スマートデイズのサブリース事件を超えて~シェアハウス多様化への期待

先日たまたま知り合いの家でテレビ東京のWBSを見ていたら、「シェアハウス詐欺」というニュースに興味を持った。実際は不動産投資に関わる疑惑なので、「シェアハウス内の住民間トラブル」という話ではない。

事件について調べると、ここ数年で物件数が異様に増えた背景がわかってきた。悪徳サブリース業者のおかげで焼け野原になりそうな、シェアハウスの未来について考えてみたい。

シェアハウス詐欺の真相

やり玉にあがっているのは、「かぼちゃの馬車」という名前で女性向けシェアハウスを運営するスマートデイズという会社だ。物件のオーナーに対するサブリース賃料の支払いが滞り、被害者団体が金融庁に訴えたという内容である。

実際の賃料と乖離した高利回りで、30年のサブリース家賃保証という条件。話がうますぎて怪しいというか、賃料・入居率など少し調べれば容易にわかる状態だったらしい。その点は「ほったらかしで儲かる」というセールストークを鵜呑みにして、チェックが甘かったのだろう。ねずみ講のような自転車操業の実態については、ほかのサイトでも詳しく解説されている。

興味深いのは、「金融商品取引法の規制外で違法性はない」という点だ。今のところ詐欺罪で訴えられる気配もない。むしろ怪しい話に乗ってしまった、オーナーの自己責任という話に帰着している。

被害者の救済を装った詐欺の二次被害まで出ているようなので、脇の甘い投資家は骨までしゃぶられるのだろう。ある意味、「騙されやすいタイプの人」とわかってしまったので、今後も狙われる危険がある。

シェアハウスの怪しさ

スマートデイズ社の件は、シェアハウス業界にとってネガティブなキャンペーンになりそうだ。「多人数での共同生活」という状況からして、ただでさえカルトやドラッグなど事件性を感じさせるシェアハウス。

同じく共同運営・相互扶助の集合住宅として、「コーポラティブハウス」や「コレクティブハウス」という形式も古くからある。しかし国内では、いまいち普及しているように見えない。親戚でもない家族と一緒に食事したり、当番制で家事をするのは、日本人にはハードルが高いと見える。

シェアハウスと聞くと、「テラスハウス」というテレビ番組を連想する人も多い。住民の中にはフリーランスや無職の人もいるが、たいていは普通の会社員だ。何となく、テレビの影響で浮世離れした生活に見えるのかもしれない。今回の詐欺事件も、絶好のワイドショーネタになりそうだ。

供給過多のシェアハウス

今回の事件を調べるうちに、「投資対象としてシェアハウスが建てられすぎて値崩れしている」という状況がわかってきた。確かにここ数年で物件数の増加は著しい。4年前に調べた時より、10倍くらい増えたように感じる。

共同生活への心理的抵抗が減って、むしろ住民交流のポジティブなメリットが認められてきたのだろうか。実際に住みたいというニーズ以上に、サブリース投資家の需要の方が大きい気がする。「かぼちゃの馬車」などは2年で500棟という信じられないペースで増えていたようだ。

シェアハウスは基本キッチンや浴室を共同利用するが、住民同士の交流・出会いがプレミアムなサービスと認識されている。入居審査がゆるく、家具・家電付きなため短期滞在の外国人にも人気がある。そのため、家賃は相場と変わらないか、むしろ高かったりする。

いずれシェアハウスの供給過多が明るみに出てきて、賃料相場は下がるだろう。業界大手のオークハウスが運営しているような、優良物件は影響を受けないかもしれない。投資家向けに安く乱造されたスペックの低い物件は、一気に値崩れしそうな予感がする。

シェアハウスのリノベーション

今回のシェアハウス詐欺事件は、相続税対策の賃貸アパート建設と似ている。東京郊外を見渡して、駅から遠い「何でこんなところに?」という場所に安い木造アパートが立ち並んでいたりする。

試しに検索してみると、新築でワンルームなのにユニットバスもシャワーもなしという、昔の安下宿みたいな物件もある。当然家賃も、東京都内なのに3万以下だったり、大幅に値下がりしている。

全国的に空き家が増えている中、供給過多なうえ不便すぎて借り手のつかない集合住宅はどうなっていくのだろう。あと10年くらい経つと、人口減少も加わって賃貸アパートなどスマホ代以下、タダ同然で借りられるようになってもおかしくない。

スマートデイズが建てた低品質のシェアハウスは、さすがに不便で空き室ばかり目立つという。住人としては、入居率が低い方が共有スペースを広々使えて快適だ。SOHO用に2部屋分を割引して貸すとか、独自のコンセプトを打ち出した賃貸物件や民泊に転用するのもありだろう。

結果的にユニークな集合住宅が増えるのは歓迎したい。シェアリングエコノミーの市場が広がって、暮らし方の選択肢が増えるのは楽しみだ。

カフェ併設シェアハウスの例

先日訪れた立川のおしゃれカフェ「ネイバーズブランチ」は、シェアハウス「ネイバーズ立川」と合体しているのが特徴だった。

7階建てで全72戸と規模が大きく、シェアハウスというより「ソーシャルアパートメント」と名乗っている。オークハウスの「ソーシャルレジデンス」と似たネーミングだが、レジデンスの方は後者が商標を取っているので、あからさまな追従戦略だろう。

賃料にカフェ利用料金を上乗せできて、3,000円(3,500円相当)~10,000円(12,000円)相当と最大20%くらいの割引率で「ネイバーズブランチ」を日常利用できる。普通のカフェチェーンやパン屋より元々高いので、普段使いするにはハードルの高いオプションではある。しかし最近はシェアハウスの数が増えすぎたので、このくらいの売りがないと目立てない。

人気の「パンとエスプレッソと」提携のカフェが1階にあるというだけで、宣伝効果は抜群だ。ウェブサイトを見ても空室は出ていない。近所にはオークハウスの「グラン立川」という物件があり、5階建て全68室、賃料5万円程度と同規模だが、こちらは数室空きがある。

カフェまで歩いて行ける距離なので、ネイバーズ立川に興味がある人はグラン立川も検討してみてはいかがだろう。安い飲食店が多い立川駅の南口は、単身者にとって住みやすいエリアだ。

パンとエスプレッソとマンガ

ネイバーズ立川のもう一つの売りは、ハウスの真正面に立川が日本に誇る遊技施設「まんがぱーく」が立地することだ。多くの住人が「90日平日限定2,000円」の入館パスポートを買って、魔窟に入り浸っていることだろう。

まさに「パンとサーカス」を与えてくれる魅惑的な物件だ。全然空室が出ない理由もうなづける。

おもしろシェアハウスの可能性

ネイバーズのカフェ併設はおもしろいが、ターゲットと思われるクリエイティブクラスは、たいてい都心で働いている。郊外の安いシェアハウスに好んで住むのは、低所得者やワーホリ外国人が中心だ。

立川ならまだ都心への通勤もいけるが、それより西の青梅線や八高線沿線だと徐々に立地が厳しくなる。住人のニーズとしても、センスのいいカフェより「牛丼太郎」併設の格安木造シェアハウスとかの方がうけそうだ。

単なるシェアハウスではもう流行らないので、趣味が近い隣人が集まりやすいテーマ性を打ち出した物件が今後も出てくるだろう。同性カップル限定のシェアハウスとか、渋谷区なら実現できそうだ。スポーツ系ならクライミングウォールや乗馬クラブ、生産系ならサトウキビ農場や養豚場併設のシェアハウスはどうだろう。クラウドファンディングでシェアハウスを企画するのもありだ。

楽器を練習できるスタジオや、大画面で映画を観られるシアタールームがあるくらいでは、もうインパクトが足りない。限界集落の大麻コミュニティーみたいにならない程度で、個性的な集合住宅が増えてくれるとおもしろい。