LAMY好きにはたまらないミッドタウン21_21のthinking tools.展レビュー

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ミッドタウンの21_21ギャラリーで開催中のLAMY、thinking tools.展。銀座の伊東屋、2階のLAMYコーナーにパンフレットが置いてあった。小規模な展示だが入場無料なのでさっそく行ってみた。

企画展の内容としては、LAMYの代表作と最近の製品について、検討段階のプロトタイプやスケッチの展示。およびクリストフ・ニーマンがLAMY製品から展開したイラストとインスタレーションの2部構成になっている。

2000のバリエーション

前半だけでもLAMYのマニアなら垂涎ものだ。最初はやはり2000だが、ベークライト製のマスターモデルを見ることができる。同時期に発売されたブラウンのシェーバー、シックスタントが並べられていて、デザインのリソースになっていることがわかる。

当時の新素材、マクロロンが胴部に使われたシェーバーは、ステンレスの網刃部分との継ぎ目が目立たず2000と似ている。現在でもスーツケースの素材に使われているポリカーボネートの強化素材だが、2000の製品版は微細なヘアライン加工が施されて滑りにくくなっている。

今では販売されていない、model 225という細身の2000みたいなペンも展示されている。形はオーソドックスだが、よく見ると部品の接合部やクリップの加工精度が高いというLAMYの特徴は、1960年代から確立されていたようだ。

スピリットのこだわり

続いてサファリの展示があり、3つ目はスピリットというのは意外だった。すでに廃番のモデルだが、1枚の金属板を曲げて済ませる製法の工夫や、超細身というこだわりが多いからだろう。10年ほど前に手帳用のペンとして購入を検討したが、細いわりに長さは10cm以上あるのがいまいちに思われた。

スピリットの試作品はバリエーションが豊富で、グリップがミスドのポン・デ・リングみたいに波打っているものから、トンボのZOOM707に近いモデルもある。LAMYのスピリットに比べるとZOOM707はロングセラーで、各色のバリエーションや30周年記念の限定モデルまで出ている。

その中で軸が短めの717という製品が出たので購入を迷っていたが、製造中止になってしまったので在庫を探して何とかイエローのシャーペンを1本入手できた。 ステンレスの塊という感じのスピリットより、軽くて携帯しやすいのがよい。

手帳用・携帯用の筆記具は細さより短さ・軽さも重要である。エクリドールXSは短めで持ちやすいが、金属製で重すぎる。オートのミニモは究極だが、同軸が細すぎて書きにくい。グリップ部分はZOOM並みに直径6mm程度確保して長さは100mm以下、さらにスピリットのような所有感を満たす精悍なデザインなら歓迎だ。ファーバーカステルのポケットペンが、ノック式だったらよかったと思う。

手帳用は実用性重視。高価なコーティングは不要なので、価格も下げてほしい。

ダイアログのプロトタイプ

有名デザイナーとコラボしたダイアログのシリーズでは、リチャード・サッパーのdialog 1に万年筆のプロトタイプがあったことを知った。

先日、銀座の伊東屋で触れることができたフランコ・クリヴィオのdialog 3では、検討段階で円形でなく変形6角形断面のモデルがあったりする。dialog 1の3角形断面と似ているから途中で破棄されたようだが、同軸の一部だけ面を取って転がりにくくするというアイデアは、エルメスのノーチラスでも継承されている。

クレヨン型のpico

以前使っていて実用性は疑問だが伸縮機構がおもしろかったピコ。ずんぐりしたクレヨン型のプロトタイプが斬新に見えた。さらにシャーペンや万年筆の案もあったようだが、カヴェコのスポーツとかぶるからだろうか。

最終段階ではおなじみの試験管っぽい形状に収まっていた。dialog3といい、LAMYは多角形断面より円形、そして頭もお尻もシンメトリーな形状にこだわりがあるように思う。

シンプルに回帰した2000年代

2000年以降の新製品、studio、scala、aionはApple製品の影響か2000のように地味な形状に戻っている。奇をてらわずに、極端な小型化や伸縮機構より重量バランスやクリップの造形を追及しているようだ。

ステュディオはプロペラ的にひねったクリップにまだ遊び心があるが、スカラとアイオンは目立った特徴がほとんどない。スカラのクリップは製品版よりシンプルな直線状や波型などいくつもスタディーされているので、見えないところで試行錯誤があったのだろう。

いずれも1万円近くする高級ラインなので買いたいとは思わないが、文具店に行くとショーケースの中でついつい見入ってしまう美しさがある。

自作イラスト投稿で景品あり

後半のクリストフ・ニーマン展示コーナーは、シンプルだがイラストから紐が出て立体的につながっていたりする工夫がある。2000に並ぶ名作だと思うcp1の展示はなかったが、イラストでは題材にされていた。階段にペンが立てかけられて影が折れ線のように落ちる絵は、cp1の直線・棒という感じをうまく表している。

展示のパンフレットにも使われていたピコのイラストも、注射器から脳みそが出ているようでおもしろい。

最後にLAMYのペンを使って自由に絵が描けるコーナーがある。自作のイラストをインスタグラムで投稿すると、景品がもらえるチャンスだ。しかし、見本として展示されていたイラストがどれもうますぎるので、採用のレベルは高そうに思う。

展覧会のカタログも販売されていたので、LAMY関連のコレクションとしては貴重な資料だろう。狭いスペースのギャラリーだが、無料のわりにはかなり楽しめた。LAMYのマニアに限らず、文具好きやプロダクトデザインに興味があるなら、ぜひチェックしておきたい企画展だ。

ついでにミッドタウンの中庭で、モエ・エ・シャンドンのイベントもやっている。ビニール製のジオデジックドームに掘りごたつみたいな個室ブースがあり、ちょっとおもしろそうだった。

特に夜間はまわりからじろじろ見られるが、並木のイルミネーションもきれいなのでVIPな雰囲気を堪能できるだろう。