低所得で保険料軽減措置を駆使すれば、法人より個人事業の方が有利

最近フリーランス仲間と話題になったのが、「個人事業と法人、保険料はどちらが有利か?」というテーマだ。設立手続きや税金など、一般的な比較はウェブに情報があふれているが、「国民年金と厚生年金はどちらがベターか」という点については見解がわかれる。

スポンサードリンク

一人会社の節税情報が少ない理由

個人事業が儲かってきたので法人成りしようとか、年収2千万以上あるので最適な節税スキームを組み立てたいとか、そういうニーズは税理士の顧客に多そうだ。しかし、たいして売上がないのに会社を使って税金・保険料を最小化しようという、変なリクエストに応えてくれる情報サイトは少ない。

一人経営の零細会社なら、そもそもお金をかけて税理士に相談しないだろうし、仮に相手したとしても支払いが渋いのはみえみえだ。自分が税理士なら、高額納税者向けの節税指南はするとしても、1円起業とか無税生活みたいな不埒な輩は端から相手にしないだろう。

書籍で出ている節税関連の情報もあらかた網羅したが、大半はサラリーマンか、(そこそこ稼いでいる)中小企業経営者向けで、「最低等級で社会保険に加入する」みたいな話は聞いたことがない。

断捨離・片付け・ニート・低所得生活の本にも、節税の話はあまり出てこない。あえて法人をつくったり、余計な決算・申告の手間が増えるのは、ミニマリスト的に外道だろう。ある程度の資産がないと投資や節税の効果は薄いし、そもそも中小機構の共済を駆使するなら数100万は蓄えがないと資金繰りが厳しい。

隠れ独身貴族の趣味は節税

となると、税務署や年金事務所と渡り合いながら、試行錯誤して独自の節税スキームを組み立てるしかない。世の中探せば似たような目的でダミー会社を経営している人も多く、自然と節税の相談ができる知り合いが増えてきた。

シェアハウスに住んでいると、能天気なヒッピー外国人や禁欲的ミニマリストに混ざって、確信的無税生活者とでもいうべきツワモノに出会うことがある。フリーランスの会計士だったり、税制への憤りからあえて個人事業を選んだ元エリート会社員もいる。

だいたい40歳前後で、それなりの貯金やスキルもありつつ、ユニクロをまとったBOBOSな隠れ独身貴族というタイプが典型的だ。自分など足元にも及ばない博識で、普通に働いていれば官僚か教授になれそうな天才もいる。

税金や保険の専門家ではないので、ウェブで調べた内容と、税務署・年金事務所にインタビューした話が情報源である。個人事業と法人、特にそれぞれで加入する国民年金と厚生年金のメリット/デメリットについて考えてみたい。

7万円の均等割が馬鹿にならない

個人的には資本金1円でもいいから合同会社を立ち上げて、赤字をキープしつつ給与・通勤手当63,000円未満の最低1等級で社会保険に加入するのがベストだと思っていた。

フリーランス2年目でようやく所得を完全コントロールできるようになり、税金面では住民税5,000円だけミニマムに抑えることができた。社会保険料はたまに値上がりしたり変動もあるが、昨年の確定申告では社会保険料控除130,686円の折半額だった。会社負担分も含めた全額では、その2倍の約26万円、プラス「子供・子育て拠出金」が数千円程度加算される。

これに確定拠出年金の満額276,000円と基礎控除380,000円を含めて786,686円の所得控除。余った分が株式投資の利益と相殺できて、還付を受けたサプライズは先日報告したとおりだ。

ところで、法人の問題点は赤字でも7万円の住民税均等割が発生することである。個人事業より経費をコントロールできる部分が大きいので、売上が大きければこの7万は誤差の範囲とみなせる。

しかし稼ぎが少ないと、毎年7万円は馬鹿にならない負担額だ。それだけあれば、月額5千円のちょっといいバーチャルオフィスが借りられるし、Surface GOの安いモデルだって買える。

所得ゼロなら個人事業の方が有利?

所得ゼロでも社会保険料は変わらないが、国民健康保険・国民年金ならそれぞれ軽減・減免措置があると知った。

国民健康保険は世帯所得33万円以下だと7割軽減され、自治体によって変動はあるがおおむね年間2万円以下に抑えられる。社会保険料は1等級でも年間税額7万円弱になるので、7割軽減のメリットは大きい。

国民年金は扶養0なら前年所得57万で全額免除できるので、健康保険より基準がゆるい。所得ゼロなら文句なく全額免除を申請できるだろう。

国民年金全額免除でも1/2受給できる

国民年金の全額~1/4免除を受けると、将来受給できる老齢基礎年金の額が減ってしまう。むしろ驚くべきは、まったく年金を納めなくても1/2国庫負担で年金をもらえるとう事実だ。

フリーで無収入の人なら、間違っても未納で済ませず、手続きして全額免除してもらうべきだ。学生時代は全額免除だと1/3しか年金をもらえないと思っていたが、平成21年4月からはなぜか1/2に増えて魅力もアップしたようだ。

もし国の年金制度を徹底的に信用しないなら、所得を抑えて国民年金全額免除を受けるのがベストといえる。まるで社会保障に対するハンガーストライキのようだが、実はそれでも半額は国が負担して年金をもらえるというのが不思議なところだ。

これを逆手に取ると、国民年金は免除を受けつつ、余剰資金をDCとかインデックスファンドで勝手に運用するのが経済合理的といえる。保険料を納めなくても受給資格期間にカウントされ、老後は半額でも年金をもらえるサービスとは夢のようだ。原資は厚生年金の2階建て部分だろう。

最低等級なら厚生年金=国民年金

世間一般で年金制度の不条理が議論されるのは、主にこの厚生年金2階建て部分だ。年金システム自体が一気に崩壊してしまうわけではない。厚生年金に関しては、すでに自分の年齢で2階建て部分の大半が払い損、掛け捨てといえる状況。サラリーマンで強制徴収されるのでなければ、収める気はさらさらない。

国民年金と厚生年金のメリットを再検討していて気になったのが、こちらのサイトで「厚生年金保険料の半分は税金」と喝破されている点だ。保険料ベースで個人事業と法人の負担を比較している、貴重な情報源といえる。

これが事実なら、法人で社会保険に加入するデメリットがさらに増える。例えば東京都で報酬月額93,000円未満なら、厚生年金保険料は会社負担分も合わせて月額16,104円。現在の国民年金保険料16,304円より若干安い。もしこれの半額が税金として国民年金の赤字分に補填されたりするなら、同額でも厚生年金は圧倒的に不利ということになる。

思わず焦って調べたところ、厚生年金とは内部に国民年金を含むシステムで、将来もらえる老齢基礎年金の部分は変動しないとわかった。1等級の最低額で厚生年金を納め続ければ、2階建ての老齢厚生年金は微々たる額になるが、基礎年金部分はしっかりもらえる。

「厚生年金保険料の半分は税金」という表現は誤解を招くので、正確には「厚生年金保険料の老齢厚生年金は税金」といった方がいいだろう。「厚生年金でも最低保険料なら実質的に国民年金と変わらない」という仮説は間違っていないと思う。

所得ゼロなら個人事業の方が断然お得

上記サイトの計算法で「所得金額0円の税金・保険料負担額」を試算してみた。1,000円未満の金額は適当に丸めてある。市区町村の違いや40歳以上の介護保険料も面倒なので考慮していない。所得税や事業税は0円の前提で、税金と保険、トータルいくらかかるかというアバウトな比較だ。

  1. 個人事業主の場合
    住民税5,000円(均等割)+国民健康保険18,000円(7割軽減)+国民年金0円(全額免除)=合計23,000円
  2. 法人社長の場合
    住民税5,000円(均等割)+法人住民税70,000円(均等割)+健康保険68,000円(1等級全額)+厚生年金193,000円(1等級全額)+子ども・子育て拠出金3,000円=合計339,000円

所得ゼロなら個人事業で軽減・全免制度を駆使した方が、316,000円も年間負担が少ないという計算になった。ただし国民年金全免で老齢基礎年金は半額になるので、平均寿命より長生きできるなら普通に納付した方がお得なケースもあり得る。早死にするつもりなら、間違いなく国民年金の全額免除を選ぶの方が有利だ。

やり玉に挙げられている厚生年金のリターンはどんどん目減りすると思うが、基礎年金の受給額は当面安泰だろう。万が一基礎年金に手が入ったら、全国の自営業有権者が黙っていない。同様に、天下り先の中小機構が提供する共済制度も破綻する可能性は低い。セーフティ共済の前納減額率は減らされたが、以前の年率6%という利率が異常だっただけだ。

強いて言えば、サラリーマンの給与天引き分から基礎年金を補填してもらうのは忍びない気もする。ただしかつては役員報酬・賞与でさんざん収めた側なので、これでトントンと思えば良心も痛まない。「年金は(たとえマイナス収支でも)国民の義務」というような精神論はどうでもいい。

公務員と社長兼業のうまみも減った

あらためて年金制度を調べていると、かつて大学職員だったときの共済年金がベストだったのを思い出した。起業して年金事務所に相談に行くと「共済年金の方が有利だから社会保険に入る必要はない」とご丁寧に教えてもらえたのだ。

企業年金に相当する3階建て部分があった共済年金、2015年の制度改革で廃止され、厚生年金に一元化されてしまった。年金受給額的には「大学の教職と法人を兼業できたら最強」と思っていたが、そのパラダイスも塞がれてしまった。公務員には気の毒だが、それでも税制的にさんざん虐げられている世間のサラリーマンよりはましといえる。

一方、保険料のトータル負担で考えると、会社が半額負担してくれる会社員はとても恵まれている。実質的に給与が10~15%くらい多いと考えてもいいくらいだ。そのへんも含めて考えると、一概にサラリーマンだけが税金搾取されているともいえない。

逆に会社側としては、従業員を雇って保険を肩代わりするのがいかにきついか思い知った。事業が拡大しても、できるだけ雇用契約は避けて外注で済ませたいところだ。世の中税金のことばかりが話題になるが、iDeCoや各種の共済でも効果が及ばない隠れコストが社会保険料だ。なぜ課税対象外の通勤手当が等級算定に含まれるのか、これだけは今でも納得がいかない。

真の巨悪は国税庁でなく厚生労働省という噂もある。国民年金の納付率は6割しかないが、世の中の賢い人たちは、意図的に所得を抑えて全額免除を選んでいるのかもしれない。納付ゼロでも将来半額もらえる国民年金…もし年金受給がプラスに転じるほど長生きできなそうな場合は、すぐに会社を畳んで国民年金に切り替えた方がリーズナブルな気がしてきた。

スポンサードリンク