ポルシェデザイン&IWC、80年代のチタン製時計Ultra Sportivo

記事内に広告が含まれています。

以前ヤフオクで買って愛用していたが、落として失くしてしまった腕時計。型番など詳しいことはわからないが、2000年代初頭に中古3万円くらいで購入できたと思う。価格はまちまちだが、今でもヤフオクでPORSCHE DESIGNとIWCのコラボモデルは出品されている。

IWC・ポルシェ共作のチタン時計

両社が提携してチタン製の時計をつくっていた1980~1990年代は名作が多い。文字盤を開けると方位磁石が出てくるコンパスウォッチや、2,000m防水の機械式時計OCEAN 2000は有名である。他にも、今回紹介するウルトラ・スポルティボのクロノグラフやムーンフェイズ付き、K18YG素材違いなど無数のバリエーションが存在する。

いずれもPVD加工されたオールブラックの渋いモデルがある。文字盤のデザインはブラウンを彷彿させるようなシンプルな構成で、白黒の針は視認性も高い。秒針の先端が赤く塗らえていたりするのが、ちょっとだけスポーツカーのブランドらしい。ケースの直径も総じて34mm程度に抑えられているので、腕が細くても似合う。サイズ重視で海外メーカーの機械式時計を選ぶなら、前世紀の中古品を求めるしかないだろう。

ハイスペックなオーシャン2000だけは42mmも直径があるが、500m防水のオーシャン500なら34mmで済む。ムーブメントはIWCやETAの汎用モデルなので、今でも修理は可能だろう。

80年代の復刻クォーツ時計が熱い

最近、ソニーの平井元社長が雑誌や新聞のインタビューでセイコー・ジウジアーロの時計をよく紹介している。文字盤が傾いた独特な見た目で、再販もされているので知名度は高い。あえて国産品から80年代のグッドデザインを選ぶのはセンスがいいなと思う。

復刻版もカラーごとに数量限定なので、長く持っていればカシオ・データバンクのように高値で売れそうだ。デカ厚時計のブームが一巡したら、コンパクトなアンティーク時計が見直されるときが来るかもしれない。

ミニマムデザインのUltra Sportivo

自分が手に入れたモデルは、ケース外周に5分置きのドットが彫られているだけで、文字盤には3、9、12時の印しかない。短針・長針と3点には夜光塗料が塗られていて、暗闇でだいたいの時間は把握できる。

文字盤の情報を減らせばシンプルになるが、MOVADOのミュージアム・ウォッチまで行くと実用性に欠ける。ミニマリズムと機能性のぎりぎりのバランスを狙ったところが、この時計の魅力だ。

「PORSCHE DESIGN Ultra Sportivo」と画像検索をかければ、かつて存在したバリエーションがわかる。このデザインでケースがゴールドのコンビというのは解せないが、人気がないので安く入手できそうだ。オーシャンと似た端正なインデックス表示、ベルトがチタンのモデルもシンプルでよいが、LEXONやMONDAINEの安い時計とあまり差がない。

相場価格ではポルシェにIWCの名前も併記されているものはやや高く、ムーンフェイズが付いたモデルはプレミア級だ。各種見比べても、やはりpdのロゴと、デイト表示の下にPORSCHE DESIGNと控え目に印字されたこのモデルが一番シンプルに思う。筆記体で「International Watch Co」あるいは「by IWC」と入っていれば自慢できるかもしれないが、機能上は必要でない。

自分で切って調整するゴムベルト

ベルトはデスモパン(デモスパン?)という謎の工業素材が使われている。熱可塑性ポリウレタンの一種で、車のパーツに使われていたりするようだ。耐久性の高そうなゴム素材で、腕に巻いても特に違和感はなかった。ベルトの長さ調整をするのにハサミで切らないといけないのと、内側の蛇腹状の溝に皮膚の垢が溜まるのはいただけない。

クォーツの薄型ケースはチタン、ベルトもゴム製で、恐ろしく軽い。風防は平滑でケース外周のエッジが立っているのはLAMYの筆記具のようだ。人間工学より幾何学的な単純さを優先するデザインがドイツっぽい。一方でOCEANのケースやベルトは肌触り滑らかで、水中の極限状況下での利便性を重視している。

クォーツ製だが長くメンテしたいと思って、一度オーバーホールに出してみたことがある。ポルシェとは言っても中身はインターなので、ロフトの時計コーナーでは受けつけてもらえなかった。専門業者に依頼して2万円くらいかかったと思う。ときどき風防の内側が水蒸気で曇ることがあったが、やはり年数が経っているので防水性はないとのことだった。

自転車で落として失くした

自転車で走っていて急に雨が降ってきたので、時計を濡らさないように外してジャケットのポケットに入れた。そのまま帰ってきたら、ポケットから時計がなくなっていることに気づいた。

ジッパーの蓋もないポケットなので、風に揺られてひらひらさせているうちに落ちてしまったのだろう。軽くてベルトもゴム製なので、ほとんど音もせずポトンと落ちて、気づかなかった可能性が高い。

当時はとても悔しい思いをしたが、希少なモデルなので誰か拾って中古市場に戻してくれていればと思う。自分自身の損失はもとより、前世紀の貴重な工芸品を失ってしまったということで人類に対して申し訳ない気持ちがする。これに関しては、まだ財布を落とした方が取り返しのつくミスだったかもしれない。

身の丈に合う物しか持たなくなった

今でも年に1度は電車の網棚に物を忘れるくらいそそっかしい。ハンカチや手袋から、ペリカンのスーベレーン、前原光榮の傘など、安物も高級品もよく失くす。おかげで失くしても困らない身の丈に合ったものだけ持ち歩くようになってきた。ポルシェデザインとの付き合いもよい教訓だったかもしれない。

最近も、仕事で使うUSBメモリや株主優待券を失くして落ち込むことがあるが、そんな時はBang on a Canの”Lost Objects”を聴くと心が安らぐ。この歌詞のように、足とか舌とかもっと大事なものを失くさなくてよかったと思う。あるいは「形あるものいつか壊れる」という無常観を徹底すれば、身の回りの道具は間に合うなら何でもよいといえる。