激熱すぎてうける。福島の飯坂温泉、日本最古の木造浴場「鯖湖湯」

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春先の旅行に活用しようと思って、3/1~4/10期限の春季18きっぷを買ってみた。仙台から東京に向かう途中、時間に余裕があるので行ってみた飯坂温泉。

知り合いの話では「JR東北本線から近いので気軽に寄れるはず」とのことだった。確かに地図上で見ると、伊達駅から西に数キロ行ったところにある。最近リニューアルした熱海や湯河原のように、足湯や手湯が併設されている駅は東北で見たことがないので、貴重な日帰り温泉スポットといえそうだ。

伊達駅からのバスは1日3~4便

各駅停車の鈍行で仙台駅から南に向かい、1時間くらい進むと伊達駅がある。路線図を見ると、福島駅まで行ってから福島交通飯坂線で折り返す手もある。しかしローカル線で18きっぷが使えないのと、遠回りに見えたため、伊達駅から直行する交通手段を探してみようと思った。

はじめて降りた伊達駅は、レトロな滞留型ストーブを囲んで座布団敷きの木製ベンチがあるレトロなスタイル。侠気に富んだ「伊達」という雰囲気は微塵もない鄙びた駅舎だ。

売店で飯坂温泉行きのバスについて聞いてみると、「1日2便くらいしかない」とのこと。距離が近いので、温泉街までどんどんバスが出ているかと予想していたが誤算だった。市の境界をまたぐからかもしれない。一応調べたところ、伊達駅から飯坂温泉の湯野行きは平日4便、土日祝日は3便ある。

18きっぷの旅で特に乗換時間を気にするほどでもないので、飯坂温泉まで国道399号をてくてく歩いてみた。伊達駅から4kmほどの距離なので、早歩きで45分もあれば着く。

シシバイバイのアサマ技研

途中の国道は特に見どころがないが、途中で「シシバイバイ」とう看板が目に入った。右側に2匹並んで目を光らせているのはハクビシンか。

後で調べたら、青色LEDでイノシシやシカを追っ払う画期的な製品らしい。飯坂町にある有限会社アサマ技研が販売していて、全国ニュースにもなっている。獣害に悩む田舎の友だちに紹介してあげたいと思った。

日本最古の木造共同浴場

「さばこ湯がおすすめ」という事前情報だけでやってきた飯坂温泉。川の周りにホテルや旅館が立ち並ぶ、そこそこ大きな温泉街だ。地図を見ると、川べりにせり出している波来湯(はこゆ)というのも共同浴場らしい。

とりあえず街中まで歩いてみると、目指す鯖湖湯が現れた。案内板によると、元禄2年(1689年)発祥で、日本最古の木造共同浴場と説明されている。松尾芭蕉も立ち寄ったというくらいなので相当歴史は古い。

建築自体は平成5年に建て替えられたが、明治22年のオリジナルを再現したおもしろい形をしている。古くて汚い温泉も悪くないが、形はレトロで設備は最新というハイブリッドな仕組みに好感が持てる。

これだけの施設で源泉かけ流しなのに、料金はわずか200円。その代り石鹸やシャンプーは置いていない。それでも温泉街によくある無料~格安の共同浴場に比べれば、格段にきれいで快適だ。

47度の熱湯温泉

平日の昼前は地元の人が1~2名、洗面器持参で訪れる以外は、空いていて広々使えた。のんびりしようと思って湯船に足を入れたら、鳥肌が立つくらいの熱湯だった。東京の銭湯とうより、草津の無料温泉を思い出すくらいの危険なレベルだ。ある意味、ヒートショックで命を落とす危険がある。

そういえば看板には「浴槽温度47度」と書いてあった。「観光客の人も来るので水を入れてください」という地元の人向けの説明もあり、水が出るホースも近くに置いてある。果たしで自分の一存で湯温を下げてしまってよいものか、地元の人に怒られるのではないかと思い、我慢しながら湯船に入ってみた。

じわじわ慣らせば首まで浸かって1分くらいは耐えられる。屋根裏の小屋組みもおもしろいので、のんびり眺めて過ごそうと思ったが、昼前なので体を洗うほどでもなく、10分くらいで退散してしまった。恐ろしく汗をかくので、Tシャツ1枚で外に出てしばらく涼んでいた。

温泉でもらったパンフレットによると、鯖湖湯と波来湯以外にも合計12か所の共同浴場があり、浴槽温度の表示が書いてある。鯖湖湯で星2つ(45~47度)だが、さらにその上に星3つ(46~48度)の浴場もいくつかある。

これ以上熱いとは信じられないが、飯坂温泉は熱湯が名物の我慢比べ温泉らしい。場所によっては「熱い湯」と「温い湯」の2種類用意されていて、初心者向けのところもある。

旧堀切邸を観光

鯖湖湯の前の坂を上がると、旧堀切邸という歴史的建造物がある。広い庭園と建物は無料で公開されているので、入浴後に涼むにはおすすめだ。こちらも近年リニューアルされたようで、庭を眺めながら浸かれる足湯と手湯がある。こちらの湯温は控えめだったので、熱湯風呂が苦手なら無料の足湯で済ませるのが無難だ。

独立した巨大な十間蔵以外に下蔵、主屋には3つの蔵が連なっている。大庄屋で飢饉のときの農民救済の逸話など、東北の寒村が舞台だった『殿、利息でござる!』の映画を思い出させる。

飯坂線で福島へ

帰りは伊達駅までまた歩いてもよかったが、せっかくなので地元の飯坂線に乗ってみた。当然Suicaは使えず、何年振りかで切符を買った気がする。車両もどことなく懐かしい。

ここからJRと連絡する福島駅まで、途中に10個も駅がある。電車の中では各駅で企業宣伝のアナウンスが流れて、まるでバスに乗っているようだ。片道370円でのんびりした行程だが、意外と地元のビジネスマンや学生さんなど利用客が多い。

福島駅の改札でICカードリーダーらしきものを見つけたのだが、NORUCA(ノルカ)とカード専用らしい。福島交通のバスや鉄道のみで使えるニッチなICカードだが、ネーミングは悪くないと思う。

飯坂温泉は、東北の温泉街としては鳴子のように駅直結の便利な場所にあった。仙台方面からアクセスするなら、伊達駅から歩いたりタクシーを使うのもありだが、素直に福島駅から飯坂線で向かった方が楽だろう。

歴史は古く、木造の古風な旅館もあって風情がある。日帰り観光なら鯖湖湯か波来湯が有名なようだが、地元向けの地味な公共浴場(星3つクラス)も試してみたいと思った。