ミニベロとロードバイク、峠で乗り比べてわかった違い

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ロードバイクとミニベロの乗り心地がどのくらい違うのだろう。

手持ちのカーボンロード(700C)と折りたたみ小径車(14インチ)で峠を走って比べてみた。

アンカーとダホンを比較

今回比べた自転車のメーカー・車種は、アンカーRFX8とダホンのK3。

ホイールサイズだけでなくフレーム素材(カーボン/アルミ)、ハンドル形状(ドロップ/フラット)、ギア数(20段/3段)など、各種パラメーターが大きく異なる。

アンカーRFX8とダホンK3のサイズ感比較

アンカーRFX8(奥)とダホンK3(手前)

ミニベロは軽いので加速や登坂に有利。その一方で走行性能や振動吸収性はロードに劣るというのが定説だ。

しかし自転車の乗り心地は重量・素材だけでなく、フレーム形状や組み立て精度などスペックに表れない部分も効いてくる。

ロードバイク歴8年。たまにレースにも出る、そこそこシリアスなユーザーとして、両者を乗り比べた感想をまとめてみたい。

下りはロードが圧倒的に速い

自転車で出せる最高速度は、ギア数の多いロードバイクが有利だ。

DAHON K3はギアが3段しかないので、平地でどれだけ漕いでも自分の脚力では時速34キロくらいが限界だった。長い下りでブレーキをかけなければ、最高時速43キロまで出せた。

これが軽量カーボンロードなら、平地で時速40キロは普通に出せる。峠の下りなら最高時速70キロ近くで走ることも可能。

ペダルを回さず自重で下りるだけでも、ミニベロよりロードの方が速い。結果的にツーリングの所要時間が短くなり、より遠くまで遊びに行ける。

スピードタイプの20インチ小径車なら、K3よりスピードは出せると思う。しかし14インチではどれだけフレームを補強してギア比を高くしても、構造的な限界が出てくる。

トップスピードの爽快感を求めるなら、標準的なドロップハンドルのロードを買うほうが間違いなく正解だ。ダウンヒルが大好きなスピード狂なら、ミニベロでは物足りなく感じてしまうだろう。

逆に下りがこわい人とか、子ども向けに自転車を選ぶなら、上限速度が低い小径車を選ぶのもありだと思う。

登坂タイムもロードが勝る

ロードと小径車でヒルクライムの登坂タイムを比べてみた。

計測場所は奥多摩の風張峠で、ふもとの川野駐車場から月夜見第一駐車場までの9.3km区間。上りの所要時間は以下のようになった(山のふるさと村交差点の信号停止時間を含む)。

  • ロードバイク…36分(Anchor RFX8)
  • ミニベロ…42分(Dahon K3)

計測前に峠を2つ越えてきたハンデを加えても、ロードバイクの方が10%以上タイムを縮められた

奥多摩のアンカーRFX8とダホンK3

左:アンカーRFX8 右:ダホンK3

風張峠の奥多摩湖側は序盤に平地区間があるので、大きく差がついたとも考えられる。

しかし上り坂でもK3はギアが足りず、ほとんど立ち漕ぎでノロノロ運転だった。K3の初期状態では平均勾配7%程度の峠でも、サドルに腰かけたまま上るのは難しい。

もしK3を適切なギア比に替えて効率よくペダルを踏めば、タイム差を縮められそうな予感がした。車体重量はミニベロの方が軽いはずなので、パーツのカスタム次第で登坂性能はもっと上げられると思う。

巡航性能もロードが有利

平地を一定速度で走る巡航状態でも、ロードバイクの方がパワーロスが少ない気がした。

体感的に同じくらいの運動負荷でペダルを回しても、ロードなら時速30キロで巡航できるところ、小径車では時速25キロくらいまでスピードが落ちてしまう。

前面投影面積や空気抵抗はそれほど差がないように見える。しかしミニベロはハブやスプロケットが高速回転するせいか、機材内部の摩擦が大きいように感じる。

RFX8に履かせているNovatecのJetFlyホイールは定価7万でそこそこ高性能。これに対してK3のダホン純正ホイールは同じアルミ製だが、そこまで良いものでもなさそう。足回りのスペック差が効いているようにも思う。

そもそもK3はフレーム形状が特殊なので、金属部分が無駄に変形して力を取りこぼしている気配がある。

Deltecワイヤーのおかげで一応ダイヤモンド型を実現しているが、正三角形に近いロードのフレームに比べると剛性は劣るだろう。

ダホンK3のDeltecワイヤー

ロードの方は時速20キロくらいの中間速度域なら、適当にペダルを踏んでも不思議と前に進む。

少しくらいの上り坂なら、傾斜を意識しないでそのまま上れてしまう。K3に比べればギア比がクロスレシオなので、こまめに変速してケイデンスも一定に保てる。

平地といっても多少の起伏はあるので、ギア数の多いロードの方が路面状況に対応しやすく、巡航時のストレスが少ない。

わずか3速のK3では、足の回し方で微妙な緩急に追従するしかなく、長く走ると疲労が溜まってしまう。

直進安定性もロードが強い

ダホンのK3では、とてもでないが怖くて手放し運転できない。地面に段差がなくても、勝手にハンドルを取られて倒れてしまいそうな恐怖感を覚える。

一方でロードバイクなら短時間、両手を離して運転することができる。フレームからボトルを取ったり背中から補給食を取り出したり、片手でハンドルを握る際も安心感が大きい。

K3は極小サイズながらホイールベースが83cmと長めに確保されている。それでも1mを超えるロードには及ばず、この差が直進安定性に影響しているのかもしれない。

久々にK3からロードに乗り換えると、ハンドルポジションが異常に遠くにあるように感じる。

K3のフラットバーよりドロップハンドルの幅が狭いので、意図したように前輪が回らず、ヘッドパーツが固着しているような錯覚を覚える。

さいわい数分も乗っていると、すぐに慣れて違和感は解消される。

K3はハンドルの幅が広すぎるので、手元の操作に対して前輪が敏感に反応しすぎるきらいがある。不安定に感じてしまう要因は、このハンドル形状にもあると思う。

加速性能は変わらない

一般的に「小径車は加速に有利」といわれるが、実際にはそこまでのメリットを感じなかった。

信号待ちからのゼロ発進では、加速に適したギア比を選べているかどうかが重要だ。その意味において3速しかないK3は、スタート時のロスが大きいように思う。

ロードなら体重を乗せてダンシングで加速すれば、ゼロ発進でもすばやくスピードを回復できる。しかしミニベロの立ち漕ぎは危険なので、ひたすら速くペダルを回すしかない。

K3は車体と人体を含めた重心が高くなるせいか、急坂でローギア発進しようとすると前輪が浮くことがある。ロードバイクなら勾配20%を超えるような激坂でもなければ、不意に前輪がウィリーすることはない。

坂道ではうっかり急加速して転ばないように神経を使う。この点は登坂における小径車のデメリットといえる。

乗り心地の比較

比較対象のRFX8は、アンカーの中でもレース向けというよりロングライド志向と位置付けられていた。今ではRL8やRL9という後継機が出ているが、8年乗り続けても特に不満が出ないくらい完成度が高い。

振動吸収にすぐれたカーボン製で、さらに走行中の疲れにくさを重視して設計されている。そのためアルミフレームの小径車とは大きく差が出てくるはずだ。

微細な衝撃吸収はカーボンが上

路面の細かい凹凸については、確かにカーボンロードの方がマイルドに感じられる。かつて低圧のチューブレスタイヤを履かせていたときは、もっとスムーズな乗り心地だった。

アルミのK3で地面からゴツゴツ突き上げてくる様子は、まるで薄手のバーテープに巻き替えたような感触だ。路面状態をダイレクトに感じ取れるという意味では、メリットと捉えられないこともない。

14インチの小径車では、路面のちょっとした段差でも車体が跳ねまくると予想していた。しかしK3の固さは体感的にそこまで不快でもない。

体に伝わる振動というのは、フレームよりタイヤとチューブが影響するのだろう。K3で段差を超える際の瞬間的な衝撃は、高圧で空気を入れたロードバイクとそう変わらない。

ミニベロは路面の微細な凹凸に弱いが、大きな段差を乗り越える際のショックはロードと大差ないように思う。

疲労感はそれほど変わらない

100km超のロングライドやヒルクライムなど、同じ条件でツーリング後の疲労感を比べてみた。

アルミの小径車は微妙な振動が伝わって体が疲れそうだが、案外カーボンロードと変わらないのが不思議だ。

むしろアップライトなポジションのおかげで首・肩まわりの痛みは減った。

ロードに比べて手の平やヒジが痛くなるが、これはハンドル形状の違いによるものだろう。フラットバーよりドロップハンドルの方が、明らかにエルゴノミックで握りやすい。

ミニベロの大きな問題点は、路面のくぼみにタイヤが挟まりやすい点だ。大きな穴は注意すれば避けられるが、見えにくい段差に突っ込んで何度かハンドルを取られそうになった。

特にスピードの出る下り坂では、ロードなら難なくこなせる凹凸でも小径車は命取りになりかねない。その意味でも、ミニベロの下りは慎重に速度を抑えてしまう。

費用対効果は小径車がベター

以上、走行性と振動吸収・疲労面でロードとミニベロを比較してみた。

スピードや巡航性能についてはロードが上で、加速性もたいして変わらない。乗り心地はカーボンバイクの方がよさそうだが、全体的に考えるとそれほど違いはない。

性能面でK3が勝るところはひとつもなく、よくてせいぜい引き分けという感じ。K3を唯一評価できるポイントがあるとすれば、それはコストパフォーマンスだ。

ミニベロはコスパがいい

今回使ったロードバイクはコンポーネントが105で、諸々の改造を含めるとトータル40万は投資している。RFX8はフルカーボンの入門用とはいえ、フレームセットだけで定価17万する代物だ。

一方のダホンK3は完成車に2千円のバーエンドバーを付けただけ。投資額はまだ8万程度だ。

機材にかけているお金が5倍も違うのに、体感的な性能差はロードより2~3割劣る程度でないかと思う。ヒルクライムのタイムが金額どおり5倍も変わるなんてことはない。

自転車はプロ用の高級機材になるほど、費用対効果が繊細なレベルになっていく。

ホビーライダーとしては、105コンポやノバテックの中堅ホイールでさえオーバースペックなのかもしれない。高い機材は使う人を選ぶ。

予想を裏切る走行感

K3を買って感じたのは、むしろ「見た目に反してよく走る」という驚きだ。

重量・体積あたりの走行性能という面から考えると、DAHON K3は驚くほどよくできた自転車だと思う。軽量アルミホイールを買い増すくらいの金額で、街乗りと輪行に適した万能マシンを手に入れることができる。

14インチ小径車でもロードバイク並みに、100キロ超のロングライドや峠の登坂をこなすことは可能。

たしかにスピードは劣るが、その分、景色を眺めたり観光スポットに寄り道したりと、自転車の新しい楽しみ方を開拓できる。

そしてミニベロには「折りたたみできて持ち運びも軽い」という独自のメリットがある。これは数値に換算できない構造上の大きな違いだ。

一般人がロードの次に買う2台目としては、TTバイクやMTBではなく小径車を買った方が、幸せを実感できるように思う。