財布と手帳を合体させたい病~アシュフォードMICRO5レビュー

ミニマリストがよくわずらう病気で、「財布と手帳を一体化して持ち歩きたい」というのがある。財布も手帳も可能な限りコンパクトサイズに縮小したら、今度は両者を統合できないかと悩むのだ。

ミニ財布にカードサイズダイアリーを差し込み、付箋でメモスペースを確保するやり方で1年通してきた。見た目はカジュアルだが十分実用的で、これはひとつの完成形だったと考えている。

新しくエルメスの手帳カバーを入手して、何とか財布も挟み込めないかと考えた。市販品から自作までいろいろ試して検討したが、「この手帳に無駄なリフィルは似合わない」という結論に達した。

かつて、アシュフォードの財布機能付きミニ5穴手帳を試したことがある。購入したときは、ついに理想の製品にたどり着いたと思った。しかし実際に使ってみるといろんなデメリットに気づいて、1か月も経たずにお蔵入りさせてしまった。

そのときの反省をもとに、なぜ手帳と財布の融合がうまくいかなかったのか理由を考えてみようと思う。実際に試して不便さに気づけば、ツール融合化の病もおさまる。

理想の財布一体型手帳

数年前に購入したアシュフォードの財布一体型手帳は、「オイルソフトレザー」という没個性な商品名だった。同社おなじみのMICRP5規格で、リング径は11mm。すでに販売中止されているが、現行品ではトゥジュールという製品に引き継がれている。

当時は定価8,000円で、ミニ5穴のシステム手帳としては高価な部類だった。その名の通りオイルがしっかり染み込んだ牛革で耐久性は文句なさそう。ただし、ステッチが水色で目立つのは気に入らなかった。

開いて左にマチ付きの大きなポケット。右側にペンホルダーとカード入れ及びあおりポケット。ここまでの構成は他の製品とたいして変わらない。

特徴的なのは、背面にお札の入る長いポケットと、ジッパー付きのコインケースが合体している点だ。小銭入れはL字型にマチも設けられており、収納量はかなりある。外から見ればまぎれもなく二つ折りの小型財布。しかし中を開ければシステム手帳が出てくるという、二面性を持ったアイデア商品だった。

手帳部分のリング径が11mmあるので、リフィルもかなりセットできる。カバーのポケットに収まらないカードや小物類は、別途ビニール製のポケットリフィルに入れて持ち運ぶことも可能だ。

さらに欲張れば、左のポケットに名刺も数枚収納できる。ビジネスマン必携の財布・手帳・名刺入れが合体した、究極のアイテムといえる。ミニマリストならずとも、このデザインにそそられるユーザー層は多いだろう。大ヒットしてもおかしくない商品なのに、なぜそれほど流行らかなかったのか。

すべて詰め込むと分厚くなりすぎる

手帳の収納力は問題ないが、実際に中身を詰め込んでみると相当厚みが出る。面積的にはミニ5穴サイズだが、厚みが3cmともなると、さすがにズボンのお尻ポケットにも収まりにくい。スーツの内ポケットに入れたら、すぐに型が崩れて傷んでしまいそうだ。

それまで使っていたKNOXのミニ5穴がリング径8mmだったので、余計にぶ厚く感じてしまう。持ち運ぶ紙幣やカード類はそこまで減らせないので、手帳と財布の2つに分けた方がポケットには入れやすいと感じた。

もしこれがポケット用でなく、バッグに入れて運ぶことを前提としたオーガナイザーなら、十分いけるだろう。お金も小物もポーチはひとつに統合した方が混乱を防げる。

しかし、あくまでミニ5穴サイズで手ぶら利用を前提とした場合、機能を統合して極度にぶ厚くなるのはデメリットだと感じた。パスポートサイズくらいまで拡大して、厚みを減らした方がまだましに思う。

カード類が取り出しにくい

システム手帳のリフィルにカードや小銭を入れると、案外取り出すのに時間がかかる。たいていの安物リフィルは、小物入れのジッパーがプラスチック製で、カード入れも抜け落ちないようきつめに設計されているからだ。スーパーのレジで手帳を開いてごそごそ中身を探すと、まわりの視線が冷たく感じる。

アシュフォードの一体型製品でも、似たような問題があった。使用頻度の低いポイントカード系をリフィル側に退避させていると、とっさの時にスムーズに取り出せない。そもそも年に数回しか使わないカードなら普段持ち歩かないから、手帳に挟むということはそれなりに出番があるということだ。

開いて右側、3枚分のカードホルダーも、縦型なので抜き差しするのに時間がかかる。左のポケットは収納量が多いが、ガバガバすぎて中のカードが飛び出してくる問題がある。スーパーのレジで手帳を開くと、何度かカード類が床に散らばってしまい恥ずかしい思いをした。

人に見られると恥ずかしい

思い込みや個人差もあると思うが、変わった財布を使っているとお会計の際に恥ずかしいと感じる。少なくとも、手帳のついた財布というのは人目を引く。街中のどうでもいい場面で、下手に注目を集めたくない。店員さんにも覚えられることなく、ひっそりと暮らしたい願望がある。

お金を渡そうとして、手帳のスケジュールやメモ欄がうっかり見えてしまうのも難点だ。手帳と財布が合体して便利な点もあるが、社会的なマナーや世間体としてはいまいちに感じた。

「人と同じものは持ちたくないが、変わった人とも思われたくない」…そういうややこしい心理も影響している。たとえば服のポケットに財布が縫い付けてあって、そこからお金を取り出すのは変な人だと思う。

FINAL HOMEくらいのアート作品ならありだが、日常的に身にまとうのは勇気がいる。芸大生とかファッション系の専門学校生ならまだ許せるが、アバンギャルドなおっさんは町内の危険人物。通報されるおそれがある。

最近流行のミニ財布はOKだが、手帳付きの財布はぎりぎり非常識でアウト。世間でいわれる「冠婚葬祭は2針の薄型ドレスウォッチ」の言説と同じくらい曖昧な基準だが、そんな感じがした。

多機能ツールのジレンマ

コンビニや大手のスーパーでは、ほとんど現金を出さなくても電子マネーでスマホやカードから決済できるようになった。しかし、旅先や公共施設で現金しか受け付けてくれないところはまだ多くある。

とっさに紙幣や硬貨を取り出す場合は、やはり専用特化した財布の方がスムーズだ。手帳と合体させるとしても、財布をベースにミニ手帳やミニノートを組み合わせる方が無難だと思う。

アーミーナイフや十徳ナイフのようなマルチツールより、ドライバーや缶切り単体の方が使いやすいのと同じだ。やはり専用の道具というのは、その用途に最適化してつくり込まれている。

また、実際の作業では、左手にペンチをもって引っ張りつつ、右手でネジを締めるというような場面も出てくる。こういう複合的・イレギュラーな用途において、分解できない多機能ツールはたいてい不便だ。例えばスマホケースと手帳を兼ねていて、「電話しながらメモを取れない」というジレンマも遭遇したこともある。

各種の道具を一体化すれば持ち運びの手間は減るが、あくまでサバイバル目的の非常用ツールという意味あいが強い。アシュフォードの財布手帳は、防災グッズの中にでも入れておけばいいだろう。あるいは海外旅行時の現地通貨用財布など、サブ用途としては便利かもしれない。