ハセツネCUPトレラン大会完走。受付からゴールまでのレポート

日本山岳耐久レース、ハセツネCUP本番のレポート。奥多摩の山奥71.5kmの行程を、24時間の制限時間以内にライトを照らしながら夜中に走る過酷な競技だ。

東京都内から気軽にアクセスできて、募集人数も少ないため毎年のエントリーは高倍率。RUNNETの申し込みサイトを研究して、先着順の0次関門は無事クリアできた。

試走して念入りに対策したおかげか、本番は思ったより好タイムで無事完走。レースの進行に沿って体験記をまとめてみたい。

森なめたら死にますよあなた

トレランの一種とはいえ、ハセツネはあくまで「山岳耐久レース」。重荷を担いで登るボッカ競走まではいかないが、ほとんど補給がない状態で山の中を走り続けるハードなレースだ。

ハセツネ参加者の様子

普通のマラソン大会のイメージで参加すると、エイドステーションが驚くほど少なくて驚く。基本的に水も食料も自分で背負って走る。過去に滑落事故で死者も出ており、準備が不十分だと生命の危険がある。

2回に分けて事前にコースを試走し、必要な水や食料の量、ライトの使い方や電池交換のペースもチェックしておいた。さらに眠気対策のため、生活を夜型に慣らして本番に臨んだ。

レース前にもらえる謎の白米

11:32拝島発~11:49武蔵五日市駅着の電車に乗ったが、マラソン大会のように会場行きの電車は満員ということはなかった。参加定員が2,500人と少なめだからかもしれない。それでも山道のシングルトラックを走るには多すぎる人数だ。

ハセツネ会場の様子

駅から会場の五日市中学校までは徒歩10分。隣の五日市会館前に受付があり、事前に郵送で受け取った封筒記載のナンバーでゼッケンと粗品を受け取る。

ハセツネ参加でもらえる粗品の米

厚手のバッグに、なぜか福島の米が1kg入っている。途中で食べられるものでもなく、重いので担いで走りたくはない。荷物の置き場に困ったが、まわりの様子を見てレース中は中学校の軒先に吊るしておいた。

保険チェック、更衣室、出店状況

受付時に保険加入のチェックがある。事前に契約しておいたモンベルの野外活動保険、加入内容のプリントアウトを提示したら問題なくパスできた。万が一未加入だと、その場でjROに加入させられるようだ。うっかり手続きを忘れていても、当日加入できるので失格にはならない。

中学校の体育館は男子更衣室になっていたが、12:20頃にはすでに満員になっていた。一応、警備のスタッフが見張っているので、荷物は体育館の中に入れておいた方が安心だ。

ハセツネの体育館更衣室

施設内には出店ブースが充実していた。PowerGel、Shotz、Stinger、ClifBarなど定番の補給食も揃っていて、準備が不安ならその場で買い足せる。

ハセツネの出店ブース

On Runningのシューズなど、めずらしい製品も展示されている。特に無料のテーピングコーナーは大人気だった。

目標タイム順に整列

中学校の校庭では目標タイム別に整列が始まっていた。自己申告制で、1時間ごとに区切られた10~16時間の好きなグループに並ぶルール。

目標タイム別に整列

「渋滞の原因になるので、正直に自分のタイムの列に並んで」とアナウンスされていたが、どう見ても最短10~12時間台の人数が多すぎる。序盤の渋滞を避け少しでもタイムを縮めるため、みな速い方の集団に加わりたいのだろう。

一方でのんびり走る予定の人が、目標16時間の最後尾に集中していた。積極派と消極派で、ランナーの二極化が見られた。

参加者の装備を観察

開会式では市長や関係者の挨拶、前年度のトロフィー返還のあと、全員で準備体操する流れだった。まわりのランナーの装備を観察すると小さいバッグの人が多く、みな軽装に見えた。

中には自転車用のジャージを着て、背中のポケットに物を入れている人もいた。ちょっとしたウエストポーチくらいの容量があり、走行中のフィット感も抜群でよいアイデアだ。

ハセツネ開会式の様子

足元を見ると、例によってサンダル履きの人がいた。ロードはともかく、山道でも走れるのだろうか。がれきにつま先をぶつけてケガをしそうだ。

ハセツネで見かけたサンダルランナー

さすがに真似できないと思ったら、レース中に裸足で走っている人も見かけた。上には上がいるものだ。

ハセツネ恒例の大渋滞

13時にスタートして秋川を渡るまではジョギングペース。橋を渡って最初の急坂も、みな走っていた。広徳寺の前で鋭角ターンしたところから道が細くなり、長い渋滞が始まった。

どうやらその先の分岐で、右手の坂を登るところがボトルネックになっているようだ。開会式で「スズメバチ対策でルート変更した」と言われていた個所がここらしい。

ハセツネ序盤の渋滞状況

15分くらいかかってぬかるむ坂を超えた先も、シングルトラックで足踏み状態が長く続いた。少し下って新多摩変電所に出るとやっと集団がばらけ、今熊神社まではロード区間になる。微妙な登り坂で体力を削られるが、ここはみな走ってパスするようだ。

今熊神社までの舗装区間

今熊神社奥宮までのきつい登りも混んでいたが、もともとスローペースでしか登れない坂なので問題はない。人は多いが少しずつ前には進む。今熊神社から先、浅間峠まではまったくトイレがないので、山頂でしっかり済ませておきたい。

今熊神社から入山峠までも基本的に渋滞気味。後から振り返ると、序盤だけでなくコース中の上り坂はすべて行列ができていた。登りは追い抜くのが大変で、無理に迂回してもまわりに迷惑がかかる。前の方で詰まると、道を譲ってくれない限りはその場で足踏みするしかない。

上り坂の大行列

先日参加した北丹沢12時間山岳耐久レース(キタタン)でも感じたが、トレランの上りは我慢比べ。平地と下りのスピードで勝負するスポーツらしい。さいわい三頭山から先はだいたい同じペースの人が固まってきて、それほどストレスなく走れた。

入山峠~市道山分岐~醍醐丸

スタートから1時間25分後、入山峠の階段で30人くらい並ぶ。その先の市道山分岐まで小さいピークが連続するが、常に蟻のような大行列だった。

平地と下りはみな飛ばすので、集団のペースを乱さないようついていくのに必死だ。練習だと歩いてしまいそうな微妙な上り坂も、レース本番ではみな走る。渋滞は長かったが、結果的に予定より早いタイムで醍醐丸を通過できた。

醍醐丸付近の様子

5日前の試走で見つけたシロオニタケが成長して傘が開いていた。道端でかなり目立つのだが、毒キノコなので放置されているらしい。

成長したシロオニタケ

連行峰のジグザグ道も淡々と登る。徐々に道端で休んで集団から脱落する人が増えてきた。中には座り込んでつらそうな人もいる。

三国山からは富士山こそ見えなかったが、夕日を拝むことができた。まだ明るいうちにできるだけ距離を稼いでおきたい。

第一関門でライトを準備

その後、熊倉山からゆるく下って17:28に第一関門の浅間峠に到着。かなり暗くなってきたが、ここまではライトなしで到達できた。

ハセツネ第一関門、浅間峠の様子

今熊山からずっと我慢していたトイレを済まし、ヘッドライトとハンドライトを準備。市道山分岐のあたりから出てきた霧で、ライトの視界が妨げられるとわかった。

ここからトレッキングポールが使用OKとなる。ポールを組み立てたり夜間装備を整える人がたくさんいた。それほど広い峠でないので、ベンチが空いた隙にバッグを下ろして休憩させてもらった。

中にはリタイアする人もいて、何人かグループになって上川乗のバス停方向に下って行った。途中棄権といっても浅間峠からバス停までは公認マップで50分。第二関門や第三関門なら車に乗って道路を下れるが、ハセツネではリタイアするのも容易でない。

浅間峠~槙寄山~笹尾根~三頭山

第一関門の浅間峠から槙寄山までは、これといった特徴もない登山道。暗闇では多少ペースを落としてでも、集団に加わった方が安心感がある。

先日の試走ではよくわからなかったが、巻き道に迂回して丸山には登らなくてよいとわかった。笹尾根はなだらかな起伏が続き、がんばれば歩かずに走り通せる。険しい登りがない分、渋滞も発生せず快適に走れた。

平地ではペースに合わせて自然と集団がばらけていくようだ。速い人は後ろから声をかけて抜いて行き、遅い人は脇に立ち止まって道を譲る。そうして徐々に同じ速度の人たちが固まってくる感じになった。

ハセツネの夜間走行

西原峠から三頭山まで、本レース最大400mの登りがある。その後の小河内峠から御前山までも同じくらいの標高差。それでもキタタンの最難関、袖平山~姫次800mの急登に比べれば全然ましだ。下りに比べれば上りは心拍が上がるが、足の負担は少なくて済む。

夜間の岩場

浅間峠から先、8割くらいの人がトレランポールを使って走っていた。ハセツネはキタタンやUTMF/STYのようにストックの使用は禁止されていない。

避難小屋まで少し下って階段を登り返し、三頭山の山頂に到着。ここがハセツネの中間地点で最高標高1,527m。ただしここからしばらく下って御前山にまた登るので、この先ずっと下りというわけではない。

三頭山から鞘口峠までのダウンヒル、前日の雨でぬかるんでいるので滑らないよう慎重に足を運ぶ。霧が濃くなり雨も降っているようだが、コースは木立に囲まれているので雨具を出すほどではなかった。標高が上がり、夜20時を回って気温もだいぶ下がっている。

砥山まで少し登り返してから風張峠に向かって下り、奥多摩周遊道路に出る。ガードレールの外を走ってまたトレイルに戻り、月夜見山に登頂。このあたりのコースはわかりにくく、先日の試走ではそのまま道路を走って関門の駐車場に向かってしまった。

第二関門で水分補給

第二関門の月夜見第二駐車場に到着。ここで初めて水の補給を受けられる。三頭山からはボトルの水が空になっていたが、バッグからハイドレーションパックを降ろすのが面倒なので我慢して走ってきた。

給水所では水かポカリを選択できて、両方ミックスすることも可能。公式ルールにもある通り、ここでの給水量は1.5リットルと厳密に決められている。ゼッケン番号の照合まではなかったが、スタッフがきっちり500mlずつ測って渡してくれる。

第二関門、月夜見第二駐車場の給水所

喉が渇いていたので、まず500mlのボトルにポカリを注いでもらって一気飲み。次にボトル2本にそれぞれ水とポカリを入れてもらい、1.5リットルのチャージを完了した。

バッグの中にはまだ1リットルの水が残っているので、ここでポカリ500mlは消費してしまうことにした。残り2リットルでゴールまで持たせる計算だ。甘いスポーツドリンクだけだとすぐ飲み干してしまうので、水も混ぜてもらって正解だった。

月夜見第二駐車場の休憩スペース

駐車場にはブルーシートが広げられ、休憩したり荷物を整理することができる。駐車場は広いため、第一関門・浅間峠ほどの混雑ではない。

ここで持参したおにぎりを補給。そこそこ疲れてきたが胃の調子はよく、まだ固形物も食べられる。後半戦にそなえて、消化できるうちにしっかりカロリーを摂取しておきたい。

小河内峠~御前山~大ダワ

第二関門、駐車場の脇から長い距離を下って、次の小河内峠へ向かう。試走で迷った途中の三分岐は、やはり中央の山頂行きが正解だった。生藤山や中山は巻き道でOKだったが、ここはきついルートを走らされるようだ。

御前山へ登る途中で雨脚が強まり、霧も濃くなってきた。このあたりは道が広いので、暗闇の中ひとりだと迷いそうで怖い。ライトも届かず視界が悪い中、滑落注意の危険地帯を慎重に通過する。

崖に注意して下ばかり見ていると、今度は上から襲ってくる木の枝や幹に頭をぶつける。集団の後ろの方にいると、前の人の動きでこうした障害物を察知できるのが便利だ。

ひたすら斜面を登って惣岳山を過ぎ、23時過ぎにようやく御前山に到着。

御前山、山頂の様子

山頂のスタッフが「このペースならサブ15は確実、サブ14も狙える。補給が十分ならサブ13もいけるかも」と励ましてくれた。事前に計算した予想タイムより1時間早く到達できたので、このまま完走できそうな自信がついてきた。

かさばらない和菓子・洋菓子・ジェル系で用意した補給食は十分に残っている。第二関門の給水所でもらったポカリ500mlは飲み干してしまったが、大岳山と御岳山の間に水場が設けられている。

御前山からかなり下って23:12に鋸山林道の大ダワに到着。ここには救護のテントが出ていて、休んでいる人も大勢いた。

鋸山林道、大ダワの救護所

ボトルに残った水を飲み干し、バックパックのハイドレーションから給水。まだ1リットル以上残っていたので、ゴールまで十分に足りた。

ハイドレーションパックから水の移し替え

水の移し替えで何度かこぼしてしまい、機材を濡らしてしまった。スタートから10時間も経つと、さすがに疲労がたまってくる。手元が怪しく判断力も鈍るので、レース終盤にはあまり複雑な作業をしない方がいい。

大岳山の岩場・鎖場

大ダワからハセツネ最後の難関、大岳山に向かう。途中でヘッドライトとハンドライトの電池が切れかけたので、落ち着いて交互に交換した。交換作業にライトは必須なので、複数持ち歩くのが前提だ。たまたま同時に切れてきたので少し焦った。

ライトの電池交換

大岳山の岩場に向けて、持参した軍手をスタンバイ。夜間の冷え込みで防寒にも役立つ。この先の下りで何度か転んだ際にも、軍手のおかげで手を擦りむかずに済んだ。ハセツネにグローブは必携だ。

軍手

馬頭刈尾根方向の分岐はテープで封鎖されていたので、迷うことはなかった。岩壁の前にテントが張ってあり、けが人救助のためにスタッフが控えているようだ。

大岳山の岩場は事前に練習しておいてよかった。夜間はどのみちヘッドライトで照らした手元しか見えないので、崖のような斜面もそれほど怖くは感じない。

大岳山の岩場を登る人

鎖場はみな用心して慎重に登っていく。渋滞で待ち時間はあったが、ここまで来ると行列は8人くらいなので時間のロスは少ない。大岳山の山頂にたどりつくと、少しだけ都心の夜景が見えた。

御岳山~日の出山~金毘羅尾根

山頂からの下りも急な岩場で、登りよりむしろ滑落の危険が大きい。慎重に下って大岳神社を通過し、さらに岩場を抜けて御岳山に向かう。

途中で神社の鈴を鳴らしてお参りする人もいた。コース前半の軍刀利神社も人気の参拝スポットだった。さすがにコースを外れて御岳山の神社までお参りする人はいない。

御岳山までは長い下りで、集団で走りながら雑談する余裕もあった。長尾平の第三関門をパスして休憩なしで御岳山に到達。お店は閉まっているが、参道で応援してくれる人がいた。

御岳山の商店街

御岳山では山門の脇にトイレがある。うっかり見逃してしまったが、日の出山に向かう途中にもあって助かった。ここは人もまばらでトイレ待ちの行列もできていない。

日の出山の公衆トイレ

日の出山の山頂に着いた時間はちょうど夜1時。スタッフの方に聞くとゴールまでの距離は残り11kmとのこと。あとはずっと下りなので何とか完走できそうだ。

雨上がりの日の出山は夜景がきれいだった。夜間で眺望がよいと、スカイツリーも見ることができる。

日の出山から見た夜景

もう体力温存する必要はないので、金毘羅尾根はライト全開、ダッシュで下った。林の中は道も広いので追い抜きやすい。ゴールまでの標高差700m、ときおり出てくる上り坂以外は、ほとんど走ったまま尾根を通過できた。

ハセツネのフィニッシュゲート

山道を抜けて道路に出てから、最後にスパートをかけた。

ゴール後の食事、体調チェック

ゴール後に完走賞のTシャツを受け取り、屋台でだんべぇ汁をごちそうになる。中身は細切れのすいとんが入った味噌汁で、久々に温かいものを食べられてうれしい。

ゴール後にもらえるだんべぇ汁

途中からシューズの裏に違和感があったが、よく見るとソールが壊れてパーツが一部はがれていた。

ソールが壊れたadizero XT5

2年前に買ったadizero XT5。グリップはまだ残っているが、そろそろ寿命かと思う。丹沢や奥多摩のトレラン練習や登山でも活躍したよいシューズだった。

レース後の体調を観察すると、足の裏が一か所すりむけていた以外は特に問題ない。途中で2回ほど派手にこけたが、さいわいけがはなかった。70kmも走ったわりには、足の疲れも少なく感じる。

トレランは上りと下りで使う筋肉を変えられて、途中の休憩回数も多い。道もふかふかで膝の負担が少ないのか、同じくらいの競技時間でも100kmのウルトラマラソンよりずっと楽だった。

そして翌日の筋肉痛は足よりむしろ首と肩に来た。2リットルの水や食料を背負って走ったためだろう。長時間のトレランレースでは、重いバッグに体を慣らしておいた方がいい。

始発までの過ごし方

「始発に間に合うくらいでゴールできればうれしい」という予定だったので、早めにフィニッシュして手持無沙汰になってしまった。会場に貼り出されたタイム速報を眺めるくらいしかすることがない。

ハセツネゴール付近の様子

このまま始発の5:22までじっとしていると、風邪を引きそうだ。無料で温泉行きバスも出ていたが、あいにく着替えを持ち合わせていない。さすがに暇なので外を歩いてみることにした。

武蔵五日市駅は改札のシャッターが降りていて、仮眠できそうなベンチもない。駅ナカのコンビニNewDaysは閉まっていたが、ロータリーの交番向かいにあるセブンイレブンは夜中3時でも開いていた。会場から少し遠いが、ここで時間を潰すのもありだろう。

始発までまだだいぶ時間があったので、なんとなくそのまま青梅線の拝島駅まで歩いてみた。

不思議なことに、こんな時間でもロードバイクに乗ってトレーニングしている人たちがいる。ゴールの時間が中途半端になることを考えると、自転車で会場まで自走してもよかったような気がした。

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