ゴルゴ13がアサルトライフルM16を使い続ける理由~BF3で検証

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近所の図書館には、なぜかマンガが充実している。昔から図書館にあるマンガといえば、手塚治虫や三国志くらいだったが、ここはワンピースにナルトなど普通に最近のマンガが置いてある。

図書館にあるマンガは「労働」がテーマ

一応、大人向けと子供向けのコーナーに分かれており、子供向けにはワンピースの隣になぜか漂流教室がさりげなくセットされている。はだしのゲン以上に残虐表現がトラウマものの有害図書だと思うのだが、図書館司書のいたずらだろうか。

一方、大人用には「Dr.コトー診療所」とか「岳」が全巻そろっている。安野モヨコの「働きマン」も置いてあって気づいたのだが、どうやら「まじめに働く」というテーマの漫画が意図的に選ばれているようだ。資格や就職の本も多いので、やはり公営図書館はハローワークへの出頭を促す更生施設なのだろう。

推薦図書は必殺仕事人「ゴルゴ13」

そんな中で、大人向け漫画コーナーの最も多くの部分を占めるのは、日本が世界に誇る仕事人「ゴルゴ13」である。100巻を超える単行本が漏れなく揃っているのは、そのあたりの漫画喫茶風の飲食店やスーパー銭湯より、よっぽどすごい。これだけのスペースと予算があれば、もっといろいろなマンガを置きたくなるものだ。

勧善懲悪、信賞必罰…ゴルゴ13のストーリーはシンプルだ。政治的・経済的な様々なトラブルを穏便に処理するためゴルゴが招へいされ、ピンチに陥りながらも超人的な身体能力で切り抜ける。たいていは依頼人がゴルゴを裏切り、「失敗した」と気づいた瞬間に報復で脳天を撃ち抜かれる結末だ。

ゴルゴ自身の職業は殺し屋なので、市の推薦図書として適切かどうかは疑わしいが、忠臣蔵というテロリズムが美談になる国だから問題ないのだろう。ヤクザとスパイは全世界共通の娯楽コンテンツ。いつかゴルゴ vs 007というようなエイリアン vs プレデターのような頂上対決を見てみたい。

学生時代、アルバイトをしていた飲食店の板前さんがゴルゴフリークだった。「大学の勉強よりゴルゴを読め」といわれ、数十冊下宿に預かってひと夏を棒に振ったことがなつかしい。冷戦や内戦など時事的な世界情勢が背景になっているので、多少は歴史の勉強になったかもしれない。無口で考えていることはよくわからないが、寡黙にミッションをこなすゴルゴから武士道を学んだ気もする。

兵器マニアにおすすめのゴルゴ149巻

21世紀になってもゴルゴの新刊が出ているようで、気になるタイトルのものを1冊手に取ってみた。149巻「激突!AK-100 vs M-16」だ。

(以下ネタバレ)

あらすじとしては、ロシアの兵器開発局がアサルトライフルの新製品AK-100のプロモーションのため、ゴルゴを血祭りにあげようと策を弄するところから始まる。ゴルゴが愛用する銃は米国製M-16であることが世界中に知られており、その評判のために競合製品のAKシリーズが売れないというのだ。

「こんなことができるのは世界中でただ一人…」と、裏の世界では有名人のゴルゴだが、銃器の宣伝にも役立っている。ロシア軍のAK-100がゴルゴを葬るのか、それともゴルゴのM-16が勝利するのか。兵器市場の命運が分かれる関ケ原という感じで、決戦の舞台アラル海にNATO首脳陣や、AK-47の生みの親カラシニコフが集結するくだりが場面を盛り上げる。

砂嵐と塩害によるM-16の故障を狙ったロシア軍だが、車のタイヤから圧縮空気を取り出したゴルゴの機転により全滅させられる。さらにダメ押しでカラシニコフがゴルゴに銃を向け、「M-16を使う訳を教えてくれ」と迫るが、無言で瞬殺される。ここであえてM-16を使わずナイフでとどめを刺すという演出が憎らしい。

死に際のカラシニコフに対して一言、ゴルゴがついに口を開く。

俺は…“一人の軍隊”だ

常に無口なゴルゴの中でも、一二を争う名ゼリフかもしれない。

ゴルゴがM-16を愛する理由

その後、関係者のセリフから種明かしがなされる。作中M-16は軽量で高性能な代わりにクリーニングに手間がかかる欠点があり、土壇場の戦況ではメンテナンスフリーのAKに軍配が上がるというエピソードがはさまれる。AKはまるで1年放置してもインクが乾かない、スリップシール機構をそなえたプラチナ万年筆のようなものであるらしい。

しかし、ゴルゴは熟練のテクニックで、どんな状況でもM-16を完璧にメンテナンスできる。技術で欠点をカバーできれば、遠方射撃のスナイパーライフルと接近戦のアサルトライフルを両方兼ねられて、機動性が高いM-16がAKに勝る。銃のサイズがゴルゴの体格に合っているともいわれる。

「一人の軍隊」すなわち補給も兵站も単独でこなさなければならないミニマリストのゴルゴにとっては、マルチツール的なM-16がふさわしいという結論だ。

BF3でゴルゴ的M16をカスタムしてみる

ほかの作品では1,000m近い距離から射撃を成功させるゴルゴ13。スコープなどの各種備品は特注品らしいが、お得意のBattle Field3で同じことが再現できないか試してみた。

BF3に出てくるアメリカ軍の標準装備は、改良版のM16A3だ。似たような3点バーストのM16A4も使える。

300時間もプレイしているので、さすがにオプションはすべてアンロックしている。ゴルゴ仕様にアクセサリーをカスタムするなら、倍率6倍のライフルスコープにヘビーバレルというところだろうか。ゴルゴには不要だろうが、遠隔射撃に自信がないのでフォアグリップよりバイポッドを装備しておく。

昼下がりから盛り上がっている香港のマルチプレーヤーサーバーにログイン。マップは定番のメトロだが、すでに味方陣営はどん詰まりの膠着状態に陥っていた。

M16A3で遠隔射撃というのは慣れないが、物陰から構えて辛抱強く狙っていたら敵をキルできた。ボルトアクションの標準的なスナイパーライフルに比べれば威力は劣るが、一発ごとにコッキングの必要がなく連射可能なので、自分のように下手くそにはちょうどよいかもしれない。もちろん本来のアサルトライフルとしても、フルオートの接近戦では有効に使いまわせる。

マップによって突撃兵と偵察兵でメインウェポンを使い分ければよいと思うが、KDレートが高く滅多に死なないベテランなら、遠近使いまわせる武器が便利だろう。M16にライフルスコープを付けるゴルゴ仕様は、明らかに上級者向けだ。

図書館に勉強しに行こうとした矢先、思わずゴルゴを手に取ったせいで、家に帰って不毛なオンライゲームにはまってしまった。ゴルゴの働きぶりからプロ意識を学んで勤労意欲が高まるかどうかというと、疑わしいものだ。