Apple製品に通じるLAMYのデザイン哲学。クリエイターにおすすめのペン

海外製高級筆記具の中でも、デザイン重視の独自路線を突き進むドイツのラミー。ゲルト・ミュラーのLAMY2000やcp1など、50年近く前に設計されたモデルを今でも売っている硬派なブランドだ。

仕事の道具としての文房具は、ロットリングやコピックなど専門特化された製品がそろっている。そんな中でも、手で絵を描かないデジタルネイティブなクリエイターが持っていてカッコいいと思うのがLAMYの筆記具だ。

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デザイン重視でも高すぎないブランド

国産筆記具に比べると割高だが、千円台の廉価帯から7万円の高級限定素材までラインナップは広い。パーカーやペリカンも安い価格のペンを出しているが、LAMYは最安1,500円のtipoやlogoですら、ありふれたボールペンとは違う独自性を感じさせる。

一言でいえばバウハウス流のストイックなミニマリズム。代表作の一つcp1を見れば明らかなように、円筒や直方体というプリミティブな幾何学的フォルムにこだわっている。

日本のメーカーなら、手触りがいいように金具のエッジを丸めてしまいそうだ。しかしLAMYのペンは潔く切り落とした直線カットで、必要最低限のアールしかつけられていない。深澤直人デザインのノトは、例外的におにぎり型三角断面でノック部分も±0の2.5Rっぽい形状だ。それ以外のモデルは基本的に「丸くて四角い」というイメージがある。

「海外製の筆記具を試してみたいが、モンブランはきざだし、ペリカンについて語れるほど万年筆に詳しくない。パーカーやクロスの英米産よりこだわりがありそうなドイツ~スイスのブランドで、壊れたり失くしたりしても後悔しない5千円くらいの手ごろなプロダクト…」

そういう微妙なニーズにマッチするのがLAMYだ。ハンズやロフトの文具コーナーで見かけるのでなじみがあり、地方のデパートでも購入できる。ブランドとしては、最近国内であまり見かけなくなってしまったLEXONと似たイメージがある。デザイン重視だが無印良品くらい気軽に買える感じだ。

ステッドラーよりドイツ的

同じドイツのブランドでも、ロットリングやステッドラーは鉛筆や製図用シャープペンシルが中心だ。デザイナーの道具という印象が強く、普通の事務作業で使って似合うのはアバンギャルドのマルチペンくらいだろう。

最近出てきたステッドラーのプレミアムラインは、高いのに万年筆のペン先が金でなかったりして中途半端に思われる。同軸に木材を使ったり装飾したりする趣向は、ブランドのイメージにまったく合わない。宝飾的な筆記具が欲しいなら、素直にカルティエ、デュポン、ダンヒルあたりの名が知られたブランド品を買う方がましだ。

堕落した(?)ステッドラーに比べて、あくまでデザインのセンスで勝負しようとするLAMY。2000のシリーズだけ限定品でボディーにセラミックや銘木を使っているが、フォルムはいじらないというのが過去のデザイナーへの配慮を感じさせる。

設計製図の実務で使えるほどの頑健性や信頼性はなさそうだが、オフィスワークには必要十分な品質をそなえている。海外企業との契約書やクレジットカードの決済でサインするときにも、LAMYのペンなら見た目も映える。

アップル製品に通じるミニマリズム

最近の新作、aionやscalaは特にミニマル指向なので、スティーブ・ジョブズ信奉者やアップル製品の愛好者なら、きっと気に入ってもらえるだろう。スタバでMacBookの隣に並べても様になりそうだ。

Kickstarterでたまに出てくる金属を削り出しのペンなども、見た目はLAMYに似ているものが多い。そのくらい「デザインのお手本」といえる要素がそなわっているので、長く使っていてこだわりのディティールを新しく発見することがある。

ツインペン、トライペン、4ペンと、マルチペンの種類も充実しているので、ギミック好きのエンジニアにも受けるはずだ。ステッドラーやロットリングのマルチペンはよく見かけるが、LAMYの複合筆記具は2000の4色油性ペン以外、他の人が使っているのを見たことがない。

メカっぽい感じを押し出さず、なるべく凹凸をなくしてシンプルに仕上げようとするからか、単機能モデルより複合ペンの方がかえって地味という状況だ。

リチャード・サッパーのダイアログ1

社外の打合せでよく見かけるのはサファリや2000だが、他人とかぶるのは嫌いなので持ったことがない。スクリブルはいつか欲しいと思っていたが、ペン先がブラックのモデルは販売終了してしまった。ピコはどこかに転がって失くしてしまい、今でも残っているのはスウィフトとティポだけだ。

もし予算があってリスペクトするデザイナーがいるなら、製品ラインナップの中でも垂涎の的、dialogシリーズもチェックしたい。自分が最初にこのブランドに興味を持ったのは、リチャート・サッパーがデザインしたdialog 1がきっかけだった。

かつてIBMのThinkpadをデザインした人として有名だが、イタリアのブリオンヴェガから出ている立方体型のテレビが大好きだ。一見、ディーター・ラムスのブラウン家電と似ているが、通気口やアンテナの配置がどことなくサイバーパンクである。これに影響されて、学生時代にiMac対抗のアクリル製モニタ一体型PCケースを自作したことがある。

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サッパーのダイアログ1は、アウロラから出ているマルコ・ザヌーゾのテッシーと似ているが、ボディーが艶消しシルバーのダイアログの方が好みだ。

使いやすいのかどうなのか不明だが、先端まですっきり三角形断面で両端が斜めにカットされている抽象的なフォルムは他に見たことがない。いかにも教科書的なバウハウス様式とは一線を画して、イタリアンデザインの艶めかしさも取り入れたような野心作に思われる。

フランコ・クリヴィオのダイアログ3

LAMYのダイアログシリーズでは、フランコ・クリヴィオの3も気になる一本だ。キャップレスの万年筆といえば、PILOTの製品が有名だろう。このタイプは真っ先に「持ち手のクリップが邪魔になる」と連想されるのだが、そこはスウィフトを開発したLAMY。筆記時は胴軸にクリップが埋まって一体化する仕組みになっている。

パイロットのキャップレスシリーズはさらに「万年筆なのにノック式」という驚きの仕組みだが、残念ながら見た目はLAMYほど洗練されていない。ノック式の機構以外にインパクトはないが、胴軸中間部の出っ張りや頂部が丸っこいのは手に馴染みそうだ。個人的にMacBookのパームレストは見た目重視のエッジが鋭すぎて手が痛い。Caplessは案外ユーザビリティーに配慮したバランスのいい製品なのかもしれない。

パイロット製で唯一、最近出たマットブラックのFC-18SRには食指が動く。ペン先18Kで一万円強という販売価格も魅力的だ。愛用のエクリドール万年筆は、値段のわりにペン先はスチールなので、一度金素材の書き心地を試してみたい気もしている。

ダイアログシリーズは価格もスペシャルなので、たまにネットでレビューを見て目の保養にする程度だ。もはや発明され尽くしたと思われる筆記具業界において、次はどんなデザイナーが新機軸を打ち出してくるのか、楽しみである。

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