湯河原の変な和風ゲストハウス。温泉付きドミトリーRyokanレビュー

記事内に広告が含まれています。

湯河原にオープンした格安ゲストハウスのThe Ryokan Tokyo。場所は神奈川県の最南端で静岡との県境は目と鼻の先だが、東京を代表する旅館と名乗っている。1人で泊まれる安いドミトリーのプランが平日格安で空いていたので、熱海~湯河原旅行のついでに泊まってみた。

インバウンドの外国人観光客を意識した変な日本風インテリアで、ひそかに話題になっているThe Ryokan。公式ウェブサイトも美人モデルを使った映画みたいなつくりで、本気度が半端ない。2018年2月1日にリニューアルオープンしたらしく、内装はピカピカだった。

平日最安3,000円

1駅離れた熱海の方は、マルヤを筆頭に安いゲストハウスが増えてきたが、湯河原の安宿はまだここくらいしかない。

中心部がJRの駅から離れていて不便なうえ、飲食店やエンタメ施設も少ない。最近復興してきた熱海に比べて、湯河原は常連向けの渋い温泉街という感じだ。

2月の平日に楽天トラベルで出ていた価格は素泊まり3,000円(税抜)。公式サイトでは3,500円なので、直前予約で割安になっていたのかもしれない。湯河原の他の旅館なら6,000円は下らないので、文句なく最安だ。 温泉付きで1泊3千円という安さは、日本全国探してもめずらしいかもしれない。

The Ryokanには8畳~の広い和室もあるが、一人で泊まると素泊まりでも1万円を超えてしまう。3~4人でシェアすれば1人6,000円くらいの標準的な価格に落ち着く。和室の襖絵や内装もユニークらしいので、機会があればいずれ試してみたい。

ドミトリーの方はカプセルホテルタイプのブースが14室ある。当日は自分以外もう1人で、ほぼ貸し切り状態だった。和室の方は日本人の女性グループが1組。他は外国人の家族連れが3組くらいいたように思う。ロビーも温泉もひと気がなく静かな雰囲気で、ゆったり過ごせた。

とんでもない坂の上にある

湯河原駅から歩いて向かったが、場所はかなりわかりにくい。目印としては千歳川と藤木川の合流地点、独歩の湯に続く万葉公園の入り口から奥に進んだ右手の坂を上る感じだ。右手の亀屋旅館、左手の坂口屋旅館、どちらを進んでも勾配30度くらいの激坂が迎えてくれる。

いかにも熱海~湯河原的といえる急坂だが、歩いて上るだけでもかなりしんどい。重いスーツケースを引きずって上るのは不可能だろう。地元の人や宅急便の車もたまに通るので注意がいる。

案内板通りに坂道を回り込んで、ようやく目指すRyokanに到着した。この上にもさらに住宅街が続いていて、人が暮らせるのか信じられないくらいだ。勾配がきつすぎて車を運転するのも怖い。

後から調べたら、湯河原駅を15:45と16:45に出る送迎サービスが1日2便あったようだ。初めてならそちらを利用するのが無難だろう。そもそも駅から温泉街まで3km以上離れているので、歩いている観光客はあまりいない。

建物は企業の保養施設か何かを改装した感じで、それほど広くない。4階建てだがなぜかロビーは最上階にあり、そこから客室に降りていく変わったスタイルだ。チェックインするために、建物を回り込んで4階分の坂を上らないといけない。そのくらい崖みたいなところに立地している。

一見派手だが落ち着いたインテリア

表向きは普通だが、駐車場のある方に降りていくと徐々に怪しい感じになってくる。こうやって動線を長く取るのも、茶室に向かうような雰囲気を演出しているのかもしれない。

ライトアップされたエントランスは、鳥居と提灯と枯山水が混在する異様な和風コラボレーションになっていた。まるで歌舞伎座と伏見稲荷と龍安寺の石庭を混ぜ合わせたようだ。

こんな発想は日本人からするとありえないが、よく見ると各要素がうまくまとまっていて見ごたえがある。昼間は安っぽいが、夜に見るとなかなか壮観だ。

鳥居をくぐると今度は浅草寺の大提灯が出迎えてくれる。座高の低い和風の椅子や造花が散りばめられているが、不思議とチンドン屋のようなキッチュな感じはしない。

くすんだ朱色にベージュ~鼠色と、和風の伝統色ですっきりまとめているからだろうか。安宿とはいえ、デザイナーズカプセルホテルのナインアワーズと同じくらい計算されたデザイン性を感じる。

フロントからカフェにつながる空間には、畳敷きのフロアに縁側やちゃぶ台が置いてある。たくさん転がっている無印良品のようなビーズソファは、アメリカで人気のヨギボーという製品のようだ。カバーがカラフルなだけで、座り心地は無印と同じに感じた。

昼食はサルヴァトーレのブッフェでたらふく食べたので夕食をスキップしたが、カフェコーナーではおいしそうな鍋料理が振る舞われていた。付属のGensen Cafeは19:30ラストオーダーで閉まるのが早い。

朝食も予約なしだと頼めなかったので残念だ。近くに飲食店がなく下山しないと最寄りのコンビニまで行けないので、Ryokanでゆっくり過ごしたいなら食事つきのプランを選んだ方がいいだろう。お腹が空いたら、割高だがちょっとしたおつまみとお酒の自販機はある。

冬のドミトリーは寒い

フロントでは楽天トラベルのカード決済以外に、入湯税150円を払う必要あった。ドミトリーにはタオルが付かず、うっかり手ぬぐいを忘れてきてしまったので400円のタオルセットをレンタルする羽目になった。ドミトリーに泊まるならタオルを持参しよう。浴衣は無料でレンタルできる。

ロビーから階段で降りていくと、和室の連なる廊下には行灯が置いてあっていい雰囲気だ。しかしドミトリーのドアが、増設したカーペットと擦れて開閉しにくいのはいただけない。トイレも廊下に出て、浴室か上階まで行かないといけないのが少々面倒だ。

部屋には鍵付きのロッカーがあり、ベッドもセミダブルサイズで広々している。さらに壁際に作り付けの棚があるので、小物や着替えを置けて便利だ。部屋側とはロールカーテンで仕切る標準仕様で、特に簾などではなかった。

最初は相部屋のエアコンが動いておらず、電源を入れてから暖まるまで時間がかかった。掛け布団が薄く、下段のベッドで窓から冷気が降りてくるのか、夜は寒くてなかなか眠れない。

熱海や湯河原は海の近くなので東京より暖かいはずだが、ここはどちらかというと山側なので寒暖差が大きいのかもしれない。

館内設備は充実

温泉は広くないが、この客室数なら十分だろう。浴室の壁には取って付けたような桜吹雪の富士山の写真が貼ってある。脱衣所に化粧水や綿棒のアメニティーグッズが充実しているのはポイントが高い。

このあたりの微妙なサービスは、単なる格安ゲストハウスでなくグループ向けの高級和室も併設されているからだと思う。3千円で泊まれるわりには施設自体のグレードは高い方だ。階段の踊り場やカフェに自由に飲めるレモン入りのウォーターサーバーが置いてあり、WiFiも完備している。

温泉が空いている時間は6:30~9:00と16:00~23:00。閉まるのが早いが朝風呂も楽しめる。わざわざ朝から風呂に入る観光客は日本人だけなのか、貸し切り状態でゆったり浸かれた。

Ryokanのおすすめマンガ

遅いチェックインだったのでレストランは閉まっていたが、ロビーにある本棚を物色してみた。ウェブサイトの紹介によると、日本のサブカルチャーを紹介する名作ばかりがキュレーションされているらしい。

確かに村上春樹をはじめ、芥川賞の受賞作や過去の名作マンガばかり並んでいる。雑誌もポパイや資生堂の花椿なんて、よくわからなものだらけだ。その中で妙に浮いていて気になったのが、吉田貴司の『やれたかも委員会』…

エロ本かと思ったが巻末の対談で芥川賞作家の保坂和志が評しているとおり、純愛ストーリーともいえる。エロさでいえば、隣に置いてある岡崎京子のマンガの方が直接的だ。

2016年からnoteやcakesのウェブサイトに掲載されて人気を博し、今年1月から実写ドラマも放送されているという旬な作品。内容は微妙で紹介しにくいが、審査員の変なキャラクターやセリフがツボにはまる。30代以上の男性なら楽しめること請け合いだ(一応女性が主人公の話もある)。

朝食を求めて海まで歩いた

Ryokanに素泊まりするなら、途中のコンビニで朝飯を調達しておいた方が楽だった。予約なしでは朝食を頼めず、温泉街のレストランはどこも高そうなので、早めにチェックアウトして海岸まで歩いてみた。温泉街を歩くなら、県道75号の駅前通りより川沿いの遊歩道の方が風情がある。

運良くすかいらーく優待が使えるガストが早朝からオープンしていたので、海を眺めながら格安でモーニングをいただくことができた。

湯河原も駅から海側のエリアは、ファミレスやスーパーがあって暮らしやすそうだ。熱海と同じく市街地は起伏がない平地だが、海岸沿いにホテルはなく観光客も少ない。新幹線はとまらないが、老後に移住するなら熱海より湯河原の方が落ち着いていてよさそうに見えた。