意外と楽しめる日本近代文学館の企画展。駒場散歩のついでにどうぞ

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先日紹介した前田侯爵邸と同じ駒場公園内に、日本近代文学館という建物がある。

侯爵邸よりもさらに奥まった一角にあり、普通に散歩していても存在することに気づかない。この界隈に10年以上暮らしているが、まだ一度も行ったことがなかった。最近カフェがオープンしたらしいので、下見がてら展示を覗いてみた。

「近代文学の150年」作家の手紙や直筆原稿を展示

ウェブサイトを見ても、どちらかというと有料の閲覧室が中心で、専門家向けの施設に思われる。中に入ってみると、1階正面は閲覧室の入口だが、受付でチケットを買うと2階の展示室に案内される。

当日開催されていた企画展は一般200円。「近代文学の150年―夏目漱石、芥川龍之介から戦後作家まで―/川端康成をめぐる書簡」というテーマで、作家の手紙や直筆原稿が展示されていた。最後に川端康成の特集コーナーがある。

原稿を見ると筆跡に作家の個性が出ていておもしろい。芥川龍之介は字が小さくて丸っこい、かたつむりのような文字だし、中上健次はマス目一杯に広がる金釘流でイメージ通りだ。

名前も知らない作家の、どうでもいい恋文みたいなものから、芥川から太宰まで遺書めいた不吉な書簡が並ぶ。太宰治ファンなら、学生時代の落書きだらけの地理学習ノートとかも展示されているので、楽しめるかもしれない。たまに有名な作品の冒頭が展示してあって、『蟹工船』の名文「おい地獄さ行ぐんだで!」も生で拝める。わが社でも、デスマーチに突入する際に気合を入れる合言葉はこれだ。

「はたらけどはたらけど猶わが生活楽にならざり」の歌人、石川啄木の『悲しき玩具』では、「月に三十円もあれば、田舎にては楽に暮らせると―ひよつと思へる」とある。今なら月に三十万円という感じだろうか。時代が変わっても人が考えることはあまり変わらない。

拝観料200円のわりには、パンフレットやポストカードなど、いろいろと凝ったお土産をもらえる。

カフェBUNDANで銀座キャンドルのメニューを再現

併設のカフェBUNDANで、川端康成や三島由紀夫が通い詰めた銀座キャンドルの洋食を再現したメニューが展示されている。当時のメニューによると、1950年のサーロインステーキが2,800円。物価は1/10くらいだから、文豪が嗜んでいたのは28,000円くらいの高級洋食だったらしい。今ならウルフギャング・ステーキハウスの「プライムステーキ4人前サイズ」に匹敵する値段だ。

そういうどうでもいい時代背景とか豆知識を学べる日本近代文学館。駒場付近の日本民藝館、前田侯爵邸を見たついでにちょっと立ち寄って、カフェBUNDANで優雅にお茶を飲むのがおすすめの散歩コースだ。余裕があれば、東大駒場キャンパス内のルヴェソンヴェールでランチを食べてもよいだろう。

後日、文壇カフェも訪問してみた。