールが必須

セットアップ対象のPCは2015年発売のDell XPS 13(9340)。簡単にスペックを整理すると、

  • OS:Windows 8.1 64bit
  • CPU:Core i7-5500U(2.4GHz)
  • メモリ:8GB
  • ストレージ:256GB SSD
  • グラフィック:Intel HD Graphics 5500
  • ディスプレイ:13.3インチ、3,200×1,800(タッチパネル)

ベゼルの狭い13型モニターにWQHD+の高解像度を詰め込んだ変態マシンだが、基本性能は当時の事務用ノートして標準的なスペック。独立したGPUも搭載していない薄型なので、3Dや映像関連の処理には弱い。

外付けのDVDプレーヤーからmotion dive .tokyoのCDを読み込ませると、とりあえずインストールはできた。しかしソフトを起動すると、「最新のQuickTimeをインストールしてください」とエラーが出て終了する。

最近使わないが、一応QuickTime 7 for Windows 7.7.9という最新版は入れている。Appleのサイトによると2014年でQuickTime自体サポート終了してしまっているようだ。

インストーラーから修復してみたが変化はなし。QuickTime Playerを単独で起動すると、”Please install Apple Application Support.”と警告が出て終わる。これでピンときて、以前iTunesと一緒にAppleの付属ソフトをアンインストールしたのを思い出した。

もう一度、Windows用のiTunesを落としてインストールすると、Apple Application Supportも同時に組み込まれ、QuickTime Playerを起動することができた。Bonjourとか不要なソフトも入ってしまうのが嫌だが、用が済めば削除すればよい。

ここまで準備して、ようやくmotion dive .tokyoも動いた。

PCからの外部出力

VJソフトの操作はともかく、最初に確認したいのがプロジェクターへの外部出力である。とりあえずノートPCをHDMIで手元の4Kモニターにつないでみた。一応外部ディスプレイとして認識されて、目標の640×480解像度で表示画面の複製/拡張できる。

この状態でモーションダイブのプレビュー画面を画面外にドラッグ&ドロップすると、ミックスした映像だけ出力されるはずだ。何度かやってみたが、どうもコンソールと同じ面積で、画面の中央に小さくしか映像が出てこない。

出力機器との相性もありそうだし、そもそもGPU非搭載のノートPCが非力で、うまく処理できていないのかもしれない。20年前は表示画面を複製し、プロジェクター側の機能で映像部分だけ拡大出力していたような記憶もある。

PCのスペック的に、外部出力できたとしても手元の画面で同時にプレビューできるか不安がある。ダメならプロジェクターで映した画面を見ながら操作するか、映像信号を分配して別のモニターが欲しいところ。

そのあたりは会場のセッティングを見ながら相談するしかない。そもそもVJが何組か交代する方式だと、途中でプロジェクターで拡大表示する作業もできないだろう。ほかにmotion diveを使っている人がいればマシンごとお借りしたいが、ライブラリのプリセットを移行できる機能がないので、そもそも難しい。

自作素材の読み込み

モーションダイブの.tokyoは同シリーズ3世代目で、操作関係はかなり洗練されている。まず自作の素材をインポートするのに、フォルダごと一括で処理できるのがうれしい。いろいろ雑多なネタをかき集めて100個以上ファイルがあったので、フォルダ読み込みして24個ずつ全選択、下のタブにごそっとドロップすれば、とりあえず再生できる準備は整った。

本番でスムーズに操作できるよう、各素材のサムネール画像を選定。自分なりに扱いやすいルールでタブ内の映像を入れ替えていく。さすがにフッテージが100個もあると、タブの編集に数時間かかった。

上部のタブは右左の矢印ボタンで水平移動して無数に増やせるが、隠れてしまったタブにアクセスするのはひと手間かかる。ネタがあふれる場合は、下のライブラリーを増やして分類した方が切替しやすいと思う。

モーションダイブの基本操作

基本的な操作方法としては、左右に分かれたA/Bトラックにタブから素材を割り当て、スペースキーでスイッチするだけ。素材はマウスでドラッグ&ドロップしてもいいし、カーソルで選んでEnterキー(AトラックへはShift+Enter)でも適用できる。

中央部分のフェーダーをつまめば、A/Bの映像を合成できる。それぞれに再生速度調整のダイヤルもついているので、曲に合わせてアレンジ可能。ダイヤル部分をダブルタップすれば、通常速度にすばやく戻せる。だいたいこれだけ覚えれば、VJとして普通にプレイする分には問題ない。

VJ映像の構成要素と演出方法

作業としては事前の映像作り込みが大半で、現場ですることやテクニックというのもあまりない。知っている曲なら、展開に合わせて素材を使い分けたり、盛り上がるところでタイミングよく切り替えできる。たいてい、その場で顔合わせしたDJさんとフィーリングで共演することになるので、何となくイメージに合いそうな映像を選ぶしかない。

曲調に合わせた素材のストーリー展開や、自分なりのスイッチ/フェード方法を決めておけば十分だと思う。DJと違って、多少映像のタイミングがずれたり変になってもそれほど目立たない。

経験上、背景でぼんやり流すゆっくり目の映像を用意しておいて、その上でビートを刻む平面的なタイポグラフィーなど用意しておくと、いろんな音楽に合わせやすい。YouTubeで見られるかっこいいと思うVJ映像は、たいてい持続的要素とリズムに合わせたパターンの2要素で構成されている。この調子で突き詰めれば、VJ映像の美学や様式美みたいな理論的側面を掘り下げられるかもしれない。

できればA/Bでなく、もう1チャンネル加えて3セットの映像をミックスしたいところ。練習すれば、ジェフ・ミルズのようにターンテーブル3台操る感じで映像に深みを出せると思う。ただし、リアルタイムの映像処理としてはマシンの要求スペックが高くなるだろう。

最低限覚えておくべきショートカット

ショートカットキーもいくつか用意されているが、設定ファイルをいじればカスタムできるのかもしれない。実用的なのは、マウスで調整しにくいスピード調整をA/Sキーで行うくらいだろうか。

キー操作はデフォルトとでBトラックに反映され、Shiftキーを押すとAトラックに適用されるようだ。

スイッチングまわりの便利機能

ソフトとしては、さらにハイレベルな拡張機能も用意されている。がんばれば使いこなせそうなのは、スイッチキーの右にあるTAPボタン。ここをアクティブにした状態で数回ポンポンとスペースキーを叩くと、そのタイミングを覚えて自動でA/Bトラックの切り替えを続けてくれる。

微妙な誤差から、しばらくするとずれてくるので、たびたび打ち直しが必要。しかし、指が疲れるSpace連打を代わってくれるのはありがたい。キーボードも傷まずに済む。

ちなみにマニュアルにないが、Tキーを押してもSpaceと同様にスイッチが効くようだ。UIに派手なエフェクトが出るので本来は別の機能なのかもしれないが、横長のスペースキーよりは軽い力で押下できる。

スイッチボタン上のFD1、FD2、FD3は、プリセットされた3種のフェード時間でスイッチしてくれる。FD2と3は切り替えが長すぎて使いにくいが、FD1はタイミングもよく便利に使える。曲によっては、カットでパキッと切り替わるより、じわっとフェードをかけてスイッチした方が目にやさしくなじんで見える場合もある。

映像合成とテキスト表示

右側のCOLOR EQはまず使わない。LAYER MODEは映像合成の加減算をリアルタイムに処理してくるが、たいてい汚いノイズっぽい絵になってしまう。

黒地に明るめパターンの映像同士を、LIGHTESTで明度を保ったまま重ねるのが使えるくらい。あとは単純にネガポジ反転したりもできる。

イベントで地味に便利なのが、DJの名前をその場でテキスト入力できる機能だ。それ以前はDJ名も個別にタイポグラフィーを組んで素材化していた。しかし、ゲストDJについてはパーティーごとの使い捨てになるので、毎回専用の映像をつくるのはむなしい。

とりあえず名前を入れて、いくつかプリセットされたエフェクトで画面表示できれば十分だ。全盛期はこの機能を使うとモーションダイブを使っているとばれて恥ずかしかったが、今はマイナーなので誰も気づかないだろう。結構凝ったエフェクトが多くて見ごたえがある。

素材はQuickTime推奨だがAVIも動く

近年つくっていた映像素材をVJ用にアレンジしてみたが、モーションダイブに組み込む形式で悩んだ。基本的にmov形式のQuickTimeが推奨だが、昔からWindowsだったのでaviを多用していた。movならSorensonのコーデックがソフトと相性良かったように思う。

当時はまだノートPCが高価だったので、わざわざ現場にデスクトップPCを持ち込んでいた。それでもスペックが間に合わなかったのか、320×240という縮小サイズでソースを用意していたようだ。そういえば90年代は、カノープスの高級スキャコンを使ってもフルサイズだとコマ落ちするので、320×480と横幅半分に圧縮した変則サイズで映像編集していた気がする。

当時の圧縮方式は、aviだとCinepak Codec by Radiusがメジャーだったようだ。画質的にベストとはいえないが、適度な圧縮率とそこそこ速い処理効率のバランスがよかったのだと思う。Microsoft Video1で圧縮した素材もあったが、それに比べるとファイルサイズも画質も断然ましだ。

正体不明な上、エラーでうまくインストールできないが、GOMプレーヤーのコーデック資料室をたどると懐かしのCinepak Codecを入手できた。

そのうちWindows環境ではAVIに変わってWMVも出てきたが、モーションダイブは読み込みに対応していない。なぜか最近のH.264圧縮MP4映像はインポートできたが、コマ落ちが多くて使えなかった。

Cinepak圧縮のAVIを書き出す方法

新ネタをVGAサイズのシネパックで圧縮したいと思ったが、今はAdobeのサポートも終了してしまい、Premiere Proから出力できない。DV圧縮のAVIや非圧縮などいろいろ試したが、どうもアスペクト比が歪んだりサイズが大きすぎて扱いにくい。

いろいろ調べたらTMPG Encの無料版がまだ配布されていて、そこからCinepakのAVIを出せるとわかった。プレミアからいったんソースを無圧縮で書き出し、TMPG Encでシネパック化する二段階工程。途中で巨大なファイルが生成されるが、今のハードディスク容量なら作業は問題ない。

640×480サイズでCinepak圧縮したAVIファイルなら、非力なGPU非搭載ノートでもかろうじてリアルタイム合成できた。PCと外部出力を両方VGA解像度にして、プレビュー画面を外側にドラッグ&ドロップ、その後フルスクリーンのFボタンを押すと、プロジェクター側で全画面表示できる。

GPUノートかiPadがベター

320×240のソースは問題ないが、640×480だと多少コマ落ちしてしまう。PC側のプレビューを切ったり、表示FPSを抑えても効果はなかった。

やはり今どきVJをするなら、グラボ付きノートをそろえた方がスマートだろう。値段は張るが、SurfaceやXPSの薄型でもGeForce GTX 1050くらいのチップを搭載できるようになった。

あるいはiPadのVJアプリを使った方が、スムーズにプレイできるのではないかと思う。たまたま手元のXPSがタッチパネルだったので、スタイラスペンでモーションダイブを操作したら超絶便利だった。

千円前後の安いペンなので、やや反応は鈍い。指先で快適操作できるiPadアプリなら、ローランドのハードウェアミキサーのように滑らかにプレイできることだろう。

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