OGKエアロヘルメット付属シールド。普段使いの利点を見直す

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約1年ぶりにロードバイクに乗り始めて、最初に気づいたのはサングラスの違和感。経年変化でフレームやレンズが変形したせいか、妙に視界が歪んで見える。

代りにOGKのエアロヘルメットに付いてきたシールドを装着したら、思いのほか快適で驚いた。

見た目が異様なのでレース専用と割り切っていたが、普段の練習でも十分に使える。むしろ並みのスポーツ用サングラスより性能が高い。

AERO-R1初期装備のAR-3シールドについて、手持ちのアイウェアと比較した感想、およびOGKの新製品・交換パーツについて検討してみたい。

普段の練習でシールドを使う案

真夏の炎天下や西日に向かって走るのでなければ、自転車用のサングラスはクリアレンズで十分な気がする。

紫外線さえカットしてくれれば、まぶしいのは何とか我慢できる。別でつば付きのキャップをかぶれば、直射日光をさえぎることもできる。

そう考えるとOGKのAERO-R1に付いてきたシールドはどうなのだろう。練習ではまったく活用していなかったが、これを取り付ければサングラスの代りになるのではなかろうか。

OGKのAERO-R1

空力効果がアップするのは当然として、自転車専用品なのでブルーライト用のPCメガネより使い勝手はよさそう。レンズが傷んだ手持ちのオークリーより性能も高そうだ。

もっぱらレース用として使っていたAR-3シールドを、試しにサイクリングロードの練習で使ってみた。感想をまとめてみたい。

エアロシールドの利点と欠点

エアロヘルメットに交換して実感したシールドの特徴は以下のとおり。

シールドのメリット

  • 視野が広い、フレームで遮られない
  • レンズの歪みが少ない
  • 眼鏡の上からかけられる
  • 鼻と耳が疲れない
  • 日焼けしない、パンダにならない
  • 空気抵抗が少ない、首が疲れない
  • 羽虫が目に入ってこない

シールドのデメリット

  • サングラスより着脱が面倒
  • 汗をぬぐいにくい
  • 見た目がやや恥ずかしい
  • シールド単体で利用できない

ロードバイク専用のアイウェアとして考えた場合、ヘルメット付属バイザーの効果は最大級。サングラスより基本性能が高く、汗をかかない秋冬のライドには最適だ。

しかし観光やグルメを楽しみながらのポタリング、街乗りにはオーバースペックで取り扱いが不便。頻繁に着脱するシチュエーションに、シールドは向いていない。

またランニング・ゴルフなど他のスポーツで使いまわすことができない。

空気抵抗が少ないのでトライアスリートに向いている装備だが、ランと兼用するなら普通のサングラスを買った方が安上がりだ。自分もそう考えて、最初の製品はオークリーのFlack Jacketを選んだ。

普通のサングラスと比べたシールドの利点と欠点について、それぞれ詳しく考察してみたい。

フレームレスで視野が広い

エアロヘルメットに付属するシールドは、どんなサングラスよりも視界が広い。

目の前に余計なフレーム部材が一切なく、メガネをかけているという感覚すらない。フレームレスでシングルレンズのアイウェアよりも、解放感は大きい。

OGKのAERO-R1のシールド

レースや練習で心拍数を追い込むと、意識がもうろうとして注意散漫になるリスクがある。ロングライドをこなして疲れているときも、無意識に注意力が落ちてしまう。

そういうときにサングラスのフレームで視界に死角があると、信号の確認が遅れたり路上の障害物を見落としたりして事故のリスクが増える。

OGK AR-3の視界シミュレーション

最大限の視野を確保するシールドは、トラブル防止の面で安全性が高い。これはアイウェアの基本性能としてもっとも大事な部分。

パーツの継ぎ目がない=空気抵抗が少ない、と思われがちだが、視界がさえぎられない副次的効果もメリットが大きい。

レンズ・視界の歪みは少ない

気になる視界の歪みについては、AR-3シールドでもわずかに観察された。ヘルメットをかぶる際に、バイザーのきわで外界の景色が少しずれる。

下の写真でレンズの両端付近が大きく歪んでいるのがわかる。実際にかぶると目の位置が近くなるのでこれほど変形することはないが、まったく違和感がないといえばウソになる。

OGKのAERO-R1シールドの歪み

着脱時に少しクラッとするが、手持ちのオークリーよりは歪み方が軽い。いったん装着すれば目の前すべてをシールドが覆うため、体はすぐに順応できる。

5時間ほどバイザーをつけてサイクリングロードを走っても、気分が悪くなるほどではなかった。これだけ広い面積をカバーしているアイウェアとして、歪みの少なさは優秀な方でないかと思う。

眼鏡の上からかけられる合理性

自分は普段メガネをかけないが、視力の矯正に欠かせない人はシールドと併用することもできる。

アタッチメントにAERO-R1付属のフロントスペーサーを付ければ、眼鏡との隙間も広がる。よほど大きな眼鏡でなければ、たいていの製品は併用可能だろう。

度付きのサングラスをあつらえる必要がないので、自転車に乗るときはシールド付きヘルメットをかぶった方が経済的かもしれない。

通常のグラスに加えて紫外線カットや防風効果をプラスしたうえ空力性能もアップ。これで眼鏡関連の悩みが一気に解決できる可能性もある。

鼻と耳、顔に負担がかからない

普通のサングラスは耳と鼻で支持するかたちになるので、長時間着けていると顔が痛くなることもある。

万が一自転車で事故に遭った際に、ノーズパッドが食い込んで顔をケガすることもある。フレームで耳のまわりを押さえつける感覚も人によって好みがわかれる。

適度に締め付けられた方がライド中の安定感は増す。しかし自転車に乗っている間、顔のまわりはそこまで衝撃や振動が加わることはない。

顔面に余計な負担をかけないという意味では、ヘルメットに装着するバイザーの方が気楽だ。顔に触れるパーツが一切ないため、メガネの存在自体を意識せずに済む。

シールドの荷重は頭部全体で支えることになり、鼻や耳にピンポイントで負荷がかかる懸念はない。

リラックスしたかけ心地を求めるなら、軽量タイプのサングラスよりエアロシールドの方が解放感は上だ。

目のまわりの日焼けを防ぐ最終兵器

初期装備のAR-3シールドは可視光線透過率65%のライトスモーク。

見た目はほぼ透明なのだが、バイザーを付けると視界がほんの少し薄暗くなる気がする。体感的にはわずかな差なので、夜間にかぶっても問題ないと思う。

OGK Kabuto AR-3シールド

そして紫外線カット率も99%以上で、他社のクリアレンズやPCメガネと同じ水準。普通のサングラスより顔の上部を覆う面積が広いので、日焼け防止の効果は高い。

実際にサイクリングロードを5時間走っても、シールドで覆われた顔面はほとんど日焼けしなかった。少なくともSPF50の日焼け止めクリームを塗った、口のまわりやアゴと同じくらいの焼け方に見える。

シールドを使えばサングラスの部分だけ日焼けをまぬがれ、パンダ状態になるのを避けられる。

目のまわりに日焼け止めを塗るのは気が進まないので、薬品なしで部分焼けの悩みを解決できるのはありがたい。

空気抵抗が低いと首が疲れない

自転車はスピードが増すほど重量より風の抵抗がネックになる。

前方投影面積の中で顔の範囲は狭い部分だが、頭に加わる荷重は首で支えることになる。エアロヘルメットの特徴は空気抵抗を減らせることだが、「首の負担が減る」という点でも恩恵を受けられる。

AERO-R1のシールドはヘルメット前部にマグネット3か所で固定する。隙間や段差はほとんどないので、コンセプトどおり空気抵抗の低減効果は高いはず。

R1は見た目が自然なショートテールでも、ヘルメット後部の乱流発生を防止する特許機能(ウェイクスタビライザー)が付いている。

実際に練習やレースでかぶってみても、高速域になるほど空力効果を実感することができた。これはエアロバーを使い始めたときと同じ感覚だ。体感的には時速40キロ近くで普段より2~3km/hアップする。

ヘルメット自体が軽いのと、頭部に加わる空気抵抗が下がるせいか、長時間かぶっていても首が疲れない。シールドを付けると前面から受ける風の抵抗が減るため、さらにストレスが緩和される。

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頚椎のヘルニアや神経根症、腕のしびれで悩んでいる人は、サングラスからシールドに付け替えると多少ましになるかもしれない。

河岸での対羽虫性能MAX

シールドとヘルメットの間に隙間がないおかげで、サイクリングロードの天敵、羽虫が入ってこないという利点もある。

春先の河川敷を自転車で走るのは気分がよいが、路上にはおそろしい数の羽虫が群れをなしている。夕暮れ時に密集地帯に突入すると、まるで羽虫のシャワーを浴びるような状態になる。

多摩川サイクリングロード

羽虫の密度が高すぎると、普通のサングラスでも顔との隙間から侵入してきて目つぶしを食らう。片目ならともかく、両目や口鼻同時にやられると大事故にいたる恐れすらある。

メガネにマスク、フェイスカバーというのは、日焼け止めだけではなく羽虫対策としても必須の装備。ここでサングラスを全面カバーのシールドに換えれば万全だ。

3月の多摩川サイクリングロードもそれなりに羽虫が湧いていたが、AR-3のおかげで目のまわりの不快感は皆無だった。河原をよく走る人は、羽虫避けのためだけにでもシールド導入を検討する価値がある。

磁石式で着脱が面倒

サングラスに比べたシールドのデメリットとしては、まず着脱が面倒な点が挙げられる。

ヘルメットの設けられた3つのマグネットは、かぶった状態で位置がわかりにくい。そのため、バイザーを着脱する際は手探りで試行錯誤を繰り返すことになる。

位置が悪いとなかなかくっつかず、走行中にずれてくることもある。うっかり地面に落として傷をつけたり、自分で踏んで割ったりしてしまうと悲劇だ。

休憩中やお店に入るときにサッと外せる点では、サングラスの方が利便性は高い。構造上ヘルメットと一体化していないので、ランニングや他の用途にも使いまわせる。

峠のヒルクライムでは速度が下がり汗もかくので、日差しが弱ければサングラスは外したくなる。特にエアロヘルメットはスピードが落ちて通気がなくなると急激に暑苦しくなる。

走行中、簡単に着脱できるのもメガネのメリット。シールドも上下反転させてヘルメットに固定することはできるが、走りながら作業するのは至難の業だ。

顔の汗をぬぐいにくい

シールドと顔の間に若干隙間はあるが、ハンカチを差し込んで汗をぬぐえるほど広くはない。

サングラスならいったん外して顔を洗ったり汗を拭いたりできる。しかしシールドの場合はマグネットに付け直すのが面倒なので、頻繁に外すのは気が進まない。

バイザーだけ外すより、あごひもを緩めてヘルメットごと外す方がまだ楽ともいえる。

OGKのAERO-R1

AERO-R1は普通のヘルメットより通気性が劣るので、夏場は余計に汗をかく。信号待ちなどで停止してエアフローが途絶えると、一気に頭の温度が上昇して汗が噴き出してくる。

汗をかきやすい仕組みなのに、シールドのせいで汗を拭きにくいのがエアロヘルメットの難点だ。

秋冬の涼しい季節は問題ないが、夏場の蒸れはかなり気になる。最悪、目に汗が入ってしまうと走行中の安全性にも関わる。

汗っかきな体質の人は、避けた方がいい製品かもしれない。

見た目は気にならなくなってきた

シールド付きのヘルメットは、見た目が恥ずかしいというのも欠点のひとつだ。特に色付きのシールドだと、ガッチャマンのように見えてしまう。

OGK Kabutoのエアロヘルメット

しかしエアロヘルメット特有の気恥ずかしさというのは、どちらかというとテールの長さに由来しているように思う。いわゆるティアドロップ型という後部が伸びた形状だと、明らかに異様なエイリアンに見えてしまう。

近年はショートタイプのセミエアロヘルメットが普及したせいか、街中でロングノーズを見る機会は減った。平地のサイクリングロードを走っていて、すれ違うこともめったにない。

趣味でタイムトライアルをやっている人は少ないと思うので、ほとんどはトライアスリートだろう。今でもレースに行くと、ごついヘルメットをかぶっている人をたまに見かける。

テール形状に比べれば、シールドの有無というのはたいして気にならない違いだ。特にミラー仕様でないAR-3のような透明タイプだと、普通のサングラスより地味に見えないこともない。

GIROやOGKがシールド付きの製品を普及させてくれたおかげか、たまに同じタイプのヘルメットをかぶっている人を見る。サングラスよりシールドを使う人が相対的に増えたので、街でかぶっていてもあまり恥ずかしくなくなってきた。

OGKのシールド対応新製品

久々にOGKのウェブサイトを見ると、AERO-R1以外にもシールド装着可能な製品が増えていた。

オーバーシェル付きAERO-R1 CV

既存のR1に「オーバーシェル」という頭部カバーが付いた新製品AERO-R1 CV。

2020年春に発売予定なので、今から買うならこちらを選んだ方がバリエーションを楽しめそうだ。シェルを外せば通常のAERO-R1と変わらなくなる。

CVタイプはポリカーボネイトのパネルでエアロ性能をさらにアップできるという、ニッチなアイテム。R1と同じく、マグネットバックルのTR版も販売されるらしい。

新しい仕組みだが、どうせならR1でない軽量ヘルメットと組み合わせてほしかった。

夏場やヒルクライムでは通気性の高い軽量仕様、秋冬・平地走行ではパネル着用と選択できれば、使える場面が広がる。

もともとエアロなR1の穴をパネルでふさいでも、一般ユーザーにとってはそこまで違いがないように思う。AERO-R1 CVは単純にR1の改良版・後継製品とみなしてよさそうだ。

シールド着用できる格安VITT

その点ではノーマルタイプのヘルメットにシールドが標準装備されたVITT(ヴィット)という製品が気になる。定価も13,000円で、AERO-R1に比べるとずいぶん安い。

シルエットが小さめのコンパクト設計なので、キノコ頭になりにくい。重量はS/Mサイズで245グラムあるため、そこまで軽くはないエントリーグレードの製品だ。

同じサイズならAERO R1の方が205グラムとだいぶ軽量化される。値段は上がるが、Kabuto史上最軽量とうたわれるFLAIR(フレアー)ならたったの170グラム。このあたりは価格相応のスペックに感じられる。

(※以上の重量比較はシールド未装着の状態)

見た目は普通のヘルメットながら、エアロ用のシールドが付けられるというアイデアがおもしろい。シールドのメリットは上で述べたとおりなので、トライアスリートやTT志向でなくても試す意味はある。

ロード初心者がヘルメットとサングラスのセットを最も安くそろえるなら、VITTが最適ではないだろうか。初期装備のシールドはR1と同じAR-3なので、並みのサングラスより性能は高い。

ARS-3シールドのニューカラー

AERO-R1やVITTに対応したシールドのオプション、型番ARS-3もバリエーションが増えていた。

クリア/スモークより1,000円アップで、ゴールド/シルバーのミラー仕様が手に入る。さらに定価10,000円で調光機能の付いたクリアタイプもラインナップに追加された。

ARS-3は特殊曲げ製法(28グラム)、AR-3はインジェクション製法(42グラム)という違いにより、シールド単体で16グラム軽量化されている。

ヘルメットと同じく首にかかる負荷なので、少しでも軽い方がライド中のストレスは減らせる。ただしARSの中でも調光モデルだけは28グラムと重量がややアップする。

画期的なクリア調光シールド

新製品の中では値は張るが、やはりクリア調光のシールドが興味深い。

一般的なサングラスの利点はレンズ交換で偏向・調光、各種のカラー・濃度を選べる点。エアロ用のシールドにも追加機能が増えるのはうれしい傾向だ。

ただし価格は1万円するので、安いものなら他社の調光サングラスが単体で買えるレベル。

自転車専用で快適さを優先するか、ほかのシーンでも使いまわせる汎用性を重視するかが悩ましい。また調光レンズは気温や経年変化で性能が劣化するデメリットもある。

ミラー仕様はレンズの面積が広い分、普通のサングラスより迫力が増すだろう。コスプレ感をおそれず派手さを重視する人には向いているといえる。

AERO-R1の改良案

ARS-3のニューカラーや、シールド対応ヘルメットが増えているということは、AERO-R1がそこそこ売れたのだろう。

確かに1年半使ってみて、軽さと空力性能のバランスがちょうどいいと感じる製品だった。その前に使っていたヘルメットはOGK KABUTOの格安品だったので、明らかに首の負担が軽くなるのを実感できた。

これから発売されるAERO-R1 CV用のオーバーシェルは、既存のR1に後付けできるのだろうか。見た感じ構造は一緒に見えるので、シールドのように互換性があるならラッキーだ。

空気抵抗はさらに少なくなる代わりに、シェルの分、重量はアップしてしまう。トライアスロンレース用の本気装備になりそうだが、気が向いたらOGKに問い合わせて購入検討してみたい。

オーバーシェルの定価は3,800円なので、ARS-3のシールドより安価に導入できる。クリア調光のシールド交換も含めて、AERO-R1のグレードアップを考えるのが楽しみだ。